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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第二章 教 導
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アフガニスタン紛争

 プリンスの語るアフガニスタンのアレとは。


【アフガニスタン紛争】

 アフガニスタンにおける共産党政権とこれに対抗する武装勢力ムジャヒディーンとの内戦にソビエト連邦が軍事介入した一連の紛争。

 期間は、ソビエトが軍事介入を開始した1979年から完全撤兵する1989年までの約10年間。紛争自体はソビエトが撤兵後も続いた。

 長期化した紛争はソビエト正規軍とアフガンゲリラとの戦いの様相から、ソ連版のベトナム戦争とも言われる。

 この紛争でソ連はベトナムでの米軍と同様にヘリコプターを多用した作戦を実施しており、その点からもベトナム戦争との類似性が指摘されている。

 紛争初期のゲリラはヘリコプターに対する有効な対抗手段を持たなかったが、高標高かつ高温といったアフガニスタン特有の環境によってヘリコプターが額面通りの性能を発揮出来無かった事と、待ち伏せ戦術といった自国内での戦いの為に地形に習熟した有利な戦場を選択出来る利点を最大限に活用する事によって戦闘力の差を埋めている。

 更にソ連にとって逆風は、反共産圏国家からの非公式な武器の供与がゲリラに対して行われた事である。

 特に紛争の後期以降、当時最新のMANPADS(Man Portable Air Defense System:個人携帯防空システム、携帯式対空兵器)であるFIM―92スティンガーの供与と取り扱いに関する教育がアメリカ中央情報局(CIA)によってなされている。この事によりソ連の攻撃ヘリMi―24ハインドは苦手とする低空での機動を余儀なくされ、戦闘力の発揮に制限を受けている。


「アフガニスタン紛争では、ムジャヒディーンのスティンガーによる攻撃でハインドが落とされまくったって話が出回ってるわね」

 またダークが空気を読まない発言を。

「いや、確かにスティンガーは脅威だったらしいし実際損害も出ている。しかしハインドにもチャフ/フレア・ディスペンサーの増設やIRサープレッサー、IRジャマーを追加装備するなどして対抗措置はそれなりにしっかりとやっていたのだ」

「へえ、そうなん?」

 ハーレーのノリの軽さも平常運転ね。

「いいか、アメリカン。アフガニスタン紛争でのヘリコプターの損耗はベトナム戦争での貴様たち米軍のそれと比してもほぼ同等の数値なのだ」

「ふむ、ソ連からの情報公開が限定されているからな。イメージが先行してしまってる訳か」

「その通りだ。ただ残念な事にわが軍においても、そのイメージが蔓延しているという訳だ。

 上層部や、ある程度秘密情報にアクセス出来る権限を持つ者には、真実を知る事は比較的容易なのだが、怠慢か或いは故意か、未だにな」

「うーん、純粋に軍事的な事を考えればそうはならない筈だけど、軍も組織だからなー。

 政治かあ。真実を周知されない方が都合の良い勢力が主流を占めているって事だろうなあ」

「よし、この国での陸軍航空隊が置かれた状況は概ね理解した。

 そこで話は元に戻るが、軍が想定している敵は何だ。これを明確にしておかなければ話は進まないからな」

「うむ、それに関しては我が国が独立してから一貫して東に国境を接するカザフスタンだ。

 現在両国の関係は幸いにも良好であるが、それがこの先もずっと続くとは限らない。

 国境を接している以上備えを怠る訳にはいかない。国境と言えば北のロシアについても言える事だが、こちらはまあ、国力が違い過ぎる。勿論戦争となれば死力を尽くすが、正直出来る事はそう多くは無い」

「了解した。

 本来なら、この様な話はさっきの戦車連隊と直に詰める内容なんだが」

「ああ、奴らは少々と言うにはいささか偏見と差別があからさまだが。

 でも馬鹿じゃない。そこは、まあ救いではあるのだが」

「ええ~、あれでバカじゃないって!」

 いやー、流石に私も思わず口を挟んじゃったわ。他国の高級軍人を馬鹿呼ばわりは如何なものとは思うけど、ねえ。

「ガハハ、そうだよな。

 こんなお嬢ちゃんにも分かる道理だぜ、プリンス。いくらお前が優秀でもこの国に生きている以上は思想にバイアスがかかるのは避けられない様だな」

 そうよね~、やっぱり私達の常識じゃ考えられないわ。

 あっ、でも彼らが普通だとしたら…。この国にはそれ以上にヤバい奴らがうようよ居るって事? こわっ。 

「とは言えさっきの第21戦車連隊の連中な、馬鹿じゃあ有るがまあ優秀っちゃ優秀なんだよ。それは間違い無い」

「まあ、あんなタ●無し野郎共でも国境に張り付いてる部隊だからね」

 え、そうなのダーク。

「そう言うこった。まあ血筋の良い、所謂エリートって言われる連中は首都防衛を担任する第1師団なんだが、こと実力の面で言やあ国境配備の第2師団に軍配が上がるって事さ。

 その分荒っぽい連中がそろってるがな。しかし、それ故プリンスみたいなイレギュラーも居場所を確保出来てるって寸法だ」

「居場所って言うほど居心地は良くないけどね。

 で、この国の地理的特性上、東方のカザフスタンとの国境から首都までは戦略的縦深が少々心許ない。

 その国境を越えて来るカザフスタン軍を迎え撃つのが第2師団の役割なんだ。地政学的不利は如何ともし難いけど、こちらは基本国土戦だ。地の利が有る、地の利しか無いとも言えるが」

「カザフスタン軍か、彼らもこの国同様装備も戦術も旧ソビエトの物を受け継いでいると考えて問題ないだろうな。但し現ロシア軍程の規模は持ちえない、つまりロシア軍の戦い方を縮小改変し、国情にフィットさせた物にならざるを得ない訳だな。

 ふむ。基本ロシア軍の戦術を踏襲するとしてだ。それでは、こちらはOMGとして戦えばいいのかな」


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