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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第三章 戦場へ、それぞれの思い
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訓令戦術或いは分権指揮

 さて、いよいよ共同(教導)訓練の本番の日が来たわ。

 今日まで私達は地形偵察のフライトをしつつ、ヘリコプター火力戦闘計画を練り上げた。

 サッド隊長は全体を取り纏めつつ、実施内容の細部について訓練を統括してる上級部隊と何度も話し合っていた。飛行場から演習統裁部が置かれている駐屯地に出向いて、統裁会議に参加して具体的な取り決めなどを一つ一つ詰めて行ってた様だ。指揮官ってやっぱり大変ね。

 私達が計画を練り上げたと言っても当然相手のいる事、学芸会じゃ無いんだから行動の全てが事前に決められる訳では無い。だから、そこの所は現場指揮官(今回の私達で言えばハーレー)の自主裁量の余地が多いに認められてるってカンジだ。

 所謂〈訓令戦術〉(Auftragstsktlk:アウフトラークスタクティク)、或いは〈分権指揮〉(mission tactics:ミッション・タクティクス)ってヤツだ。つまり最終的に達成しなければならない目標のみを定めて、それを達成する為の方法を具体的には決めないやり方である。この方法だと計画を作成した時と実際の戦場で状況が変化したとしても、現場指揮官がそれに柔軟に対応出来る利点が有る。

 航空隊の実施する作戦は、特に後方の指揮所との無線による指揮・連絡が取れない程遠距離に進出して行動する場合が殆どである。敵の縦深深くで戦闘する攻撃ヘリに対して、後方地域に居る指揮官は状況を適時性をもって的確に判断するのは非常に困難だ。だから、戦況を最も把握出来る現場の指揮官や任務機長に権限を委任する事が必要になるのである。クラウゼヴィッツも言っている、〈戦場の霧は、前線から遠くなる程濃くなる〉と。逆に一から十まで指示されなくては何もできない様な現場指揮官は必要無いって事。当然そう出来る様になる為には厳しい訓練と教育が必要なのだが。


 今回の訓練での私達は、戦果拡張部隊に連携する空中機動大隊。それを支援する攻撃ヘリ小隊という事になっている。

 実際には戦果拡張部隊も空中機動大隊も、実働の部隊としては存在しない。演習想定上それらの部隊が居るものとして(設想って言うらしいわ)行動するのだ。

 演習開始当初の具体的な任務としては、ヘリボン部隊の降着に先立つ進路啓開(と警戒)、LZ(Landing Zone:ランディング・ゾーン、ヘリコプターの降着地域)の事前制圧、降着後の火力協力となる。

 勿論、本来なら計画の段階で飛行経路もLZ(降着地域)も敵の脅威が無いか、又は少ない地域を選定するのだが、今回は相手となる戦車連隊の為の訓練なのでわざと交戦の機会が得られるであろう地域が統裁部より指定されている。

 但し、今回の演習は対抗型式の自由統裁だから相手部隊の行動を細部までは統制出来ない。訓練地域は指定されてるけれど、結構広大な範囲なのでお互いに当初の計画通りに戦況が進展するかは正直分からない。演習部隊と統裁部が攻撃と防御とに分かれていれば、ある程度地形上から妥当性の有る地域を絞り込めるのだが、今回は想定を遭遇戦にしてる為、尚の事難しいかもしれない。

 まあ、何にせよ相手部隊が実の有る訓練を出来る様にこちらも色々と頑張らなくてはならない訳だ。


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