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匍匐飛行 ~ ヘリコプターパイロットの細腕戦記 ~  作者: 梅小路 双月
第三章 ダーク研修会
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次は、駆逐艦よ

「ロシアがぼろ負けしたのは、まあ良いとして、駆逐艦と水雷艇が夜襲を仕掛けたって」

「あらプリンス、気が付いた?

 じゃあ今度は駆逐艦についての話よ」

(ジュリエット、中々話が現代に近づかないな)

(しっ、プリンス。ダークってああ見えて意外と話好きって云うか、戦史・戦術に詳しいのよ)

(他人をオタク呼ばわりしてた割には、自分だって相当なもんだな)

「……、ン゙ン゙ッ。

 はいアンタ達、魚雷って知ってるわよね」

「はい(おい、駆逐艦の話じゃ無かったのか)」

「はい(名前だけは知ってます)」

「魚雷を簡単に説明すると、爆発物を喫水線下にぶつける事で大きな損害を与える兵器よ。

 これが意味する所が分かる」

「……」

「……」

「アンタ達、まさか考える事を放棄して無いでしょうね。

 カーリィお願い」

「はい。戦艦以外でも戦艦を撃沈できる可能性が生まれました」

「そう。そして、その魚雷を主兵装とする魚雷艇(水雷艇)が誕生するの」

「? わざわざ新しい艦種を作る必要性って何。

 戦艦や巡洋艦に魚雷を積めばいいんじゃないの?」

「そういう方向性も有ったわよ。でもね、開発された当初の魚雷の射程って砲撃の射程に比べれば極端に短かったの。魚雷の射点に着く前に砲撃の射程距離内に入っちゃうって事よ」

「強力だけど、使い所が難しい兵器か~」

「え~、そんな使い勝手が悪そうな魚雷を魚雷艇はどう使ったんですか?」

「魚雷に限らず、あらゆる兵器は使用する時期や場所なんかの条件が適切じゃ無いと性能を十分に発揮出来ないものよ。

 逆に言えば条件が揃った兵器の威力は途轍もない物になる」

「馬鹿と鋏は使いよう。いや、ちょっと違うか、水を得た魚?」

「まず魚雷艇って云うのは、モーターボートに魚雷発射管を搭載した様な船だったって事よ。

 だから艦隊に随伴して戦うなんて事は無理、速度も高速の巡洋艦に比べれば場合によっては劣っていたの。

 更に船体も小さいから航続距離は短いし、作戦範囲は沿岸部に限られていたわ」

「つまり、小さい船体を利用してこっそり近づき攻撃するって事?」

「まあ、正解かな。

 重要なのは、敵を攻撃するタイミングね。作戦範囲が沿岸部に限られるって事は?」

「敵が沿岸部にいる時に戦うって事ですよね、沿岸部……」

「沿岸部っていったって範囲が広すぎるでしょ、こっちは航続距離が短いんだから闇雲に敵を求めても空振りしたらお終いよ」

「う~ん。確実に沿岸部に居て、その場所をある程度は特定できる所って……」

「あっ、分かったぞ。

 港! 出港や帰港の時じゃないのか、それなら航路も分かるしタイミングを計る事だって出来る」

「そう、正解。それに加えて港や泊地にいる所を襲撃する事も出来るわね。

 実際日清戦争では、黄海海戦で損傷した清国艦隊が港に戻った所を日本の魚雷艇が襲撃しているわ」

「また日本海軍の話~。

 日清戦争って日露戦争の前ですよね」

「日清戦争の10年後に日露戦争が起きるわ。

 話を戻すわよ。艦隊は、小さいが故にコストが低い魚雷艇が大量に襲撃して来るのを防がなくちゃならないわ」

「戦艦や巡洋艦の主砲では、威力が有り過ぎて勿体ないですね。小さな砲も積んではいますが、そもそもの数が十分では無い」

「そう、カーリィの言う通りよ。

 そこで、ある程度は艦隊の外洋行動に随伴出来て、魚雷艇を制圧出来る程度の火力と速度を備えた艦が登場するの。

 勿論価格も抑えて数を揃えられるのが前提ね、それが《魚雷艇駆逐艦》よ」

「え、駆逐艦って魚雷艇駆逐艦が正式名称だったのか?」

「最初はそうね。

 魚雷艇より高速で、尚且つ数を揃える事が出来、艦隊にも付いて行くことが出来る艦。だったら、それに魚雷を積めばいいんじゃないって結論に達するのに時間は掛からなかった」

「駆逐艦は、魚雷艇の存在自体をホントに駆逐してしまいました。だからデビュー当時魚雷艇駆逐艦と呼ばれた艦は、今現在はただ単に駆逐艦と呼ばれているんです」

「戦艦、巡洋艦、そして駆逐艦。だいぶ役者が揃ってきたな、後は何だ」

「空母じゃない、航空母艦。それこそ日本海軍の真珠湾攻撃」

「そうね。では、何故日本が空母を重視したのか。勿論それにはちゃんと理由が有るわ」

「条約、ですね」

「そう、ワシントン海軍軍縮条約よ。

 第一次世界大戦が終わった後も戦勝国は戦艦の増強に邁進するの、それこそ国の経済を破綻させかねない勢いでね」

「ああ~、相手がいる事だから。そりゃあその建艦競争を一方的に降りる訳には行かないですよねえ」

「……、東西冷戦でアメリカに付き合ったソビエト連邦はホントに国が無くなっちまったけどね……」

「因みに、その条約に加盟した国って何処と何処なんですか」

「当時5大海軍列強国と言われた、アメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリアよ」

「とほほ。敗戦国のドイツは置くとして、やっぱりロシア(ソ連)は、まだそのレベルに達して無いんだ」

「勿論日本政府も、経済状況を現実的に判断して条約の締結には前向きだったわ。

 だけど軍事的には、戦艦の保有量を仮想敵国である米・英との比率を5:5:3に抑えられた事で大変な苦境に立たされる事になるの」

「大艦巨砲主義では戦艦を主力とした艦隊同士の決戦で勝利する事こそ戦争に勝利する道だと考えられているのですから、最初から戦艦の保有数に劣っていては、それが成り立ちません」

「何か工夫が必要ね。さあ、どうする」

「う~ん、そうだなあ……

 まず、数がダメなら質か、量より質。個艦毎の性能を目一杯上げるとか、猛訓練で乗員の練度を上げまくる、とか」

「良いわね、それも有るわ。

 但し、艦の性能は条約で主砲の口径が制限されてるから限界が有るわね」

「後は~、ルールの抜け道を突くってのはどうですか。具体的には分かりませんけど」

「そうね、それが正解に近いかしら。

 日本は大艦巨砲主義の艦隊決戦思想はそのままに、それを成り立たせる為の新たなドクトリンを考え出す必要が有った。

 それが、」

「《漸減邀撃作戦》ですね」


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