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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第六章 行雲流水
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AAR

 我々の任務は敵機を撃墜する事にある。だから戦果のある事は当然で、誇るべき事では無い。自分が1機を撃墜できたのは、上空に自分を守ってくれる僚機があるからである。 又、我々は生死の関頭に立つ時、平静でなくてはならぬし、それ故に人間には修養が大切である。

                       陸軍航空隊 少将 加藤 建夫



 夜が明けた後も私達は仮眠を挟みつつ、何度か出撃して嫌がらせの様な攻撃を行った。

 演習は2日目の日没に状況を終了したが、演習部隊はそのまま現地で管理野営を行い次の朝駐屯地へと帰隊した様だ。

 今回のスケジュールは1夜2日(お泊りじゃ無いから1泊2日とは言わないのよ)で有る事は通達されていたのだが、2日目の何時迄演習を続けるかは明確に示していなかったので、下手をすれば日付が変わる直前まで状況を引っ張る可能性も考えていたのかも知れない。その為の準備等は予めしていた筈で有り、帰営を急ぐよりは状況終了後そのまま1泊して態勢を整え直す方が安全と判断したのだろう。

 ただ、それは一部では余り成功したとは言えない様だった。何故なら状況が終了した夜なのである、演習開始前に実施された部隊で統一した夜宴(BBQ)の様な物こそ行われなかったが、各天幕ではお疲れ様会と称する酒盛りが行われ翌朝には寝不足や二日酔いの隊員がそこかしこに見られたからだ。


 演習などの訓練では良く〈始まれば終わったようなもの〉と言われるみたいね。まあ確かに、終わってみれば結構あっという間だったけど。

 でも演習部隊はともかく、統裁部や私達教導部隊はここから更に忙しくなるのだ。

 飛行場に於いて演習状況の終了連絡を受けた私達は、〈これで今日のお仕事は終わり。はい、お疲れさん〉とは当然ならず、次の日に演習部隊と行う予定のAAR資料の作成にほぼ徹夜状態で取り組む事となった。

 AARとは、After Action Review(アフター・アクション・レビュー)の頭文字を取った言葉だ。

 軍隊が訓練や演習を振り返って評価・検討を行う事である。日本語に対応する言葉は〈訓練実施後の分析検討会〉となり、端的に表せる様な用語は無いようだ。

 訓練や演習はそれが終了したら、その結果を踏まえて次に生かさなければならない。

 その為に演習中に起こった重要な場面での部隊の行動や指揮官の決心事項について、何故そうなったか、その時何を考えていたのか等を一つ一つ明らかにしていくのだ。

 但しAARでは、部隊行動や指揮官の決心がただ単に良かったか、悪かったかを判断する訳では無い。

 まあ結果に関しても重要ではあるが、それよりも何故その結論に至ったか、その行動を取った理由は何だったのか等を重視している。

 勝った負けたの犯人捜しでは、建設的な対策は生まれない。寧ろ負けや失敗の方こそ部隊としては重要かもしれない。

 戦場では、敵味方双方にあらゆる場面で間違いや錯誤、判断の誤りが起こる。敵味方どちらも間違いを犯す中で、その間違いがより少なかった方が結果として勝利を得ると言っても過言では無い位である。時には間違った判断から導き出された結論が、結果的に最良の行動になる場合だって有る。

 所謂〈勝ちに不思議の勝ち有り、負に不思議の負け無し〉というヤツである。

 だから演習をAARで振り返る事により、思考過程と結論、上手く行った時、失敗した時、それぞれにその原因を求め対策をしっかりとやろうという事なのだ。


 そんな訳で、統裁部って演習の計画の段階から実際の演習中、そして演習後と色々やらなくちゃなんない事が多くて大忙しなのよ。

 演習が終わった後はその記憶が新鮮な内にAARを実施するのだが、当然その準備も統裁部の仕事。

 なので私達も昨日は疲れた中、作戦飛行中の行動を時系列を追って明らかにしたり、コクピットの戦術画面を録画した物をコピーしたり、注釈を付けたりした色んな資料をデータとして統裁部へ提出しなきゃならなかったの。


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