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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第五章 連 戦
84/107

錯 誤

「連隊長、報告です。只今砲兵大隊が攻撃を受けています」

「なんだと、相手は何だ。詳しい状況は分かるのか」

 このタイミングか、こちらはそろそろ敵のケツに食い付こうかと云うのに。砲兵大隊には、敵の機動打撃に対する妨害か増援の遮断を任せようかとの腹積もりでおったが。

「どうやらロケット攻撃を受けた模様です」

「そうか。よし、相手は砲兵だな。

 先手を取られたのは痛いが、こちらも相手の居場所を特定出来たと思えば、まだ主導性を取り返せるか」

「しかし連隊長、砲兵大隊の損害如何では火力の優越を保持する事は困難かと」

「何のための機動力だ、敵の苦痛とする方向から迅速に突進を図れば良い。

 それに砲兵部隊の敢闘精神は、我々機甲部隊に劣らぬぞ。たとえ1門の砲となっても、1名の隊員となっても戦闘を継続するのが彼らだよ」

「はっ」

「それより、大隊予備として後方へ下げた3大隊の生き残りはどうなっとる。砲兵大隊の護衛として派遣していた筈だな。そちらからの報告は上がってきてはおらんのか」

「ただ今確認を取ります」

 完全を求めては切りが無いが、それでも判断に資する情報が多いに越した事は無い。

「連隊長! 第3大隊は敵の攻撃ヘリと交戦中の模様です」

「またか、奴らはつくづくヘリ部隊と縁が有るな。

 つまり、敵砲兵のロケット攻撃に連携してヘリが攻撃して来たという訳か。

 よし、とにかく砲兵大隊は速やかに対砲迫戦闘だ。細部要領は大隊長判断。

 こちらへのD/S(ダイレクト・サポート:直協任務)はひとまず後回しだ」

「了解、伝達します」

「あ~、後は何だったか…

 そう、ヘリか、うむ。そっちは、今現在我々がどうこう出来る状況では無いな。

 先程こちらから報告を要求した所だ、これ以上やいのやいの言っても無駄だろう。向こうにも連本(連隊本部)の存在が意識された筈、後は待つのみだな」


 戦車連隊長の判断は、存在しない敵の砲兵に対する対処を優先させるものだった。

 攻撃ヘリに対する理解度が思考の幅を狭めた結果となってしまった様だ。ここに来て陸軍航空の存在を意図的に貶めてきたツケが回ってきた形だ。

 戦場は混乱で満ちている、敵も味方も錯誤の連続である。

 果たしてこの判断が戦いの帰趨にどの様な影響を及ぼす事になるのか、但しこれは演習である。演習での失敗は得難い経験となる、いやその様にしなければならない。


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