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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第二章 教 導
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陸軍航空隊って、やっぱ継子扱いなのかな

「さあて、何から話したらいいもんか―」

 この国の女性パイロットであるスヴェトラーナ准尉を伴って、突然私達の控室に現れたロックはその口調とは裏腹に、何処かこの状況を楽しんでいる様な節が見受けられる。

「先ず、契約先である軍が具体的に我々に何を求めているのか。それだけはハッキリさせてもらいたい」

 契約は既に成されているとはいえ、先程の顔合わせがあの通りの有様だった為の念押しだ。

「うむ。まあ、そいつは別に難しい話じゃ無い。

 ついさっき、アンタらが面通しした連中な。第21戦車連隊の連隊長以下なんだが、その戦車連隊に攻撃ヘリとの戦闘を体験させたいって事だ。

 それは間違いない」

「確認なのだが、この国は元々はソビエト連邦の一部で、あのソ連崩壊の直前に独立を果たした衛星国家で間違いは無いな」

 サッド隊長の問いに今度は、スヴェトラーナ准尉が答える。

「歴史で言えば、我が国は元々はコサックによって建国されたのだ。その後、まあ色々あって一時的にソビエト連邦を構成する一国家となったのだが。

 ただ、同じ時期に独立を果たした隣国のカザフスタンなどとは違って古くからロシアとの民族融合が進んでもいてね、更に言えば人種的にも純粋なカザフ人と言う訳でも無いんだ。

 だから、この国には私の様にロシア風の名を持つ者も多いという訳だ」

「独立したとは言え、ロシアとの関係は悪くないと」

「国民の感情としては色々と複雑なのだが、概ねそうだ。

 軍の装備もほとんどがロシア製だしな。独立の時にほぼそのままソビエトから部隊ごと引き継いでいる。

 ただし、」

「航空戦力についてだけは、ソ連軍は装備のほとんどを本国へ引き上げてしまったという訳だな」

 その辺りの状況については、この国に限らずあの時代ではそう珍しい事でも無かった筈である。

 だからと言って苦労が軽くなる訳でも無いのだが。

「その通り。

 その為航空の分野に関しては独立した後しばらくは、傭兵によって戦力を維持していたのだ。

 ただし幸いな事に、我が国は天然資源に恵まれていた為経済的な復興は比較的スムーズでな、ロシアとは良好な関係を維持していた事もあって、空軍に関してはロシアから装備を購入、再建出来たのだ」

 なる程、その辺が傭兵であるロックとの接点か。そして、

「空軍に関しては、か」

「そうだ。

 残念な事に陸軍航空隊については優先順位が下がって、そのまま現在に至っているのだ。無論、技術や運用のノウハウが途絶えてしまえばそれを再び獲得するのは至難の業なのは承知しているから、少数ながら陸軍航空隊も存在してはいるが」

「本格的な作戦を実施出来るレベルには無いという訳か」

 ヘリコプターは装備品としては、やはり金が掛かる。

「まあ、そういう事だ。

 まず純粋に数が圧倒的に足りない、しかも装備しているのはほとんどが輸送用のヘリなのだ」

「ふむ、確かに平時においては戦闘にしか使い道がない攻撃ヘリは陸軍内でさえ肩身が狭いのは分かる」

 陸軍の管轄とは云えヘリは空を飛ぶ物だ、そもそも馴染みが薄い。使いこなせれば絶大な戦力となる反面、運用に関してはどうしても専門性が求められる。但し、それは別に航空隊に限った事では無いのだが。

 やはり陸にあっては異質な存在と云うのは否めないか。

「更に言えば、80年代のアフガニスタン。アレのせいでね」


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