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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第3話 降魔

挿絵(By みてみん)




 メリッサたちが勝負に乗る宣言をした数分前。


 ザ・ベネチアンマカオ地下。裏カジノ。降魔の間。


 そこには五つの祭壇があり、大量のケーブルが見えた。


 魔術的な要素は少なく、極めて科学的な要素で構成される。


「……」


 そこに現れたのは、丸眼鏡をかけた冴えない男。


 白衣を着て、無精ひげを生やし、ボサボサの黒い髪。


 辺りを警戒しつつ、壁際に置かれた配電盤にたどり着く。


「必要なのは生贄でも、解釈は自由。……そうだろ? 悪魔ども」


 男は配電盤のケースを開け、虚空に語る。


 鋭い視線を向けた先には、大量のブレーカー。


 それを何の迷いもなく、上げる上げる上げ続ける。


 電力変換器の重々しい駆動音が鳴り響き、電源は確保。


 マカオ中の電力は五つの祭壇へ余すことなく注ぎ込まれた。


「「「「「………………」」」」」


 バチリと目に見えるほどの放電が走り、収束。


 煙が立ち込める中、祭壇に現れたのは五匹の悪魔。


 男性が三匹に、女性が二匹。背丈や年齢層はバラバラ。


 あくまで人間基準で見れば、下は十代から上は八十代の顔。

 

 共通点は額に二本の黒角、背中に二枚の黒羽根、臀部に黒尻尾。


「さぁ、代償は払った! 次は俺の願いを叶えろ!!!」


 男が語った瞬間、バチンと音が鳴り、停電。


 暗闇に満ちた室内には、血液が飛び散っていた。


 ◇◇◇

 

 停電より数十分後。ザ・ベネチアンマカオ内。


「で、どこに行けば、ギャンブルが出来るんすか」


 非常灯が照らされる階段を下り、メリッサは語る。


 その背後にはマルタ、ジェノ、アミ、蓮妃の姿があった。

 

「馬鹿だねぇ……。どう考えても降りた先だろ……」


「それより問題は、どこまで降りるか、じゃないですか」


「数十階は降りた気がしますが、今はどの辺りなのでしょうか」


 それぞれが疑問を差し挟み、視線は蓮妃に向けられる。


 ここまで詳細な説明はなし。階段を降りろと言われただけ。


 見えないゴールに対し、不平不満が募りを見せる頃合いだった。


「地下108階よ。進行度は三割程度ね。辛いなら、帰ってイイよ」


 当の本人は、つらっとした表情で淡々と語る。


 途方もない数字を前に、蓄積された疲労感が体を襲う。


「……設計者も馬鹿だねぇ。どんな意図があるのか聞いてやりたいよ」


「煩悩の数とかじゃないですか。詳しい内容や起源までは知りませんけど」


 マルタとジェノは状況を受け止め、淡々と反応している。


 降りる階数は問題じゃなく、その意味に関して探りを入れていた。


「帝国の仏教由来ですよ。煩悩を構成する要素を分解すれば、108個になるのが一般的です。前提となるのが六根と呼ばれる『眼、耳、鼻、舌、身、意』から感じる苦悩。意思の力の起こりでもありますね。そこに掛け合わされるのは、感情の『好、悪、平』と『染、浄』。好きか嫌いかどちらでもない基準で物事は判断され、汚いか綺麗かで、さらに分別されます。次に掛け算されるのは、『過去、現在、未来』の三つの時間軸。人の悩みが生まれるのは時間がある前提ですからね。まとめると、六根の6×感情の『好、悪、平』の3×『染、浄』の2×『過去、現在、未来』の3。それらを計算すれば、108になるわけです。見る角度を変えれば、意思の力は煩悩の塊そのものであるとも言えますね」


 得意分野なのか、アミは饒舌に語り出す。


 宗教には興味ないものの、納得はできる内容。


「あー、意思の力を毛嫌いしてた理由、多分それっすわ」


 感覚的に好き嫌いで処理していた内容。


 意思の力に縋るものを否定していた意味。


 その答えが、詰まっているような気がした。


 ◇◇◇


 ザ・ベネチアンマカオ地下108階。


 そこに降り立つのは、千葉一鉄だった。


 300メートルほどの高さから飛び降り、無傷。


 杖の音を鳴らし、黒塗りの大扉を前にして、語る。


「煩悩の数を超えた先には、更なる煩悩が待っている。……下らんジョークだ」


 上部に見える108と刻まれた文字を見つめ、扉を開いた。

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