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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第2部「サーペントチャ―マー」 第一章 技術の継承って大切よね
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ジョインナップはACMで

 それから、何度か課目を実施したが、遂に納得出来るレベルでは終われなかった。

 うーん、何が違うの?タイミング、それとも操舵量なの。

「ジュリエット、そろそろ時間だ」

「はい」

 燃料には限りが有る、無限に飛んでいられる筈も無い。それに帰投時は近くで同じ様な訓練をしている同僚のハーレー/ダークペアのサーペント24号と合流してフォーメーション(編隊)訓練をしながら飛行場へ帰る予定なのだ。

「サーペント24、こちら09。現在地は?」

『09、24。ポジション黒森峰上空1500(ft)』

 サッドが僚機に位置確認の無線を飛ばす。サーペント09(ゼロナイナー)が私達の機体で、24(ツーフォー)がハーレー達の機体のコールサインだ。

「了解、こちらは船底山だ。

 お前達はそのまま帰投、こっちは後方から追いかけてジョインナップする所から演練する」

『24』(24号、了解:無線交信の場合はわざわざ了解って言わなくても返信時に自分のコールサインを言うだけで了解の意味も持つのよ)

「よし、ジュリエット。ハーレー達への編隊構成の段階から訓練だ。もたもたしてると編隊を組む前に飛行場に着いてしまうぞ」

「了解!」

 私は機体を飛行場の方角へと向けつつ上昇、パワーの使用制限ギリギリを使い加速する。

 見えた、あれだわ。

「24をインサイト、11時の方向やや高し。このままの速度を維持して接近します」

 先行する24号はこちらよりやや高度が高い。向こうが何 ktノットで飛んでるかは分からないけどもし巡航速度だったとしたら、20kt近くはこっちの方が速い筈。

 訓練なんだから、ジョインナップし易い様に速度を緩めてくれてるかしら?

 いいえ、そんな事絶対に無いわ、逆に速度を出してる可能性も有り得る。うん、そっちの方が確率が高いわね。

 ここはギリギリまで速度を保ったまま接近して、なる早でジョインナップするのが良いんでしょうけど…

 よし、決めた!

「サッド、ハイ・ヨー・ヨーを使います」

「ほう、面白いな。やってみろ」

 ハイ・ヨー・ヨーはACM(Air Combat Maneuver:空戦機動)の一つである。

 今や戦闘機の世界では、レーダーを使用(自機だけでなくレーダーサイトや他機等とのデータリンクを含めて)して相手を目視する以前から交戦するBVR(Beyond Visual Range:視程外射程)戦闘が主流になりつつ有る。

 それには、AAM(Air to Air Missile:空対空ミサイル)の能力向上も大きく関係している。少し前のAAM(空対空ミサイル)は、敵機の後方に回り込んで発射しないと上手く誘導されず中々命中しなかったのだが、今はお互いが正面から向き合った対向状態からでさえ発射が可能となっているのだ。

 結果、激しい機動を伴うドッグ・ファイト(空中戦)の機会は減少しているという訳だ。

 その証拠が、第5世代型の最新鋭戦闘機F―35の武装に現れている。

F―35はアメリカのロッキード・マーティン社が開発し、2010年代前半から空軍に納入が開始された最新の戦闘機だ。そのF―35にはサブタイプとしてA、B、Cの三つがあり、その3タイプの中で機関砲を固定装備しているのはA型だけなのである。

 B型やC型を採用した軍隊は、戦闘機同士の機関砲を使ったドッグ・ファイトはもう起こらないと考えているのだろう。

 私個人は過去の歴史から考えても、そこまで思い切るって不安しか無いんだけど…。

 そうね、過去にどんな事があったのか軽く話しましょうか。


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