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第二話

一話ごとの長さがだいぶ違いますけど気にしないでください

 ゆらゆらと、どこか眩暈を錯覚させる強い香水の匂いに俺は思わず眉を歪ませた。


 微かに目を開くと、かつて一度だけ忍び込んだ事がある領主の屋敷よりも、余程豪華な内装のベッドで俺は横になっていた。


 それから人の気配を察知した俺は再び目を閉じて、耳に神経を集中した。


「姉さま、こんな場所にいたんですね」

「おお。レオーネか。大きくなったな」

「もう、たまには王宮に顔を出してくれればいいのに」

「ははは。私は特別任務があるからな、ちょっと忙しいんだ。勘弁してくれ」


 片方はアリアで、会話の内容から察するにアリアの妹――――つまり王女様なのだろう。名前のレオーネは、確か第二王女と同じ名前だ。


「……どうしてこんなこそ泥を王宮に……」

「まあそう言うな。ゲド婆からの推薦と、聖女からの進言だ。無下には出来まい?」

「それなら、姉さまの方が適任よ。姉さまなら団長以外に負けるなんて……」

「強さだけなら、な。だが私が細かい作業が苦手なのは知っているだろう?」

「それは……」

「その点、この男ならばその辺りの腕は誰よりも上だ。少なくとも王国中を探しても比肩する相手がいない程にな」

「とにかく、私は反対ですわ。こんな男が……、それに報酬に私が……の約束なんて」

「そう言うな。そこそこの優良物件だと思うぞ」

「それなら、姉さまが私の立場ならどうするんですの?」

「断る」

「私もですわ」

「だが、私は騎士だから良いが、お前はいずれ女王になりたいのであろう? ならば、世継ぎを残すためにも相手は必要だろう」

「それはそうですけど……」

 何やら重たい雰囲気になりつつあったが、扉がノックする音が響いた。

「レオーネ様、支度が出来ましたので化粧室に……」

「わかったわ。では姉さま、また」

「うむ」


 そして、レオーネの気配が消え、アリアと俺だけの密室が出来上がった。


 沈黙が続く。アリアは一体何をしているのだろうか。


 俺が分かるのは気配だけだ。殺気を向けられたら反射的に避けれるが、ある程度の実力がある者は無心で剣を振り下ろすから恐ろしい。


 そうなれば甘んじて死を受け入れよう。


「ほら、いつまで寝た振りをしているんだい?」

「……いつから気付いてた?」

「最初から」


 魔狼をも欺いた俺の死んだふりを見破るとか、どこまでも規格外の女だ。


「はーあ、くそ。お前一体何なんだよ」

「近衛騎士団の副団長だ」

「いや、そうじゃなくて。……まあいいや」


 何というか、半分天然が入っているのだからタチが悪い。

 ベッドから降りて、改めて部屋を見渡した。


「それで、どうして俺をこんな場所に連れて来たんだ?」


 何かの罪に問われるのなら、こんなに良い部屋に案内はしないだろう。


 だが俺は盗み以外の事はしたことが無いし、何が理由なのかさっぱりわからなかった。


「もうすぐ分かるさ」


 アリアは「さあ、そろそろ時間だ。行こうか」と告げると扉の方に向かった。


 どこに行くんだ、と聞いても答えてくれそうに無いな。


 俺は諦めて、先を行くアリアに付いて行くのだった。





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