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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第36話 自由の街⑪

挿絵(By みてみん) 





 自由の街(アガルタ)。市庁舎公園沿いにある道路。


 パーク・ロウ通りの片側二車線は、封鎖状態。


 車を乗り捨て、逃げる住人が大半の中、戦いは続く。

 

名前:【バグジー・シーゲル】

意思:【1906】


 ゴーグル越しに表示されるのは、文字と数字。


 体外に纏っている意思の力。顕在センス量の数値。


 それに加え、バグジーの周囲には赤い光が見えていた。


(必要最低条件はクリアっす……。問題は……)


 メリッサは目を凝らし、視線を上げる。


 そこには、二本のククリが宙を舞っていた。


 ゴーグルをかける前後で、全く変わらない本数。


 ――『夢現むげん四刀流』。


 そう口にした以上、残り二本がどこかにあるはず。


 見えない斬撃を受けた身としては、攻略は必須だった。


『現状の分析が完了しました。攻略対象はバクジー・シーゲルと『夢現四刀流』。目視できる二刀は実在する武器の可能性が高く、目視できない二刀は、敵の能力により透明化され、特定の条件下でのみ見えるものと推測されます。これにより、予期せぬ方向からの攻撃を受ける危険性があります。発生条件は、目視できる二刀の攻撃に連動して、実体化するタイプの能力かもしれません』


 骨伝導により響いてくるのは、AIによる考察。


 今一番欲しかった情報を、的確に伝えてくれていた。

 

 期待していた以上の情報に、ハッとした顔を作ってしまう。


「攻略の糸口でも掴めたかい?」


 表情の変化に気付いた閻衆は、尋ねる。

 

 切断された右腕は回復し、生えてきていた。


 強敵と未知の能力を前に、焦りが全く見えない。


 さすがは、ヤクザの頭を張れるだけの鬼ってところ。


「見えない斬撃の実体化は通常攻撃の後……かもしれないっす」


 メリッサは要約して、小声で攻略情報を伝える。


 合ってるかはともかくとして、取っ掛かりにはなる。


 ここからは閻衆と作戦を練り、能力を立証するのが無難。


「だったら、オレがデコイに――」


「試す必要はないわ。今の考察で正解よん」


 前向きに話が進む中、バグジーは手の内を明かす。


 両手にはククリを握り込んで、臨戦態勢になっていた。


「生憎っすけど、敵の言葉を真に受けるほど馬鹿じゃないんすよね」


 身動きに細心の注意を払いつつ、会話に応じる。


 恐らく、嘘。心理戦を仕掛けられてる可能性が高い。


 的外れな案を信じさせるための罠のような気がしてくる。


「信じるかどうかは自由。ただ、断言しておくわ」


 真偽は不明ながら、感じるのは絶対的自信。


 ごくりと唾を飲み込んで、続く言葉を待ち受ける。


 口を挟む余地なんてなく、聞き届ける以外の選択はない。


「――アナタたちは苦痛でのたうちまわった挙句、降参する」


 バグジーは気持ちいいほどの威勢を張り、その場から消えた。

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