表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
32/156

第32話 自由の街⑦

挿絵(By みてみん)




 自由の街(アガルタ)。上空300メートル地点。


 そこに浮かぶのは、中規模の雲だった。  

 

 夜の闇に紛れ、人目につかない絶好の場所。 


 雲を足場にして、眼下を観察する者たちがいた。


「マカオのマの字も知らナイ、塵芥ちりあくたガ。やるなら現地でヤレ」


 双眼鏡を覗き、愚痴をこぼすのは黒服の女性。


 女豹の目つき、セミロングの黒髪に赤色のメッシュ。


 鈍り言葉で、なんのゆかりもない舞台に憤りを見せていた。


「逆を考えてみろ、蓮麗レレ。マカオで大暴れされたら、困りものだろ」


 愚痴に応対するのは、ガタイのいい黒い肌の男。


 黒服に袖を通し、腕を組んで、戦況を見つめている。

 

 その視線の先には、物々しい気配センスを発する銀行があった。


「まぁ、そうだケド……」


 言い返す余地のない反論に、蓮麗は押し黙る。

 

 そのせいか、双眼鏡の手元が緩みそうになっていた。


「ともかく……最初の怪我人が肝心。出たら必ず報告して」


 彼女の隣にいるのは、黒のマッシュルームヘアの少年。


 紺のパーカーのフードを深く被り、暗い空気を発している。


「あぁ、分かってるヨ。イイ感じにボッタクッテやるネ!」


 互いの目的は共通し、獲物を狩るハイエナのように戦場を見つめた。


 ◇◇◇


 サイレンの音が響き、赤と青のランプが明滅する。


 閻衆の読み。論理的な状況考察による、現場への急行。


 警察車両を使い、連邦準備銀行に向かう道中のことだった。


「後どれぐらいっすか。妙な胸騒ぎがするんすけど……」


 助手席に座るメリッサは、顔色を暗くして問う。


 残念ながら、宗教上の理由でセンスは感じられない。


 ただ、内臓が浮き上がるような、気色悪い感覚があった。


「もうすぐだ。距離にしたら、おおよそ――っ!?」


 歯切れよく回答しようとするも、閻衆は口を閉ざした。


 それどころか、顔色を青っぽく染め上げて、絶句している。


「…………?」


 何かあると気付き、視線の先を見る。


 そこにいたのは、道路中央に立つ不審な男。


 両手には、どこからか取り出したククリ刀を持つ。


(あいつは……っっっ)


 一目見て閻衆が固まった意味が分かった。


 アレはヤバイ。センスを感じなくても分かる。


「伏せろ!!!!」


 閻衆の警告と共に、二刀のククリが投擲される。


 即座に顔を伏せると、十字の斬撃が警察車両を襲った。


「――――っっ!!!!」


 スパッと音が鳴り、後ろ髪の一部が切れた感触がある。


 ただ、身体に問題はなし。すぐに顔を上げ、状況を確認した。


「はぁーい。突然だけど、アタシと踊ってくれない?」


 真横をすれ違ったのは、バーテン服を着た赤髪のアフロ。


 隣にいるはずの閻衆の姿はなく、警察車両は四分割されていた。


 ◇◇◇


 自由の街(アガルタ)。連邦準備銀行。一階、エントランス。


 お客様窓口を縦横無尽に飛び交うのは、複数人のプレイヤー。


「……その義手。金の割には、えらく頑丈と見える。特殊合金か?」


「ご名答。黒鋼こっこうを加工した合金。ただ、売りは……それだけではない!」


 シェンとマクシスは言葉を交え、金の義手が空を切る。


 見事な空振りを見せたように思えたが、閃光がほとばしる。


 回避で生じた隙間を埋めるのは、青色に染め上がる雷光だった。


「――――ッッッッ!!!!」

 

 シェンは成す術なく、直撃。

 

 全身に電流が駆け巡り、倒れ込む。


「伝導の右手。用法は、その身で味わったようだな」


 決着を確信し、マクシスは屈みこんだ。


 これ見よがしに右手を見せ、力を誇示する。


 その先にいるのは、白目を剥いている老人の姿。


 起き上がってくるわけがない。そう高を括った態度。


「――――っ!!」


 それが致命的な隙を生み、回避を遅らせる。


 立ち上がる気絶した老人を前に、身体が硬直する。


 そこに攻め入るのは、螳螂手。カマキリの如く伸びた手。


「七星……螳螂拳……【玉鏡星ぎょくきょうせい】」

 

 ニヤリと不敵に笑う無意識のシェンは、義手を絡めとる。


 その瞬間、互いのセンスとセンスが触れ合い、能力は発動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ