第十五話
女二人は抱えて、男連中は紐で縛って走る。
ひたすらに重たいが、滋養強壮に利く薬をがぶ飲みしてとにかく足を動かした。
もし追い付かれでもしたら、リヒトに合わせる顔が無い。
とにかく今は走れ。北に向かってーーーー。
「なっ、アンタらは……!」
「勇者パーティ!?」
森の中で出会ったのは、門番をしていた男と街の人々だった。
いつ以来だろう。
友人と呼びたくなった男に出会ったのは。
「電光石火!」
「うおっ、速ぇなァ!」
渾身の高速移動にも魔王四天王を名乗る魔族、ガルバッタは身体を翻して難なく避けてみせた。
眼が霞む。一体、今日だけで何匹の魔物を斬ったのだろう。
「閃光!」
「ぐおっ?」
リヒトは自問自答の中で、今は亡き家族の顔……、では無く。仲間たちの顔を思い出していた。
彼らとは関わって日も浅く、特にニックなど性根の悪さは折り紙付きだ。パーティを組んだ当初は仲良くなれるとは思っていなかった。実際、今も友人と呼べる関係では無い。
だが、彼の性根は腐ってはいなかった。
本当に噂に聞く通りの盗賊ならば、魔物の群れに襲撃された時点で我々は死んでいただろう。
契約だと言いながら、結局は助けてくれたのが彼の人の好さを物語っている。
「眩しいねえ! ギャハハハハハ!」
一体彼は何を想い、どう生きて来たのだろう。
どんな事をして来たのだろう。
勇者についてどう思っているのだろう。
聞いてみたい。話してみたい。
私は彼と友人になってみたい。仲間になりたいーーーーー。
「眩しいねえ眩しいねえ……、眩しいな……、おい。……くそがぁああああああああっ!」
その時、視界を潰されていたガルバッタが咆哮を上げた。
ただ叫んだだけ。爆音から発せられる衝撃波がガルバッタを中心に広がり、今に首に斬り掛かろうとしていたリヒトも巻き込まれた。
(死にたく、ないなぁ……)
リヒトは砂に塗れて倒れていた。
意識は保っているが、身体の節々が折れ曲がっている。
どうして自分でも生きているのか分からなかった。
激しい痛みの中で、それでもリヒトは剣を杖替わりにして立ち上がった。
「僕は、勇者だ。……絶対に死んでたまるか」
彼の名は今代の勇者 リヒト・アールデルタ。
聖剣の名はエクスカリバー。その力は「不敗」。
その不屈の魂が折れない限り、敗北はあり得ない。
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