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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第二章 教 導
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意外?な人物との邂逅

「ねえサッド隊長、私達って依頼を受けてこの国に来たんですよね」

 思わず愚痴めいた言葉が出てしまう。

 共同部隊との実りの無いコンタクトを終えた私達は、別室で取り敢えず待機を言い渡されていた。

 特に粗略に扱われている訳では無いのだが、わざわざ外国から呼び寄せた相手に対する態度でも無いと思う。うん、こんなんじゃ先が思いやられるわ。

「まあ、色んな相手が居るものさ。なあ隊長」

 まあ、楽天家のハーレーは平常運転ね。

「それはそうでしょうけど、あのフニャ●ン野郎共とでまともな訓練になるのかしら」

 おお、ダークは珍しく全体を意識した発言だわ。

「そうです…、そのように。…はい、宜しく頼みます。まだしばらくはそちらへは行けそうも有りませんので…」

 ラークシィ整備班長は携帯電話でトーシュカ整備先任と話をしているみたい。前回は留守番だった先任も今回は同行している。

 因みにヘリを始めとする私達の装備品一式は、この駐屯地近傍にある陸軍の飛行場に間借りする形で展開している。


「やあやあA・A(エア・アーマー)社の諸君、調子はどうだい、うん」

 そんな時、突然に部屋の扉が開き一人の男が現れた。

 大柄で筋肉質、体を鍛えてはいるけど脂肪もそれなりに付いている。頭は短髪で顔全体に薄っすらと無精ひげ、深い皺は年齢を感じさせるけどその目は少年の様。

 全体の印象を一言でまとめると、豪傑って所かしら。

「ちょっ、おまっ。そんな挨拶があるか」

 あ、もう一人いた。男の陰に隠れて見えなかったけど、小柄な少年だ。

 大男の方は戦闘服をかなりラフに着こなしているのに対して、少年は服装規定通りのキッチリとした格好である。

 そのお陰でこの少年がパイロットだと分かった、飛行服には一般の戦闘服と見分けられるポイントが幾つかある。

 先ず上から、帽子。

 帽子は一般兵の野戦帽とデザインは同じでも、航空隊の隊員が使うものには風で飛ばされない様に顎ひもが付いている事が多いのだ。

 ジャケットには当然胸にウイング・マーク、トラウザーズの太もも部分にはチャート(地図)を挟んでおく為のクリップ、そしてコクピットに座った状態でも使いやすいようポケットが両足の裾部分にも有る。

 太もものクリップと裾のポケットは大きな識別点だ。と云うのも、通常の腰に有るポケットはショルダーハーネスとシートベルトで操縦席に固定されてしまうと、全く使えなくなるからだ。

「ガハハ、プリンスお前禿げるぞ」

「禿げるか!」

 この二人、年は随分と離れている様に見えるけど、とっても気安い感じね。

「うむ、懐かしい顔だ。キャプテン・バッツ、いつ以来か。

 いや、今はコマンダー・バッツか」

 男がこちらへと話し掛ける。

「ミ、ミスター…!」

 ハーレーってば何て顔してるの。

「ハイパワー、久しいな」

 対してサッド隊長は随分と落ち着いてるわ。

「ロックでいいぜ、ここでもそれで通してる。

 初めましての顔もあるな、ロックハンドだ。ヨロシクな」

 え、今ロックって言ったの。ロックって、あのロック?

 なる程、ハーレーが驚くのも無理ないわね。私も状況が全く掴めないわ。


 ロックハンド、またの名をMrハイパワー、凄腕の傭兵パイロット、本名不詳、年齢は50歳をとっくに超えており60に近いらしい。

 そして、つい数か月前に私達と東南アジアで戦った相手の筈。

 筈っていうのは、あの戦場でロックというコールサインを使うMi‐24ハインドと交戦はしたけれど、直接相手と会話はしていないから。

「あん時の一番機はどっちだったんだい」

「私だよ。私とそこのジュリエットだ」

 やっぱりそうだ、これでハッキリした。あの時のハインドが彼だったんだわ、危うくこっちは撃墜されそうになったんだから。

「ほう?お前さんにしちゃ、不用意な機動が多かった気がしたが…」

「それはこちらも同じだ、アンタが仕留めそこなうとはね」

「うん?まあ、こっちにも色々と事情が有ってな。まあ、お互い様か。

 所でお前さん、ヘリから降りちまったって聞いたが…」

「先ずは今回の事情を説明してくれ。その為に来たんだろう、ロック」

「おう、そうだった。年を取るとつい自分の事しか考えなくなっちまう。

 老い先短いにも拘らず、気ばかり長くなるからな。すまんすまん」

「で、そちらの彼は」

「彼? ワハハッ」

 ロックが、隣に立つ少年の背中をバシバシ叩きながら大笑いしている。

「クソッ、お前がプリンスなんて呼ぶからだろうが」

「ワハハ。

 こいつ、いや彼女は今ワシとクルーを組んでいるプリンス、ん、あー、本名は何て言ったっけ」

 なんと、確かに少し華奢な感じがしてたけど女の子だったのね。

 この国の事情から軍に女性がいるという選択肢が全く無かった。それともロックと同じ傭兵なのか。しかし、言われればもう女性以外には見えない。

「ハザフエリ陸軍准尉、スヴェトラーナ・ベリク」

 へえ、この国の軍人なのか。プリンス呼びについてはスルーね。

 ロックとプリンス、こうして見ると美少女と野獣って組み合わせか。

 階級は、准尉と。


 軍隊の階級は大きく士官、下士官、兵に分かれている事は知っているだろうか。

 大雑把に説明すると、士官は少尉以上で所謂指揮官、軍隊の管理職だ。士官学校や士官候補生課程などを履修してる。

 そして、次の下士官は伍長や軍曹である。

下士官については、よく字面から下級の士官と勘違いしてる人もいるが、士官と下士官は全く別物なのである。下士官については鬼軍曹をイメージすると分かりやすいか。現場を知り尽くしてるまとめ役、一時的な措置で現場の指揮を取る事もあるが基本的には士官の頼れる補佐役となる。

 時にベテランの下士官は新品の少尉よりよっぽど優秀で頼りになるのだが、それでもあくまで部隊を指揮するのは士官の役割なのだ。

 下士官から士官への昇任の道も設けられてはいるが、部内の選抜試験に合格するか或いは推薦、もしくはその両方が必要となる。どちらにしても部隊指揮官としての教育を受けなければならない。

 いくら優秀な下士官でも、教育も無しにそのまま士官に任官は出来ないのだ。繰り返しになるが、士官と下士官では求められる役割がそもそも違うという事である。

 最後は兵。

 兵隊だ。よく一般の人達が軍人を兵隊さんと呼ぶが、階級制度的に言えば兵隊とは、二等兵や一等兵などの事を指す。軍隊の最下級の階級だ。

 大抵の軍隊では兵に対して任期制を採用している。一任期は主に2年から3年で、任期を終える毎に継続するか辞めるかを選択する事になる。その為、兵は軍隊で資格を取り任期を満了した後は民間へと出てゆく人が多い。兵がパートタイマーとも呼ばれる所以である。

 それに対して士官や下士官は職業軍人と呼ばれ、定年が有り年金も支給される。

 下士官から士官になる為には試験と教育が必要と説明したが、兵から下士官になるにも同様である。

 つまり士官、下士官、兵にはそれぞれ大きな垣根が有るという事だ。更に言えば、士官と下士官・兵は世界が違うとまで言われている。駐屯地の中では、食堂も浴場も士官は専用の施設を使う事でそれが知れるだろう。


 て事で、プリンスことスヴェトラーナ准尉ね。

 准尉と言うのは、結構特殊な階級なのだ。字のごとく准たる尉官という意味なのだが、国によってその基準や定義が微妙に違ったりしている。

 何れにしても共通する事項としては、准尉とは士官と下士官との間にある階級で、士官では無いが士官と同様の待遇を受けるという事である。

 この国の現状から考えるに、スヴェトラーナ准尉の場合は軍務上必要な特殊技能(この場合ヘリコプターのパイロットね)を持っているけれど、戦闘指揮を執る士官とは認められない為の処置だと思われる。

 彼女も色々と苦労してそうね。


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