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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第三章 ダーク研修会
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旗艦撃沈

「そして最後に……」

(最後に?)

(最後!)

「ロシアのウクライナ侵攻ね。

 2022年2月の侵攻開始から2ヶ月後の4月、ロシアの黒海艦隊旗艦〈モスクワ〉がネプチューン対艦ミサイル2発を被弾して沈没したわ」

「ネプチューンはウクライナで開発された地対艦ミサイルです。ソビエト連邦製のKh‐35対艦ミサイルを基にしたもので、電子機器と射程が改善されてます。射程は300kmに達すると言われていますね」

「旗艦が撃沈されるって、ヤバいな」

「撃沈されたモスクワですが、スラヴァ級のミサイル巡洋艦で排水量が12000トンを超える大型艦です。

 モスクワには艦隊防空システムとしてS‐300Fフォールトが搭載されていました。これは、長射程と同時多目標交戦能力を備えています」

「防空能力ちゃんとしてるじゃないですか~、やっぱり対艦ミサイルの脅威は健在なのでは」

「ええ、確かにモスクワの防空能力は優れていたわ。

 それが適切に運用されていればね」

「え~、まさか」

「嘘だろ、戦争当事国なのに」

「ミサイル巡洋艦モスクワは当時、S‐300Fフォールトの火器管制レーダーを作動させていなかったらしいのよ」

「ここでも油断~」

「フォークランド戦争でシェフィールドが踏んだのと同じ轍だろ、これ」

「まあ、それには仕方が無かった一面も有ったのよ。

 まずモスクワが居た場所だけど、ウクライナ沿岸から120km程離れていたの」

「つまり?」

「ウクライナ軍はOTHレーダーを持っていませんから、本来なら探知が不可能だった筈なのです」

「OHTって?」

「OTHレーダーのOTHとは、Over the horizon(超水平線)の事だよ。

 通常なら直進する電波の特性上、水平線の向こう側を観測する事は不可能なんだが、短波の電離層屈折や長波の回析云々で、なんやかやをコンピューター解析でナニする技術なんだよ」

「へえ~」

(なにがへえ~だ、全く。せっかく終わりが見えてきたってのに話が進まないじゃないか)

(ごめ~んちゃい)

「現在入手可能な情報は限定的で、しかも両軍による情報操作やプロパガンダが平気で混じって来るから正確な所は正直不明なのだけれど、どうやら当時は電波伝搬の異常現象が発生していたみたいなの」

「ネプチューンが2発しか発射されなかった理由が、その特異な現象による超水平線探知の結果だからみたいなの」

「なる程ねえ、半信半疑で取り敢えず2発撃ってみたと。

 で、その2発共命中しちゃった訳だ」

「一応その他にも、ウクライナの無人攻撃機バイラクタルTB2の攪乱が有ったとする説も有るけど……」

「そうよね。攻撃が成功したなら、わざわざ手の内を晒したりはしないか」

「でもドローン(無人機)ってのは、如何にもな話では有るよな」

「と云う事で、対艦ミサイルは脅威では有るけれど、油断しなければ必要以上に恐れる必要は無いって事。

 はい、これでお終いよ」


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