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番外編④ あるかもしれない未来の話 琴乃×美奈子

「あ、電気ついてるじゃん」


 仕事が終わり、家に帰ると窓から光が漏れているのが分かった。

 今日は琴乃の方が早く帰ってきたのだろう。


 高校を卒業後それぞれ別の道に進んだ私達だったけれど、琴乃とは月1回くらいのペースで会っていた。

 何をするでもなくただお互いの近況を話すだけみたい日もあれば、私が一方的に愚痴を聞いてもらうみたいな日もあったし、BLについて語り合う日もあれば、コラボカフェなどへ遠出をすることもあった。


 特に大きく何かが変わることもなく過ごしていた。


 

 そんな私達の関係が変わったのは高校を卒業して2年目の頃だ。


 

 いつものように駅前に集合して、特に予定を立てているわけでもなかった私達はアニメイトに寄った後、適当にお菓子や飲み物を買い1人暮らしをしている琴乃の部屋へ向かった。


 何度も遊びに来ているから、部屋には私が座る用の座布団が当たり前のことのように置いてあり、私も当たり前のことのように座る。


 テーブルの上に買ってきたお菓子を広げたら、各々アニメイトで買ったグッズの開封を始めたり漫画を読み始めていく。


 全24種のランダムラバストからはいつも通り推しは来ず、1人で「24分の1は無理ゲーだ」と公式への恨みを呟いたりはするものの、特にこれと言って会話をするわけではない。


 無言の時間も流れはするが、そんな時間が気にならないくらい琴乃といるのは気楽でいい。


 グッズの開封を終え、私も漫画を読み始め1冊半ほど読み終えた頃、ふと琴乃が呟いた。


「美奈はさ、彼氏とか作らんの?」


 2人でいて恋愛の話なんて全然してこなかったから、急な話に私は驚いた。

 しかし、ここで動揺を見せるのはなにか違う気がしてできるだけ冷静に返す。


「どうしたの急に、琴からそんな話するなんて珍しくない?」


 すると、琴乃は視線を漫画に落としたまま話し始めた。


「この間職場のおばちゃん達と話してたら恋愛の話になって。誰か良い人いないのって聞かれたんだよね。それで特にいないって答えたら『琴乃ちゃんくらいの年齢ならどんどん恋愛して色んな経験しなきゃ』とかまぁ色々言われてさ、確かにうちらの年齢くらいなら恋人の1人や2人いてもおかしくない年齢なわけじゃん?」


「言いたいことはわかる」


 恋人が2人居たらおかしいけどね。話の雰囲気的に今は心の中だけでツッコんでおこう。


「うちはさ、職場にはおばちゃんしかいないからそもそも出会いなんてないけど、大学生の美奈は周りに同じくらいの年齢の人が沢山いて、サークルにバイト、飲み会とかもあるだろうし出会いの場は多いわけじゃん。そしたらいつかは美奈も彼氏とか作って、デートとかするだろうからこうやって一緒に過ごすことも減っていくのかなと思ったわけよ」


 なるほど。

 大学入ってから2回くらい告白もされたし、琴乃の言う通り出会いは確かに多いかもしれない。


 でも。


「彼氏はいいかな~。なんだかんだ琴と一緒に居る方が落ち着くしさ」


 なんなら琴乃ほど相性がいい人って男女問わずそういないと思うんだよね。こういう関係って人生で沢山は出来ないものだと私は思うわけですよ。


 だからつい言ってしまった。


「どうせ付き合うなら琴がいいな」


 言ってすぐに後悔した。割と真面目なトーンで話しているこんな時にこれは流石に引かれるかもしれないって思ったから。

 いつもの軽いノリとはどう考えて違うトーンだった。


 いつも通りなら軽くいなしてくる琴乃がすぐに言葉を返してこなくて、あぁこれは本気でやってしまったかもしれないと思った。


 これで琴乃との関係が壊れてしまったらどうしよう。


 そう思うと胸がチクッと痛んだ。


 その痛みで私は気が付いた。

 気づいたら今まで通りではいられないからずっと気づかないふりをしていた自分の気持ちに。


 私は琴乃のこと好きだったんだな……。


 なんてね、なんて言えばまだ何とかなるだろうか。

 流石にもう遅いかな。

 

 そんなことを考えていると、琴乃がずっと見ていた漫画を置き、私を見た。

 

 

「じゃぁ付き合う?」


 ……ん?


「美奈のこと好きだよ、割と真面目に」


 え?


「え?」


 ええええええええええ!?


 いやいやいや、この展開は予想してないって。

 琴乃が私を好き?

 いつから。そんな素振り全然なかったじゃん。


「そ、それはその、恋愛的な意味でということですか?」


 思わず敬語で聞いてしまうくらいには動揺しているようだ私。

 そんな私を見て琴乃はクスっと笑った。


「急に口調変わってどうした。もちろん、恋愛的な意味。キスとかそれ以上のこともしたいって思う」


 キス……。

 それ以上……?


 顔がだんだん熱くなっていくのを感じる。多分、今誰が見てもわかるくらい真っ赤になってる気がする。あの気まずい雰囲気からの現実逃避で幻覚が見えてるわけじゃないよね? 夢とかでもないよね?

 頬を抓ればやっぱり痛い。

 

 まじか、私達両想いだったってこと?


「で、返事は?」


 琴乃が私の顔を覗き込みながら聞いてくる。


「あ、よ、よろしくお願いしますっ」




 とまぁ、こんなことがありまして私達はお付き合いを始めたわけでございます。

 ちなみにこの日この後琴乃から、『今日泊まっていく?』とか言われちゃいましてね。


 うんって返事したら『顔真っ赤にして何考えてるの?』とからかわれましたよ。

 さっき、キスとかそれ以上をとか言われたんだから意識するなと言う方が無理だと思うんですよ。



 それから更に2年後、大学を卒業し私が就職したことを期に同棲をはじめた。



 付き合いだした頃のことを思い出してなんだか少し恥ずかしい気持ちになりながら玄関のドアを開ければ、部屋の中からパタパタと音がし、琴乃が出迎えに来てくれる。


「ただいま」


「おかえり」


 毎日のように言う何気ない言葉だけれどそれだけで幸せな気持ちになる。


 そして琴乃がおかえりのキスをしてくれ、それだけで仕事で疲れた心が癒され幸せで満たされていく気がした。


 だから今度はお返しに私から琴乃にキスをした。

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