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第七話

「ニック様……、私を抱いて下さい」

「なっ、何言って……!」

 元々、表情の変化が乏しいと言っても美少女のオリヴィアだ。

 今年に成人したばかりの16歳らしいが、その身体付きはもう大人のそれだ。

 娼館でもこれほどに実った胸は滅多に見ないし、全体的に見ても抱き付けば心地よいであろう程よい肉付きだ。男が好きな身体付きだと言えばわかるだろう。

 すぐに俺の息子も元気になるが、仲間内でそんな事をすればどうなるか分かる切っているので布団で隠し、冷静を装う。

「何してるんだよ、ガキの裸になんざ興味無いっての」

 嘘ですめっちゃあります。

「お目汚しを申し訳ありません……」

 オリヴィアは明らかに落ち込んで顔を伏せている。おもむろに胸を触って「……もう少し頑張らないと」と呟いた。

 何を頑張るの? もしかしてまだデカくなれるの? すげー……。

 って、何考えてるんだ俺。相手はまだ成人したばかりのガキだぞ。

「そ、それはともかくだ。なんでこんな事をするんだよ」

「……ニック様を勇者パーティに推薦したのは私です」

「はあ!?」

「いえ、正確には我らが唯一神 女神アンドラ様からの信託を預かり、私が変わりに推薦したのですが……」

 いきなり衝撃的な事を言いやがった。

 女神アンドラは、聖女オリヴィアを筆頭に多くの人が信仰している、アドラ教の唯一神だ。その声は聖女であるオリヴィアにしか聞かせず、実際に存在しているかも怪しいと無宗教の俺は思っているが、この国の九割以上の人間が信仰しているだけに実在しているのかもしれない。

 しかし、その女神様が俺を推薦したっていうのはどういう事だ?

「女神アンドラ様は仰られました。「小汚い盗賊が、世界を救う鍵になる」と」

 鍵ねえ。俺はそんなに大した者じゃないんだがな。

 というか小汚くて悪かったな。

「そしてこれから行う事は、私の独断です」

 そう言うといつの間にかベッドに近付いて来ていたオリヴィアが、俺をベッドに押し倒した。

「貴方の子を宿します」



 その言葉の意味が分からない程、俺は鈍くは無かった。

「そんな事させるわけ……って、力強っ」

「儀式ではいつも三十キロの神輿を持つ事もありましたから」

 確かに言われてみれば、オリヴィアは重たく暑苦しそうな神衣を常に纏っており、豪華な神杖を握っていた。金貨より重たい物を持たない俺なんかより力があっても当然だ。

「世界を救う鍵となる存在の子を宿すのは、聖女の使命と言えましょう」

「いや、だが、聖女が純潔を破るなんてだめなんじゃないのか!?」

「確かに司祭様からはそう教わりましたが、女神様に確認を取ったところそんな決まりは無いと仰られました」

 くそっ、女神まで聖女側かよ!

 俺に味方はいないのか!?

 思むろに俺の下半身に伸ばされたオリヴィアの手を何とか振り払い、この状況を打開する術を考える。

 誰かを呼ぶか?

 駄目だ、パーティメンバー、特にマリンにこの状況を見られたら反論の余地無しで魔法をぶっ放される。そうなれば耐久ゴミの俺じゃあ消し炭だ。

 力尽くで振りほどくか? 確かに力じゃ敵わないが、手段ならいくつでもある。……だが、聖女であるオリヴィアには状態異常系が効かない。流石に女の子を傷つける様な真似はしたくないし……。

 ……いっそのこと、流されてもいいんじゃないか?

 そうだよ。何も悪い事無いじゃないか。

 俺だって娼館に行こうとしていて、溜まる物も溜まってる。

 オリヴィアだって成人しているんだ、その行動の一切を縛る権利なんて誰にも無いんだ。

 それにオリヴィアが俺の子を孕んだとしたら、玉の輿だぞ? 一生遊んで暮らせるかもしれない。

 うん。ありだ。

 そうと決まればこのおっぱいにむしゃーーーー。


「オリヴィアアアアアアアア!」


 急に部屋の扉が蹴破られたかと思った途端、爆音すら生易しいと思える程に大声が部屋に響いた。

 ズケズケと入って来たのはマリンだ。その顔には怒気が浮かんでいるが、怒りの矛先はどうやら俺では無いらしい。

「アンタ、オリヴィアに手を出して無いでしょうね!」

「お、おう! まだ大丈夫だ!」

「「まだ」?」

「ひぃっ、い、いえ! 一切そのような事は御座いません!」

 マリンはそれだけ聞けば、殺気を放ちながらオリヴィアを睨んだ。

「オリヴィア! 私に睡眠魔法まで掛けて、どういうつもりよ!」

「ですから、先ほど説明した通りですよ?」

「なっ、なっ、ああっ……! 本気でそのぼんくらの子供を! は、はら、はにゃも…………うって言うの!?」

「はい」

 それが何か? とでも言いたげにオリヴィアは首を傾げたが、マリンはますます顔を真っ赤に染め上げていた。

「そ、そそそっ、そんなの駄目に決まってるじゃない!」

「何故ですか? 私が誰の子を孕もうとマリンさんには関係の無い話だと思います」

「それはっ、そう、だけど……!」

 関係が無いと言われてしまえば、言葉通りマリンには関係の無い話だから何も言えない。

「それではニック様、続きをしましょう」

「ちょ、ちょっと!」

 それでもマリンはそんな事は許せずに止めれば、オリヴィアは「ああ、なるほど」と言って優しい目でマリンの事を見た。

「マリンさんも一緒にしたいんですか?」

「そうなのか!?」

「そんなわけないでしょ!」

 あ、危ない。思わず本気にしてしまうところだった。

 しかしオリヴィアとマリンの二人が相手となれば、最高の夜だった事は間違いないのにな。げへへ。

「ふむ。確かに私一人ではニック様の子を孕むのにも限界がありますし、元来優秀な男性の子を孕みたいのが女の性という物……。そうですね、マリンさんも一緒にニック様の子を孕みましょう!」

 何を言い出すんだこの子は。

 これが最善策です! とでも言いたげに自信を持って、マリンの事を子づくりに誘った。

 効率だけ考えればそれが最善だろうが、今までの会話から見てもマリンがそんな事をする気が無いのは分かる。

 もう頭から湯気が漏れ出そうな勢いで、ゆでだこ並みに真っ赤になったマリン。


「~~~~っ、銀鎖ノ(リアン・ルー)!」


 そう叫べば、指に付いていた指輪の一つが熔解して床に落ちた。瞬間的に質量を増量させて、長さ三mほどの鎖となり、まるで狼を思わせる動きで床を這い、オリヴィアに絡みついた。

「こんなもの……、あれ?」

「その鎖には私の魔力が込められているのよ、ガッサム級のパワーがなきゃちぎれないわよ」

 オリヴィアの拘束に成功したマリンは、近場にあった神衣を纏わせて鎖を引っ張って部屋の外に連れ出した。

「オリヴィアの話、間に受けないでよね! ぼんくら!」

「お、おう! 勿論だ! おやすみ!」

「ふん! おやすみ!」

 別れ際、そんな会話をした。

 ぼんくらだと言いつつ、しっかり挨拶を返してくれるあたりに可愛げを感じた。

 まあ、あのまま本気で手を出していたら消し炭にされていただろうし、オリヴィアを連れて行ってくれて助かったよ。本当に。

 明日の朝も早い。さっさと寝てしまおう。

「…………」

 どうにも寝られなかった俺は、全裸の美少女が鎖によって肉が食い込む煽情的な光景をおかずにして運動に励むのだった。





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