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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第七章 対決! ハインド
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第1部 エピローグ

 大空に我死すとも悔いず、ただ最善を尽くさざるを恐る

 

                         海軍航空隊 中尉 大橋渡



 あれからどうしたか。

 予想通り私達のサーペント22号は、無茶な操縦によってメインローター・ハブを始めとした動力伝達系統のかなりの部分で特別点検や部品の交換が必要になってしまった。

 てっきり整備の人達から、ものすんごく怒られるって思ったんだけどそんな事は全然無くって逆に機体を持って帰って来た事を褒められたわ。

 それからの整備の人達は班長以下、とにかくここからは俺たちの仕事だって猛烈にやる気を出して整備に取り掛かったの。今が俺達の腕の見せ所だってカンジで、妙に嬉しそうって言うか。そう、生き生きしてたわ。

 サーペントの整備はあっという間に完了し、通常の2機運用態勢に復帰した。

 復帰したんだけど、程無く私達はこの国を離れる事になったの。理由は雨期の終わりと共に契約も終了した為よ。

 ハインドとは、あの後まったく遭遇する事は無かったわ。コンボイの護衛で反政府ゲリラと小規模な戦闘は何回かあったんだけど、それだけ。

 幸運な事に、私達は来た時と同じメンバーが全員揃って帰国する事が出来たわ。

 ただ帰国しても全てが元通りって訳にはいかなったけどね。

 サッドがパイロットとしての現役を退く決意をしたの。

 あの眩暈。病気の後遺症だけど、いつ又深刻な症状に襲われるのか予測が付かないって事みたい。そして、それはもう完治はしないらしいわ。


「皆、済まなかった」

 ハインドとの戦闘後、FSAに帰投して直ぐにサッドは派遣されたメンバー全員に対して謝罪した。

「以前から時々眩暈は有ったんだが、軽く考えていた。

 いや、そう思い込もうとしていた。正直に言おう、体調不良で操縦が出来なくなるのが恐ろしかったんだ。

 俺は何の根拠も無く決断を先送りにしてしまった、そのせいで取り返しの付かない事になってしまう所だった。ジュリエットには感謝してもし切れない」

 確かにあの時サッドは操縦不能だったわ。でも私一人じゃ絶対に生き残る事は出来なかったと思う。

 サッドの的確な戦術的状況判断に何度助けられた事か。眩暈から来る錯覚と嘔吐感の中、それを意志の力でねじ伏せるなんて彼以外には到底無理だわ。そうね、バラエティ番組でよく見る〈ぐるぐるバット〉って有るじゃない、あの状態がずっと続いてるようなものよ。

 私達の口からあの時の空戦の状況が明らかになると、サッドの株は益々上がったわ。それに比べると私の評価は微妙な所と言わざるを得ない、う~ん。

 SCAS‐OFFからの急旋回はあの状況から生き残る為にはほぼ最善の選択だったろうと言うのがパイロット皆の意見だったんだけどね、一歩間違えればメインローターのハブやマスト周辺に致命的なダメージを負う可能性も有ったのも事実。サーペントが無関節型のローターでホント良かったわ。


          ◆


「キャプテン、次はいつ同乗してくれますか」

「そうだな、来週に一度スケジュールを調整しようか」

「おいダーク、お前いつ迄サッドの事をキャプテン(大尉)呼びしてるんだ。

 サッドはもうメジャー(少佐)かルテナント・コーネル(中佐)相当だぞ」

「そうでした、隊長」

「いや~、サッドが会社に残ってくれて良かったですよ。しかも隊長だなんて出世じゃないですか」

 サッドはシアトルに戻ってから正式にパイロットを降りた、ただ会社としては彼の経験と実務能力を惜しんで新たなポストを用意したの。

 今までサッドはパイロットだけを統括する飛行班長をしてたんだけど、今度は戦闘ヘリの部署全体、整備班や通信班、本部機能も含め全てを指揮する飛行隊長に就任したのよ。

 実は、今までも本社に引き籠って出てこない前任の飛行隊長の代理として現場で実務を取り仕切っていたんだけどね、今回正式に隊長に就任したって訳。

 サッドは隊長として仕事の軸足をデスク・ワークに移したんだけど、月に何度かは訓練同乗としてサーペントに乗っているの、もちろん操縦士では無い立場でね。だから搭乗じゃなくて同乗って言い方になるのよ。

 実際サッドは同乗中操縦をほとんどしないわ。私に最初に訓練を付けてくれた時みたいに必要な指導を口頭のみで行うの。彼ほどのレベルでなくちゃ出来ない指導法ね。

 そんな感じだから以前とあまり変わりないと思うかもだけど、やっぱり問題はあるわ。

 パイロットとしてのサッドの抜けた穴を埋められていないって事よ、補充人員は募集してるんだけどね。てか常に操縦士の募集は掛けてるみたいなんだけど、操縦出来れば誰でも良いって訳には流石にいかなわ。そうなると合格基準に達してる応募者って中々現れないみたい。私みたいに新卒即採用なんて例外中の例外って事らしい。うん、私ってばラッキー。

 まあいざとなったら例の二人組、マジックとスージーを呼び戻す事も考えてるみたいだけど。

 因みにその二人はまたしても私達の帰国と入れ違いで海外へ出張に出てしまっている、今度はアフリカだそうよ。

 そんなこんなで少しの問題を抱えつつも私達は概ねいつも通りって事ね。


 さ~て、次はどんな空が私を待ってるのかしら!


 第2部へ続く



第1部終了ですが、引き続き第2部を投稿していきます。

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