夫婦喧嘩と…
軍人で思い出したが、今回の対戦相手についてだ。
戦車の天敵は攻撃ヘリと言われて久しいが、まあそれは良い。問題はパイロットだ、4人中2人が女とは。
女の身でなぜわざわざ男の職業に踏み込んでくるのか理解に苦しむ。男には男の、女には女にしか得られない幸せがあるだろうに。私には彼女らが自ら望んで不幸になりに行っている様に思えてならない。
「全く」
「連隊長、なにか」
「ああ、声に出てしまっていたか。いやなに、今回の相手だよ」
「攻撃ヘリですか。まあ厄介な相手では有りますがね、女がパイロットの編成に入っているようじゃ」
ああ、駄目だ。もしかして今発言した2科長(情報参謀)以外にも、同じ意見の者がいるのかもしれない。
「2科長、君は確か結婚していたな」
「はい、それが何か」
「ふむ。それでは、君。勿論今までに夫婦喧嘩が一度も無かったなどとは言わせないぞ、どうだね」
「はあ、確かに何度か、いえ何度も有ります」
2科長を含め周りの参謀連中も、この会話が何処へと向かっているのか計りかねている様だ。全く嘆かわしい。
「そうだろうとも、私だってそうだ。
そして、喧嘩に勝つのはいつも女房の方だよ、私は負け通しだ」
「はあ、」
「まさか2科長、君は夫婦喧嘩で暴力に訴えたりはしていないだろうね。どうなんだ」
「ま、まさか。とんでもありません。うちも同じですよ、妻に勝てた事なんて有りません。彼女が私に花を持たせてくれた時以外はですが」
「うん、そうだろうとも。私達男はね、フィジカルな面では圧倒的に女性に勝っている。それは確かだよ。でもそれは女性が闘争という面について男に劣っている事にはならないと私は常々私は思っているのだ。
私はね、もう何年も女房と喧嘩はしていないよ。負け戦はしない主義なんでね」
「つまり…」
「そう、今回の対戦相手を女だと思って侮ってはならない。
ヘリの操縦にフィジカルな男女観を持ち込めば、痛い目を見る事になるのは我々の方だぞ」
「はっ。肝に銘じます。全くの認識不足でありました」
「女が戦場に出る事に関しては、全く馬鹿げた話だと私も思っている。
しかし、それと女の能力に疑問を持つのは別の話と言う事だ。
他の皆もいいかね」
「はい」
ふむ、何処まで伝わったかは正直疑問ではあるが、彼らの認識を改める事には成功した様だ。それでは、士気をもう少しばかり上げておくか。
「よし諸君、それではあの女どもに戦は男の華であり、女の幸せは家庭に有ることを思い知らせてやろうではないか。
その為には油断して負ける訳にはいかんぞ」
「了解しました。各隊にも、その旨伝達いたします」




