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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第102話 強制二択

挿絵(By みてみん)




 周囲を覆うのは、薄い銀色の壁。


 見えるのは、蓮麗と白き神と燃える森。


 外の声は聞こえるが、中の声は伝わってない。


 攻撃は一切通らず、完全に閉じ込められている状態。


「あぁ、クソ……! 結界ってやつか」

 

 ドンと拳を壁に叩き、マイクは現象を理解する。


 出る出ない、聞こえる聞こえないは、神の意のまま。

 

 殺傷力はなく、繊細なセンス操作が可能とする高等技術。


 そのため、条件の自由度は高く、強度はセンス量に依存する。


「相手は神。ゴリ押しでの突破は不可能だろうな」


 抵抗するのを早々に諦め、やるべきことを模索する。


 目の前で起こるのは、神が主導権を握る、蓮麗との交渉。


 人質解放を条件にして、能力を披露しろと脅しをかけていた。


 ――猶予は一分。


 その間に、結界内の酸素がなくなり、酸欠になるらしい。


 すでに十秒ほどは経過し、そろそろ頭がクラクラしてくるはず。


「待てよ……。コイツは……」


 思考を巡らせる中、違和感を覚える。


 起こるべきことが、一向に起こる気配がない。


 時間を追うごとに信憑性が増し、疑う余地がなくなる。


 交渉の根幹となる部分であり、蓮麗の立場を不利にさせるもの。


 ――それは。


「酸欠の件はハッタリだ! 気付け、蓮麗!!」


 マイクは神の虚言に気付き、必死で声を荒げる。


 しかしそれは、結界内に虚しく響き渡るだけだった。


 ◇◇◇


 見えるのは、必死に抵抗するマイクの姿だった。


 結界内の酸素が少ないのか、もがき苦しんでいる。


 放っておけば、見殺し。取引に応じれば、殺される。


(我か、マイクか……。簡単には選べないヨ……)


 限られた時間の中で、蓮麗は頭を回し続ける。


 都合のいい奇策や、妙案なんてものは浮かばない。


 行動は強制的に二択に絞られるも、決断できずにいた。 


「あと、三十秒」


 そこで聞こえるのは、白き神の無慈悲なアナウンス。


 選択次第で、どちらかの命が尽きる、死のカウントダウン。


『ほらな。マカオも捨てたもんじゃないだろ?』


 脳裏に蘇るのは、有り金をオールインした勝負のバカラ。


 巨額の借金が、ディーラーのイカサマで帳消しになった光景。


 顧客の身辺を調査し、弱者に施しを与える方針だと知った出来事。


 ――マイクがいたから救われた。


 負けていれば、この身体は本国に売られていた。


 薬漬けにされ、強者の慰み者にされるのがオチだった。


 彼には恩がある。彼がいたから、嫌いな母国を好きになれた。


 ――だから。

 

「あと……」


「取引に応じるヨ。マイクを解放するネ」


 蓮麗は白き神の言葉を遮り、決断を下した。

 

 愚策も愚策。この後の展開も容易に想像がつく。


 それでも、恩人の命には、代えがたいものがあった。


「言うは易し、行うは難し。結果で示してもらえませんこと?」


 白き神は結界を解かず、その時を待っていた。


 虚言を警戒し、要求が叶うまで解放しない腹積もり。


 この間にも、酸素が減って、手遅れになる可能性もあった。


(我が犠牲になって、マイクが救われるなら、それで……)


 蓮麗が一度下した決断は、簡単には覆らない。


 身体には赤色のセンスを纏い、準備を着々と続ける。


「――――」


 結界内では、騒ぎ立てるマイクが見える。


 壁を指でなぞり、何かを伝えようとしていた。


再見サイチェン、マイク。恩は返させてもらうよ)


 視線を離し、蓮麗は覚悟を決める。


 右手を掲げ、言われるがまま行動で示した。


寿契献命ショウチィシェンミン――【一年了イーニィエンリョウ】」

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