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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第108話 進行管理

挿絵(By みてみん)




 バトルフラッグに配置された旗は、三つ。


 赤、青、黄の三色に色分けされ、模造品はない。


 青と黄はヘケトが所有し、赤はバグジーが持っている。


 旗一つで二人分の特急権。本来なら、最大六名が先に進める。


 ただ、問題が起きた。ゲームの進行上、必ず伝える必要があるもの。


『聞こえるか、プレイヤー共。ここで主催者様からの中間報告だ。三つある旗は全て、プレイヤーが回収済み。残すイベントは、脱出をかけた争いだけになる。だが、一つは回収不能になり、有効な旗は二つ。最大四名しか進めず、上位五名を決める戦いにはふさわしくないのが現状。……そこで、救済措置を用意した』


 木陰に潜むアサドは、プレイヤーに意思疎通を図る。


 爆発時の負傷は、悪魔の再生能力でとっくに回復済み。


 独創世界の崩壊という欠陥を隠しつつ、役割を全うする。


 ――残された時間は少ない。


 ゲームが崩壊し、収拾がつかなくなれば赤点。


 崩壊前に、広げた風呂敷を畳めたのなら及第点。


 プレイヤーが白熱するイベントを完遂できて満点。


 運営としての手腕が問われ、後の評判にも繋がる場。


 並みの悪魔なら楽な方に流されやすいが、目標は魔神。


 ――出世のためにも妥協はできねぇ。


 諸々の事情と、不測の事態に対応できてこその地位。


 心地いいプレッシャーを感じながら、アサドは言い放つ。


『相棒を殺せば、先着一名に一人用特急権の旗をプレゼントだ。有難く思えよ』


 プレイヤー側に追加されたのは、裏切りの報酬。


 時短と進行を兼ね備えた、波紋を呼ぶ催しが始まる。


 この時点で、世界が崩壊するまで残り五分を切っていた。


 ◇◇◇


 再び静寂が訪れていた、針葉樹の森。


 そこで運営から告げられたのは、新ルール。


 仲間割れを誘発させるような、エグイ仕様だった。


「「……」」


 ルーカスと閻衆は、互いに見つめ合う。


 言葉を発することなく、様子を伺っていた。


 ――疑われるのも無理はねぇ。


 こちとら裏切りの代名詞みてぇな存在だ。


 実際に、アザミを見事なまでに裏切ってやった。


 今度は自分かもしれない。奴はそう考えているはずだ。


「アザミも旗も、探す時間はまだある。いったん落ち着こうぜ……な?」


 修羅場になる前に、ルーカスは手を打つ。


 閻衆の優先順位に関しちゃ、今のところ不明。


 アザミを追いたいか、元組長の引換券である旗か。


 ざっと考えれば二択だが、どちらもあり得るのが現状。


 適当に会話を転がして、現状の最優先を探る必要があった。


「言ってることは分かる。……だが、お前が裏切らない保証が何一つない」


 閻衆は拳を構え、臨戦態勢に入っていた。


 身から出た錆。言葉を間違えれば、即戦闘だ。


 最悪、戦ってもいいが、出来れば穏便に行きたい。 


「ライフを削るのは収集品だけ、だったよな。無駄撃ちすんなよ」


 ルーカスが地面に置くのは、RPG-7。


 予備の弾頭も一つ置き、全面的に降伏する。


 裏切れない状態なら、ひとまず信用されるはずだ。


「…………」


 閻衆は黙って受け取り、感触を確かめる。


 渡した意味が分からねぇほど、馬鹿じゃねぇ。


 クールで残酷な決断を下せるのが、ヤツの本性だ。


 その矛先を向ける相手じゃねぇってのは分かったはず。


「というわけで、次の指示を頼むぜ旦那。ゲームが終わるまでは従うからよ」


 ルーカスは背中を向け、森を見渡していく。


 完全な無防備。信用を得るための演技ってやつだ。


 後は機が熟すのを待つだけ。それで、使役権はもらいだ。


「……あぁ。だったら、最初の命令だ」


 すると、閻衆は背後から声をかけてくる。


 アザミか旗か。二択を絞るための簡単な号令。


「お、話が分かるねぇ。出来れば、簡単な方で――」


 ルーカスは振り返り、話を促した。


 しかし、表情が凍り、続く言葉が止まる。


 見えていたのは、RPG-7を向けている閻衆の姿。


「――姐さんのために死んでくれ、ルーカス」 


 相棒はその引き金を引き、予期しなかった三択目を選んだ。

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