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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第二章 教 導
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前途多難?かしら

 はい、現実逃避終了~。

 今の状況を説明すると、目の前には壮年の男性が数人ソファーに座っている。

 この人達が私達と訓練する部隊の指揮官と参謀達だ、それとは別に今回の訓練全体を取り仕切る偉そうなおっちゃん(上級部隊の責任者)が一人。

 対してこちらは、派遣隊の責任者であるサッド隊長以下、ハーレー、ダーク、私のいつものメンバーとラークシィ整備班長の計5人。

 そして今いる場所が、ハザフエリ共和国にあるヤイツクって言う結構大きめの都市、その外れに在る駐屯地である。

 ヤイツクという街はハザフエリ共和国の首都であるアラティウから北に約400kmほど行った所にあるオラル州の州都で北をロシアに接してる国境の街だ。

 そんな国境の街の駐屯地の一室で私達は今回の共同(教導)訓練の相手と顔を合わせているのである。

 通された部屋は専用のミーティング・ルームでは無く、今回この訓練の総責任者を務める人の執務室らしい。窓を背に主の為の立派な執務机があり、部屋の中央には応接セットが設えてある。結構な広さの部屋だ。

 通された部屋の立派さに比べると、室内の雰囲気は控えめに言っても最悪だ。まじで。

 理由は訓練相手の部隊指揮官以下がこちらに対するなめ腐った態度を隠しもしない事と、そんな相手に初っ端にカマしたダークの毒舌のせいである。

 そもそもの話、今回私達が訪れたハザフエリという国は女性の地位が相当に低いのだ。未婚の女性は家長の持ち物という考え方が未だに主流であり、女性の社会進出など殆ど無い様である、まして軍人なんてって事だ。

 まあ、私達は厳密には軍人では無いのだけれど。しかしパイロットとしての能力を女性というだけで疑われたダークが大人しくしている筈も無く、相手に対して皮肉と言うか、かなり挑発的な発言をしてしまったのだ。

 向こうはまさか女に言い返されるなんて思ってもみなかったらしく一瞬言葉に詰まってしまい、それが更に相手のプライドを傷つける事になり―。

 こちらの気持ちとしてはまあ、ダークの皮肉があの程度で済んで良かったって所なのだが、どうも相互の認識に大きな隔たりが有ったらしくてこの有様って訳なのだ、ふぅ。


「ともかく、こんな小娘どもが相手じゃ話にならんと言っている」

 先程から主に発言しているのは、訓練相手の中でも比較的若い将校で、部隊の訓練を担当する主席幕僚らしい。若い見た目から柔軟な考えの持ち主かと思いきや逆に血気盛んな、自分の発言で自分自身が興奮してしまう少々やっかいなタイプの様だ。

 そんな部下の発言に対して、訓練部隊の指揮官は特に止めもしない。自分からは積極的な発言はしないものの、基本的な考えは部下と同意見という訳だ。しかも、こちらを完全に見下している様がありありと見て取れる。態度を取り繕う気も無い様だ。

 対するサッド隊長はと言えば、特に反論するでも無く言われるままである、相手を挑発したダークも最初の発言以降は何故か静かにしている。

 サッド隊長はともかくダークはまともに相手をするのが馬鹿らしくなっているみたいだ。


 訓練部隊の面々がひとしきりこちらへの悪態を並べ立て終わった頃合いを見計らって、それまで事態を静観してた総責任者がやっと言葉を発した。

「連隊長、君らがここに居るPMSC(民間軍事警備会社)の者達に対してどの様な評価を下そうと構わんが、共同訓練を実施してもらう事は既に決定している事だ」

 うん、この人もこちらに特に好意を持っているって訳じゃ無さそうね。まあ、明らかな敵意を見せないだけましなのかな、どうだろ?

「閣下、しかし」

 おおぅ、閣下だって。未だに軍隊の階級には馴染めないんだけど、この人私が思ってた以上に結構なお偉いさんなのね。

「この件については、議論の余地は無い。

 いいかね、私もここに居るお嬢さん方が諸官らを教導出来るとは正直疑問に思わない訳では無いが、しかしだ。この訓練に意義が無いとする意見には賛同しかねる。

 ここは、初等学校では無いし私も先生では無いのだよ。諸官らは軍人である、であるなら弁舌より行動で結果を示して貰いたい」


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