現実逃避、或いは固定翼の着陸について
輸送機って着陸する時なんであんなにコントロール・ホイール(操縦舵輪:操縦桿の代わりにパイロットが両手で握ってるアレよ)を動かすのかな~。
ねえ、みんなは小型機や旅客機が着陸する様子をコクピットから撮影した動画って見たこと有る?
操縦してる所が映ってるのじゃないとダメよ。その操縦の様子、いえコントロール・ホイール(操縦舵輪)の動かし方に驚かなかった? 物凄く大きく動かしてない? 滑走路に接地する直前までそんなに動かす?って位動かしてない?
今回の海外行きはね、前回の東南アジアとは違って自社の物流部門にヘリコプターごと空輸してもらったの。その時に乗せてもらった輸送機のコクピットで着陸の様子を見る機会があったのよ。その時にあんまり激しくホイールを動かすもんだから驚いちゃったって訳。ヘリを操縦してて、普段の操縦であんなに大きく操縦桿を動かす事ってそう無いから、しかも着陸寸前によ。
でもね、その輸送機も上空で操縦してる時はそんな事無かったのよ。その時の操舵は見ていて特にヘリとの操縦と違和感は無かったの。
まあ、あの時はあまり深く考えないで、そう言うものなのね。ってしか思わなかったんだけど、後からテスト・フライの事を思い出してその理由に気が付いたの。
固定翼機って翼に付いてる舵面を動かして、機体をコントロールしてるのは知ってる? エルロンとかフラップとかスポイラーとかね、動翼とも言うわ。詳しい説明は省略するけど、とにかくそれらが翼に付いてるって事。
つまりよ、それら動翼が動いて翼全体を流れる空気を捻じ曲げたり、剥離させたり色々と仕事をしてその結果、機体が旋回したり上昇・降下したりする訳。
ここで翼に発生する揚力について数式を出せば一発なんだけど。学校の授業以外で数式なんか見たくないって人や、数式を見ただけで思考を放棄する人が結構な数いるみたいなんで、それは止めとくわね。詳しく知りたい人は専門的な本が沢山出てるからそれを見て頂戴。
ま、説明を放棄する訳にはいかないからザックリとだけど超簡単に話すわよ。
揚力、つまり翼に働いてる機体を動かす為の力には翼を流れる空気の速度と、迎角つまり、翼の角度が関係しているの。
速度が一定なら、迎角の大きさで揚力が変化するし、迎角が一定なら速度の大きさで揚力が変わるのよ。
つまり速度が速ければ迎角が小さくても大きな揚力を発生させられるし、逆に速度が遅ければ、迎角を大きくしなくちゃ速く飛んでる時と同じだけの揚力を発生させられないって事。
固定翼機は基本、速度の違いで舵の効きも変わってくるの。
どう、話が繋がって来たでしょ。
さて、固定翼機が着陸寸前ってどんな状態? 失速ギリギリまで速度を落として着陸に備えてるわよね。
低速で滑走路へとアプローチする機体は、上空を高速で飛んでる時よりも操舵に対する機体の反応は鈍くなってるの。だから、あんなに大きな操舵で機体をコントロールしてたって訳よ。
ヘリは、機体をコントロールするローターが常に一定の回転数を維持してるからね。速度0のホバリングだって、190ktでダイブしてる時だって舵の効きに違いは無いのよ。
一応ヘリコプターでもローターの回転を落として、つまり固定翼機にすれば飛行速度を落としたのと同じ状態にして飛ぶ事も有るわ。
テスト・フライ(整備確認飛行)の時の低回転ホバリングっていう点検項目がそうよ。
ヘリのエンジンって通常はいつも100%の出力で飛んでるの。普通の飛行機(プロペラ機もジェット機も)が速度の調整をスロットル・レバーを使ってエンジン出力の増減で実施してるのとは違うのよ(まあ、一概にそうとは言えないんだけど話を単純化したいから詳しい事は省略するわね)。
つまりヘリは何時でもフルスロットルで飛んでるって訳。
で、低回転ホバリングの点検要領だけど、100%のエンジン出力を90%近くまで下げるの。その状態でホバリングを維持出来て、更に左右に旋回が出来るかを確認するのよ。エンジン回転が下がった状態、それってつまりローターの回転数も下がった状態って事でしょ。ヘリ=回転翼航空機はその名前の通りローターを高速で回転させ続ける事でローターブレードに風を受けて揚力を発生させて飛行しているわ。だから、機体が停止している状態での飛行、つまりホバリングが可能になっているの。その命とも言えるローターの回転を下げるって訳。当然、大切なローター回転数がちょっと低下したくらいで墜落しちゃ問題だからね、その為の点検って事よ。
ただし回転を低下させるとね、振動が増えてきて操舵に対する機体の反応も鈍くなるのよ、まさに着陸寸前の固定翼機みたいにね。




