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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第2部「サーペントチャ―マー」 第一章 技術の継承って大切よね
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ヘリは未だに格闘戦重視

 1960年代前半のアメリカは、空軍、海軍共にF―4ファントムⅡを主力戦闘機として、運用していた。

 F―4は元々海軍が空母打撃群の艦隊防空の為に開発した機体である。では、空軍はと言えば当然海軍とは別に独自の戦闘機を使いたいと考えていた。しかし、その当時の国防方針や、そもそも空軍の戦闘機開発がアレだったりして不本意ながら海軍が開発した機体を使う事になったのである。

 その時代は、AAM(空対空ミサイル)が実用化され始めた頃で、ミサイルが有ればもう機関砲は不要なのでは? と言うミサイル万能論まで出てきていた。

 海軍はそれに乗っかっちゃった形である。まあ、F―4の任務が艦隊防空って事もあったのだけれど。

 結果、海軍が開発したF―4には固定武装としての機関砲が搭載される事は無かったのだ。

 空軍はと言えば、そこまで思い切れず機関砲の廃止には最後まで難色を示していた。その為、空軍が採用したF―4は初期型こそ固定武装無しだったのだが、後期型でとうとう機関砲を搭載してる。

 因みに日本の航空自衛隊では、最初から機関砲搭載のE型を日本仕様にしたEJ型を採用している。

 さて、機関砲を下し、固定武装を廃止した戦闘機。その結末はどうなったのか。

 その答えはベトナム戦争ではっきりした、やらせも忖度も無い本物の戦場である。

 ベトナムの空でのF―4の敵は、当時ソビエトが開発した最新鋭の戦闘機MiG―21だった。

 MiG―21は、F―4程搭載電子機器が充実して無い代わりに小型軽量で格闘戦を得意としていた。

 一方のF―4はと言えば、知っての通り遠距離からミサイルで勝負を着けるタイプである。

 空中戦では、お互いが得意とする領域で戦うのがセオリーだ。しかしF―4の場合、装備していた肝心のミサイルの信頼性が低く、とにかく当たらなかった。

 終いにはMiG―21に格闘戦に持ち込まれてしまう。

 繰り返しになるがF―4は、元々が味方の空母打撃群に接近して来る敵の航空機を遠くからミサイルを使って撃ち落としてしまおうという考えで開発された機体だ、その肝心のミサイルが頼りにならないのでは…

 機関砲も下した機体でMiGとの格闘戦など、本来想定してた用途とは別なのだから苦労は推して知るべしである。

 故に海軍も、やはり戦闘機同士の格闘戦は無くならないし格闘戦には機関砲が必要という事になり、機外に取り付けるガン・ポッドを開発する事になる。しかしながら、最初からあまり高くない格闘戦の能力が後付けのガン・ポッドによって更に悪化する結果となり、パイロットからの評価は微妙だった様である。

 ではベトナム戦争で純粋に戦闘機として活躍出来た米軍の機体は一体何だったのかと言えば、答えはF―4の一世代前の機体F―8クルセイダーである。F―8は勿論機関砲を搭載しており、当時は〈最後のガン・ファイター〉などと呼ばれていた。ただし、F―8が機関砲だけでMiGを撃墜してたかと言えばそれも違っていて、むしろ機関砲だけで撃墜した例はそう多くは無い。

 では一体F―4とF―8の撃墜スコアの差は何に起因してるのかを調査した所、両機種を装備してる部隊の格闘戦に対する訓練への取り組み方に有ると判明した。

 今まで何度も言及しているが、F―4はレーダーを使って敵機を視界に捉える前にミサイルで撃ち落とす事を任務にして来た。その為、当然訓練内容もそれに見合ったものになっていた。一方のF―8はと言えば機関砲を装備している為、こちらも当然それを活用する空戦方法、つまり格闘戦を重視した訓練を行っていたという事だ。

 その違いが、延いては撃墜戦果の差となって現れたという事なのだ。そして、それがかの有名なトップガン創設に繋がり、以降はF―4の撃墜戦果も好転していく事になる。

 それでも海軍は、空軍とは違い結局最後までF―4に機関砲を固定武装としては搭載しなかったのである。しかし、その後F―4の後を継ぐ艦隊防空用の戦闘機としてF―14トムキャットを開発した時には、固定武装として機関砲を復活させている。

 ま、失敗したとは思ってたんでしょうね。


 と、言う事で最新鋭のF―35だが。

 一応はB型、C型にもオプションとしてガン・ポッドが用意されている。だがそれは海軍型のF―4と同様に機外に取り付ける形になるのである。だから、当然ステルス性はある程度犠牲にならざるを得ないだろう。まあ、全てのタイプで機関砲を下した訳では無い為F―4の二の舞にはならないとは思うが、どうだろうか。


          ◆


 さてここでヘリコプターに話を戻しますよ~。

 私達のサーペントも最新の戦闘機と同じようにセンサー融合技術、味方機やレーダーサイト等の防空システムとのデータリンクなどでネットワーク型戦闘にも対応している。

 しかし、私達はヘリコプターとしての特性や、地上部隊と密接に協力する任務上の要求から、作戦空域では大抵地表面付近を飛んでいるのだ。

 そんな私達が敵の戦闘ヘリと会敵するとしたらどんな状況が最も有り得ると思うだろうか?

 お互いにレーダーを避けて低空を飛行している訳だから、余程条件が良くない限り遭遇戦、つまりお互いに出会い頭の戦闘になる可能性が高い筈である。

 レーダーを使って相手の機影を見る事も無くミサイルを撃ち合って雌雄を決する、などという事はほぼ起こり得ない。まあ、可能性が皆無とは言えないが。

 低空を飛行中に目の前の稜線を越えたらそこに敵機が居た、そんなシチュエーションの方がよっぽど現実的だろう。そうした場合、当然お互いの距離も非常に近くなる、もしかしたら会敵した瞬間からAAM(空対空ミサイル)の最低交戦距離を割り込んでいるかも知れない。だからヘリコプター同士の空中戦では、未だに格闘戦を重視してるのである。

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