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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第11話 稼ぐ手段


「ひとまず、状況整理と行かないかい?」


 勝負が終わった卓には、マルタの声が響いた。


 ギャラリーは消え、各々が自分の勝負に集中する。


「……それも、そうっすね」


 頭がぼんやりするものの、卓に手をかけて、起き上がる。


 死と隣合わせの賭場は終わった。ここからは慎重に行く必要がある。


「だったら、カードとチップの確認だよね。俺はブラックで、残高一枚だよ」


 ジェノは話に乗り、自身のカードを見せた。


 たぶん、ルーカスから借りていたのは、二枚。


 一枚は補填用。一枚は破産を防ぐための保険用。


 全員がピンゾロを引く可能性を考慮していた計算。


 抜かりなく、無駄のない計画に惚れ惚れしてしまう。


「私はゴールドカード。残高は二十枚です」


「我はプラチナカードよ。残高は三十枚ね」


「あたいはブラックカード。残高は五十枚」


「うちはグリーンカード。残高は一枚っす」


 アミ、蓮妃、マルタ、メリッサの順にカードを見せる。


「うーん……メリッサでグリーンか。どういう計算なんだ?」


 一通り情報が出揃い、疑問を挟んだのはジェノ。


 配られたカードの種類は、命の価値によって決まる。


 グリーン<ゴールド<プラチナ<ブラックの順番で偉い。


 彼の目線だったら、過小評価されているように感じるらしい。


「ポテンシャル順じゃないっすか。うちとしては、全く異論ないっすね」


 正直、栄えある面々と比べたら、妥当も妥当。

 

 身の丈以上の評価を望めば、罰が当たる気がした。


「俺としては、ブラックでも遜色ないと思うんだけどなぁ……」


「まぁ、悪魔の評価軸を議論しても仕方ない。問題は、どう稼ぐかだよ」


 答えの出ない問いを前に、マルタは話を仕切り直す。


 二十代前半の見た目の割に、言葉から年季を感じられた。


 経歴から考えれば納得でも、周りからどう見えるかは別問題。


「年下のくせに偉そうね。ブラックだからって、格上のつもりか?」


 態度が気に食わなかったのか蓮妃は、喧嘩腰に突っかかる。


 カードの色という目に見えた格差。それによる確執が生まれていた。


「いいや、色じゃなく、経験も実績もあたいが上。黙って従っときな、始皇女帝」


 拍車をかけるように、マルタは煽り立てる。


 めんどいことになってきた。反応は目に見えてる。


「あぁ……? 肩書きで我を知ったつもりか? 片腕へし折るよ?」


「やれるもんならやってみな。アンタはあたいに指一本触れられないよ」


 二人は構え、場は剣呑な空気に満ちていく。


 その気配を感じ取り、ゴロツキ共が集まり出した。


 このまま放置すれば、まず間違いなく、野試合が始まる。


(止めるのが正攻法っすけど……。ここは……)


 一方で、メリッサが感じ取るのは、金の匂い。


 無法者アウトローにこそ喜ばれるコンテンツが生まれる予感。


「さぁ、張った張った! メス対メスの拳闘試合キャットファイト! どっちに賭けるっすか!!」

 

 すかさず賭博の胴元を申し出ると、場は熱狂の渦に包まれた。


 ◇◇◇


 拳闘試合キャットファイトの決着がつき、精算が終わる。


 手元に残っているのは、五十枚ほどのチップ。


「ふぅ……。気前のいい人が多くて助かったっすね」


 メモ帳とペンを懐にしまい、メリッサは本音を吐露する。


 払い戻しは利益率のことを考慮しなかった。そのせいで赤字。


 本来なら、泣きを見るところだったけど、ギャラリーに救われた。


「楽しませてもらった代、だよね。申し訳ないなぁ……」


 ジェノはチップの重みを理解し、肩を落とす。


 勝負による熱狂が、気前のいい悪乗りを生んだ。


「もらえるもんはもらっとこうじゃないか。そうだろ? 蓮妃」


「…………はいな」


 すっかり意気投合した、マルタと蓮妃は肩を組む。


 当然、勝ったのはマルタ。下馬評通りの単純な結果。


「ともかく、これで五十枚。先に進めますね」


 パンと両手を叩き、アミは前向きな方向に舵を取った。

 

 特急権は五十枚。チンチロで稼ぐまでもなく、購入できる。


 進むのは賛成ながらも、少しだけ気になっていることがあった。


「借りた分は、返しておかなくていいんすか?」


 ルーカスから借りたと言った、二枚のチップ。


 返済期限と利息があるなら、早いうちの方がいい。


「うん、大丈夫。チップとは別のもので交換したから」


 俯きながらも、ジェノは語る。


 表情から内容を読み取ることはできない。


(嘘じゃないなら、いいっすよね)


 それ以上、深掘りすることなく、メリッサは特急権を購入。

 

 掲示板から発行される、一枚の紙切れを握りしめ、先に進んだ。

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