表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
15/156

第15話 鬼門闘宴①

挿絵(By みてみん)




 ザ・ベネチアンマカオ地下63階。闘宴の間。


 特急エレベーターで上がった先には二つの門。


 左手には大門。右手には小門が設置されていた。


「帝国風の扉……恐らく、担当悪魔は袈裟を着た坊主っすね」


 メリッサは顎に手を当て、考察を語る。


「え? なんで分かるの?」


 横に並ぶジェノは、きょとんとした顔を作る。


 鋭い時は鋭いものの、やっぱりどこか抜けている。


 恐らく、脳内回路のオンオフを使い分けるような感じ。


 今は確実にオフモードで、たまーにオンになる瞬間がある。


 きっかけを掴めば使える。ただ今のところ、条件は不明だった。


「決戦! 屍天城!! の敵と、坊主の悪魔の見た目、同じだったっすよね」


 考えていたことを頭の片隅に追いやり、要点を告げる。


 詳細は分からないものの、帝国と因果関係があるのは明らか。


 楓の繋がりと建物の構造から考えて、次の相手は坊主の確率が高い。


「あー、そっちの意味合いもあったのか。えっと、あの人の名前は確か……」


 ポンと手を叩きつつ、ジェノは記憶をたどる。

 

『南光坊天海。それが我の名よ。その微小な海馬に刻んでおくがいい』


 そこで聞こえてきたのは、本人の肉声。


 一連のエピソードがなかったなら、普通の会話。


 ただ、アレを経験した以上、ファンサービスになり得る。


「本物だ……。あの、応援してます……」


 ユーザー目線のジェノは、天海の年季が入った声を堪能している。


 何しろスロットの演出と声は同じ。声優の生演技を聞いた感覚に近い。


 悪魔の身分で、真剣に声を当てている姿を想像すると、少し笑顔になれた。


『…………『鬼門闘宴』のルールを説明するが、構わんな?』


 天海は押し黙り、ゲームの進行を始めている。


 満更でもない反応。声優をやったのはガチっぽい。


「……こっちは問題ないっす」


 後ろを振り返り、四人の意思確認をして、話を進める。


 本命はこっち。ファンサービスがどうとかは、余談だった。


『左の大門を選べば挑戦者となり、賽を振って、出た数の分だけ移動し、目標地点到達を目指す。その実績に応じて、チップを与えるが、相応の苦行が伴う。右の小門を選べば観戦者となり、挑戦者の進行度を予想し、賭ける。チップが発生するのは賭けの当落のみで、苦行は少ない。このどちらかを選んでもらう』


 天海が語るのは、シンプルな内容。


 現代の知識で考えれば、一言で表せた。


「ようは、『リアルすごろく』っすよね。それなら、挑戦者一択っす!」


 観戦者になる発想はなく、挑戦者目線で反応する。


 リスクや不安はあるものの、ワクワクの方が上回る。


 早くゲームをやりたくて、ウズウズしてる自分がいた。


「いや、俺は二手に分かれた方がいいと思う。全員、挑戦者は危ない気がする」


 慎重派のジェノは、反対意見を述べてくる。


「それもそうっすね……。四対一。いや、三対二ぐらいの配分がいいかもっす」

 

 その案に賛同する形で、メリッサは話を転がした。


 今後を考えれば、チップは出来るだけ多く稼いでおきたい。


 それなら、挑戦者多めは必須で、観戦者を一人にすれば危険も伴う。


 だから、三対二が安定と見た。リスクを分散し、どちらにも融通が利く人数。


「だったら今回、あたいは楽させてもらうよ。文句はないだろ?」


 二択を前にして、真っ先に反応したのは、マルタだった。


 戦力としては最高クラス。抜けられるのは正直言って痛い。


 ただ、前回の活躍を考えれば、反対する気にはなれなかった。


「ノーとは言えないっすね。……もう一人、観戦希望の者はいるっすか?」


 次に視線を向けるのは、アミ、蓮妃、ジェノの三人。


 この中に優劣はなく、全員信頼できるし、誰が抜けても痛い。


「二人がいいなら、抜けてもいいかな。少し俯瞰して考えたいことがあるんだ」


 遠慮気味に声を上げたのは、ジェノだった。


 何か引っかかりがあったからこそ、発案したはず。


 だからこそ、観戦者に回るのは、自然な役回りに思えた。 


「我は問題ないよ」


「私もそれで問題ありません」


 蓮妃とアミは、同意し、メンバーの振り分けが完了する。


「うっし。だったら、うちらは左。そっちは右っすね。出口でまた会おうっす!」


 メリッサは責任者として音頭を取り、大門に手をかけていく。


 そうして、互いに納得した上で、第三のゲーム『鬼門闘宴』が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ