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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第四章 奇襲? 強襲!
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ブラッカァ・ビーチ

 一方その頃揚陸予定地点のブラッカァ・ビーチでは、空軍による事前制圧に引き続いて第一波の揚陸が行われていた。

 砂浜に直接乗り上げたLSTのランプ・ドアから続々と歩兵が展開している。心配されていた上陸阻止の為の水際戦闘が生起していない事は幸いである。

 そもそもベラランタ島に送り込まれた敵の戦力が、複数ある上陸可能地点の全てに兵力を配置出来る程充実してはいない筈なのだ。その為、上陸地点を何処か一カ所に決め打ちでもしない限り、ある程度内陸部へ引き込んでからの反撃になるだろうとの予測が、敵の可能行動の最も取り得る策として見積もられており、今の所結果はその通りに推移している形である。

 今回の揚陸作戦はスピード勝負の側面が大きい。こちらの兵力を速やかに送り込むことで敵との相対戦闘力の優越を図り、一気に決着を付けたい狙いが有るからだ。

 速度を重視するもう一つの大きな理由としては、海上優勢・航空優勢の確保の維持が困難である、と云う事も挙げられる。

 海上優勢・航空優勢を共に確保している限りは、敵の補給・増援を阻止する事が可能であるが、戦場が離島と云う特性上、常に前線及び艦隊上空に戦闘機を滞空させておく事は、航空母艦や垂直離着陸機の搭載が可能な航空甲板を備えた強襲揚陸艦を保有でもしていない限り不可能で有る。そして、そのどちらも今この国には無い。

 更には、今回の作戦地域であるベラランタ島を行動半径に納め得る地理的条件に合致する航空基地が一カ所のみに限定されている事も事態を難しくしている要因となっている。その結果、戦闘機の発進回数が制限を受け、継戦能力に不安が生じているのだ。

 ただ幸いな事は、敵についても概ね我と同様の条件だと云う事である。


 空軍の事前制圧が有ったとは云え、海岸堡の確保には歩兵の近接戦闘能力の他に、それと密接に協同出来る火力が必要である。歩兵部隊も分解持ち運びが可能な迫撃砲を持ち込んではいるが、やはり能力的にはやや不十分と云える。

 なので、それを補う為に艦隊の護衛に任じている駆逐艦が艦砲による火力支援を担任しているのだが、海岸堡の確保と並行して一挙に内陸部へ侵攻した場合には、部隊が前進するに従って当然ながら距離が増大し艦砲からの射撃効果は減少してしまう。

 それを踏まえると、我の先制主導の利を保持するには、戦闘力を集中する為の機動力の発揮と火力の連携が重要となり、その鍵となる兵器が今まさに投入されようとしていた。

「お、LCACエルキャックのお出ましだぜ」

 ハーレーの口調は、戦場であるにも拘わらず緊張の欠片も感じさせない何時もの軽さである。


【LCAC】(Landing Craft Air Cushion)

 エアクッション型揚陸艇、通称エルキャック。

 空気で浮揚し移動する、所謂ホバークラフト・タイプの揚陸艇である。その運航形態から、通常の揚陸艦とは異なり潮の満ち引きや海底の凹凸による擱座のリスクを考慮する必要が無い。


「戦車を運んできた様だな、AMX‐30か。これで揚陸部隊のジッ●・ヘッドも一安心だろう」

 ダークの口の悪さも相変わらずだ。

 ハーレーとダークのシーサー1が電子攻撃で支援している中、2隻のLCACがLSTの間を縫って砂浜に乗り上げ、間を置かずに搭載している戦車を卸下し始める。搭載された戦車は各艇2両、合計4両のAMX‐30が随伴歩兵と共に砂浜に降り立つ。

 AMX‐30は、フランス製の戦後第2世代に分類される戦車である。フランス本国では既に第3世代戦車のルクレールと置き換わっており旧式である事は否めないが、輸出向けのタイプは改良が重ねられ、現在も各国の主力戦車として使用が続けられている。

 今作戦に参加しているチナヌカマ陸軍のAMX‐30もその例に漏れず、ERA(Explosive Reactive Armour:爆発反応装甲)が装着され、従来弱点とされていた装甲防御力を補っている。

 主導性を保持し、組織的な海空火力支援の下迅速に内陸部へ侵攻する為には、どうしても機甲戦力は必要であり、それが戦車なら文句なしだろう。

「しかし、飛行場に対する空挺攻撃が連携出来なかったのは痛いな」

「まあ確かに敵の目がこちらに集中してるだろうけど、上手くすれば時間差で敵の裏をかける可能性も有る」

「それもそうか」

「自分達の手が届かない事に迄、気を揉む必要は無いでしょ」

「そうだな、こっちだって楽勝って訳じゃ全然無いからな。

 よし、集中するか」


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