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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第四章 夜を克服せよ
72/112

アクティブ防護システム

「ねえ、ハーレー。この際、この役立たずの模擬ファッ●ン装置にこだわる必要って無いんじゃない」

「どういう事だ、ダーク」

「LRFよ、レーザーレンジ・ファインダー(レーザー測距装置)」

「いや、LRFは確かに桁違いの出力だけど、それ以前に波長が違う。相手の交戦装置は反応しないだろ」

「だから役立たずのナニの話じゃ無く、LRFで相手戦車を直接狙い撃つのよ」

「はあ、そんな事したら相手のレーザー・アラームが反応しちまうだろうが。

 ん、そうか! その手があったか」

「そう。上手く行けばAPSに連動して、相手から何かしらの反応は引き出せる筈よ」

『よし、ジュリエット。敵の戦車に向かって、LRFを撃ちまくれ。いつもみたいに目標をわざと外して撃つ必要は無い。構わないから直接戦車を狙って撃つんだ』

「え、ハーレーどゆこと。いいの?敵のレーザー・アラームは?」

 そう、最近の戦車には敵ミサイルの誘導用や測距用のレーザーを検知すると、それを乗員に知らせる装置が搭載されてるのだ。だから、もしLRF(レーザー測距装置)などで目標との距離を測る必要がある時は、直接相手にレーザーを当てたりせずに近くの地面を狙う事で距離の近似値を得ているのだ。

『ああ。正にそれが狙いだ、相手のAPSを反応させろ』

「4(フォー)」(4番機了解)


 APSの説明は、ちょっと待ってね。まずは今相手にしてるハザフエリ共和国陸軍の主力戦車であるT―72について簡単に説明しちゃうわ。

【T―72】

 1973年に採用されたソビエト連邦の戦車である。

 当時のソ連ではT―72より少しだけ先にT―64という戦車が作られていた。

 そのT―64には、多くの革新的な技術が盛り込まれていたのだが、それが原因で様々な不具合が頻発する事態となっていた。それ以外にも技術的に高い目標を狙った為の生産性の悪さや、同じく最新技術故の高コストといった問題も表面化していた。

 その結果、T―64の評価はソ連の主力戦車としてどうなのかという所に迄発展してしまう。

 そんな中、実はT―64のライバル設計局が従来のオーソドックスで信頼性の有る技術を使った戦車を保険的に開発してたのである、それこそがT―72なのだ。

 そんなT―72は、開発コンセプトである低コストと高生産性、更には機密にあたらない技術の使用も相まってソ連以外にも数多く輸出される事となった。保険として開発された戦車が、ワルシャワ条約機構軍の主力戦車となったのである。

 現在、開発国のロシアでは既にT―64やT―72の後を継ぐ新型戦車も配備されているが、数の上ではまだまだ主力といって良く、その他のT―72を主力戦車として配備してる国々に於いても、それぞれの国情と時代に合わせた改修を独自に繰り返して戦闘力の維持・向上を図っている。


 そこで、お待ちかね。さっきから話に出てる〈APS〉も、そう言った性能向上の為の装置の一つなのだ。

【APS】

 Active Protection System(アクティブ防護システム)

 今迄の戦車の防御は、複合装甲やERA(Expiosive Reactive Armor:爆発反応装甲)など色々と考えられ、時代と共に進化して来た訳だが、それは何れも敵の弾を跳ね返すか、或いは貫通させない方法を追求して来た。

 つまり弾が当たった後の話だ。

 ここで誰かが「いやいや、そもそも敵の弾がこっちにぶち当たる前に何とかしたらイインジャネ」って思ったのだ。

 それがAPSの始まりである、発想の転換だ。でも当然それを現実化する為には様々な技術的ハードルを越えなくてはならなかった。

 そんな困難なハードルを克服して実用化されたAPSであるが、それは大きく二つに分類される。一つは敵からの脅威を命中させない様に妨害する〈ソフト・キル・システム〉、そしてもう一つは脅威を迎撃して直接破壊する〈ハード・キル・システム〉である。

 まずハード・キル・タイプの仕組みについて簡単に説明しよう。それは敵の砲弾やミサイルを検知するレーダーとそれを撃ち落とす迎撃弾から構成されており、レーダーによる脅威の検出から迎撃装置による脅威の迎撃までの一連の操作全てが自動で行われるのだ。

 なにせ比較的速度の遅い対戦車ミサイルでさえ、ほぼ音速で突っ込んで来るのである、戦車砲に至ってはその数倍、とてもじゃ無いが人の反応速度を超えている。

 そして、肝心のソフト・キル・タイプについて。

 敵の戦車にはレーザー・アラームが搭載されているという話はしたと思う、これはLWR(Laser Warning Receiver:レーザー検知器)と組み合わせて使われるのだが、そのシステムには発煙弾発射機も連動されているのである。

 発煙弾、つまり煙幕だ。

 煙幕とは古典的かつポピュラーな欺瞞システムだが、最近の多機能煙幕弾は人間の視界を妨害するだけでは無く、レーザーや赤外線探知を防ぐ効果も持っているのである。

 赤外線を放つ熱のカーテンと炭素の燃焼による煙で可視光と赤外線の透過を防ぐのだ。

 それによってIR映像装置を妨害し、対戦車ミサイルの熱源シーカを欺瞞、更にはレーザー誘導装置も妨害出来るという訳である。


 って事でハーレーは、わざとレーザーを直接撃って敵の反応を引き出すつもりみたいなの。


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