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第四話

 意識を取り戻してから半刻。


 俺は城の地下に設置されている牢屋の中で城中に響き渡る勢いの声で喚き散らかしていた。


「いやだああああっ! 絶対に、絶対に勇者パーティなんかに入ってたまるかぁあああ!」

「いい加減諦めろよ、お前」


 ガッサムが呆れながらそう言った。


 この場にはアリアの他に勇者パーティが揃っており、牢屋に入れられて鎖でぐるぐる巻きにされている俺が逃げないかを見張っていた。


「みず、のむ?」

「飲む!」


 カル・ルーが牢屋の隙間に手を通して、竹筒に入れられた水を飲ませてくれた。優しい。叫び続けて喉が痛かったんだ。これであと一刻は叫び続ける事が出来る。


「ていうか、何でアンタはそんなに勇者パーティに入りたくないのよ」


 牢屋の外で一人だけ椅子に座っていた魔術師のマリンが聞いて来た。


「んなもん、魔王となんて戦いたくないからに決まってるだろ」

「へえ、今までの罪が帳消しになるのに?」

「どうでも良いな。死ぬよりはマシだろ」


 俺の言葉を聞くと、マリンはにやりとほくそ笑んだ。


「アンタが国王陛下に向かって魔法放つ馬鹿な真似をしたせいで今、上は忙しなのよ」

「はあ?」

「分からない? 不敬罪で今すぐ処刑にするべきだって議論されてるのよ! でも国王陛下は勇者パーティとして活躍するなら許してやるべきだって言ってくれてるわ。つまり、アンタは勇者パーティに入る以外の選択肢は無いのよ」

「なら処刑された方がましだ! むしろ処刑してくださいお願いします! 痛く無くスッと逝かせて下さい!」

「コイツ……!」


 思っていた流れと違った様で、面を喰らったマリンが顔を歪めた。


 少し突けば、今にも怒りが爆発しそうだ。


「……それでも、俺達には君の力が必要なんだ」


 勇者のリヒトが真剣な表情で言う。


「なら他の奴を探せば良いだろ。なんで俺なんだよ」

「それは、ヤド婆からの推薦があったからだ」


 俺の質問に答えたのはアリアだった。


「ヤド婆は予言者でな、昔から国の存続にかかわる大事を予言しては、いつも国を助けてくれていた。今回の魔王復活もヤド婆は予知していたほどだ」


 はた迷惑な婆さんだ。俺は静かに暮らしたいだけなのに、どうして勇者パーティなんて危険な真似をしなければいけないんだ。


「俺は腕っぷしは無いし、幾時も無い。お前らの足を引っ張るだけだぞ」

「……分かった。それなら君は戦闘に参加しなくて構わない」

「ちょっと!」

「戦闘なら俺達がいればいいからな、君は罠や敵城の施錠を解除するだけで良い」


 それはかなり美味しい条件だ。 しかし勇者パーティとして帯同するなら、戦闘は避けられない場面だって必ずやって来る。そうなれば俺の命の危険は必ず付いて回るしーーーー


「ちなみに勇者パーティとして固定の月給が五百万ロイドが約束されているぞ。大きな手柄を上げれば報奨金も約束されている」

「お前ら何をぼさっとしてる! さっさと魔王をぶっ殺しに行くぞ!」


 報奨金! いや、魔王に逃げられれば俺の報奨金! いや、市民への被害が計り知れない! 必ずや俺がこの手で打っ倒してやる! いや、それは無理か。危ない事はリヒトにでも任せて俺はおこぼれにあやかろう。


「あ、ああ。しかし我々にも準備があるから出発はもうしばらく後になると思うが……」

「すごい、ひょうへん」

「はあ、疲れて来たわ」

「俺は結構好きだぜ、こういう奴」


 ニックの変わりようの速さに、笑う者や呆れる者がいる中で聖女オリヴィアだけは沈黙を守っていた。





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