部活①
ある日の放課後。
いつものようにみんなと帰ろうと準備していると、美奈ちゃん、琴ちゃん、桃ちゃん、陽ちゃんそして涼ちゃんの5人がなにやらガソゴソとしていた。
スクールバッグから5人が取りだしたのはエプロンと三角巾。それだけ持って5人は教室を出て行ってしまった。
みんなで何かするのかとも思ったけれど、着替えてるのは5人だけで、あすちゃんや柴ちゃん、実世ちゃんはササッと帰っている。あと席に座っているのは、本を読んでいる美由紀ちゃんと、国語の宿題を始めた恵ちゃんくらい。気になって私は恵ちゃんに尋ねてみることにした。
「恵ちゃん、みんな何してるの?」
「あぁ、そっか。そういえば麻衣さんには話してなかったかもね。あの5人は家庭科部に入っててね、今日はクッキー作りをするんだって。私はみんなと帰ろうかなと思ってるからここで宿題をして待ってる」
なるほど部活か。そういえば部活が少ないけどいくつかあると転入前の説明で聞いた気がする。あんまり覚えてないけど。
「部活って他にどんなのがあるの?」
「えっとね、家庭科部以外だと、運動部と伝統部かな」
運動部と伝統部。どちらも部活の名前としては聞きなれない名前だった。
運動部って普通は陸上部とか野球部とかそういう運動系の部活を総称して使う気がする。しかし恵ちゃんの言い方だと部活の名前が運動部ということみたいだし、運動なら何でもする部活なのかもしれない。となると伝統部も伝統的なことをするということ?
想像してみたものの、いまひとつピンとこない。
「ねーね、家庭科部以外あんまり聞きなれないんだけど、どんな部活なの?」
考えても答えにたどり着ける気がしないため、ここは正直に尋ねてみることにした。
「多分そのうち1年生の部活紹介とかで麻衣さんも聞きはすると思うから簡単に説明すると、まず部活はどれも週1ペースくらいで毎日はないんだよね。全校生徒が少ないのと部活とは名ばかりの同好会って感じで緩いんだよ。でも緩いから兼部もしやすくて3つ全部に入ってる子とかもいたりする」
なるほど。だから今日まで部活の存在に気が付かなかったわけだ。
「で、活動内容だけど、家庭科部はお菓子作りか小物作り。運動部はバドミントンやソフトボールみたいなスポーツから鬼ごっこみたいなレクリエーションとかもやったりしてる。伝統部は独楽やかるた、あとは獅子舞や長刀とか伝統的なものをやってるかな」
「運動部や伝統部は結構幅広くやってるんだね~ 恵ちゃんは何か入ってるの?」
「私は何も入ってないよ。1年生の時は休みがちだったからタイミング無くて入らなかったんだよね。麻衣さんこそ何か気になる部活とかあった?」
入りたい部活か。どの部活も大会とかがあるわけではないし、恵ちゃんが言うとり緩そうだから2年生からでも入りやすそうではあるけど……。
「美術部とかあれば入ったんだけどなぁ」
絵を描くのが好きだし皆でワイワイと絵を描くのは楽しそうだなとふと思い呟くと恵ちゃんが思わぬ言葉を発した。
「じゃぁ作って見れば? 美術部なら私入りたいな」
作る? 私が部活を?
「無理だよ!? 私が創部するなんてそんな恐れ多いこと出来ないよ」
「そんなことないと思うよ。麻衣さん本当に絵が上手いし適任だと思うんだよね。もちろん私も創部のためのお手伝いはするしさ、とりあえず先生に確認してみようよ」
とりあえず新たに部活を作ることができるのか、先生のもとへ尋ねに行くくらいないいのかな。まだ作ると決めたわけではないし。
一人心の中で葛藤していると、本を読んでいた美優紀ちゃんが静かに私たちの元へ歩いてきた。
もしかして声が大きくて読書の邪魔しちゃったかな。そう思って謝ろうとする前に美優紀ちゃんが話し始めた。
「えっと、その急にごめんなさい。その、2人の話が聞こえて来て。あ、別に聞き耳を立ててたというわけではないんだけどね、ほら、教室には3人しかいないから聴こえちゃって。ってそうじゃなくて……その、ね、美術部もし作るなら私も入部したいなって……思って……」
「本当に? いいの?」
思わず聞き返してしまうと、美優紀ちゃんは頷いてくれた。
「ありがとう美優紀さん。麻衣さん、美優紀さんが入部希望ならこれでもう3人だよ。これは本当に美術部作れるかもよ」
恵ちゃんの言葉に私も頷く。
2人でなんとなく、夢物語のように話していたけれど3人となれば少し現実味が出てきた気がする。これはひょっとしたひょっとして、本当に美術部が出来るかもしれない。
今まで1人で描いてきた。それはそれでもちろん楽しかったけれど、この学校に来てみんなが褒めてくれて絵を描くのがもっと楽しくなった。そんな絵をみんなと描ける。楽しくないわけがない。
描きたい。みんなと。
チャレンジしてみよう。自分でも驚いたけれど生まれて初めてそんな気持ちになった。
早速、3人で職員室へ向かい、担任の鈴城先生に話して見ることにした。
職員室に入るのはまだドキドキしたけれど3人でいると不思議と力が湧いてくる気がする。1人じゃないってこんなにも心強いものなのかな。
「鈴城先生、少しお時間よろしいですか」
「はーい、いいよ入ってきて」
そう言われ、3人で鈴城先生の机のそばに行った。
「珍しい3人組ね。どうかしたの?」
「えっと……」
いざ話そうとするとやはり緊張してしまう。大袈裟に見えるかもしれないけれど、今までの人生、陰でひっそりと生きてきた私はこんなに思い切ったことをしたことないんだ。なんと話せばいいのかと悩んでいると私の両手が暖かいもので包まれる。自分の手に視線を向けると右手を恵ちゃんが、左手を美優紀ちゃんが握ってくれていた。手へ向けていた目を2人に向けると2人は大きく頷いてくれる。そうだ、今私は1人じゃないんだ。
「あの、さっき教室で2人と話していて、美術部を作りたいと思いまして。新しく部活を作ることは出来ますか」
言えた。何とか伝えたいことは話せた。
「美術部! いいね~多分作れると思うんだけど、ちょっと待っててね。私が赴任してきてから今まで部活が新しく出来た子とないから聞いてみるね」
そう言って鈴城先生は数学の沢村先生に創部方法を尋ねてくれた。
「お待たせしました。創部のためにはまず部員を5人集めて、この用紙に部活名、活動内容を記入して提出してね。受理されれば晴れて部活の創立って流れになるかな。うちは美術の授業はないし、顧問の先生は受理されたときに決めるそうです。すでに3人は決まってるみたいだし、あと2人頑張って探してね」
「はい!」
まだ創部できることが決まったわけではないし、部員をあと2人探さないといけないけれど美術部が作れるかもしれない。そう思うとワクワクが止まらなかった。




