音楽の時間
「麻衣次音楽だから急ぐよっ」
みなちゃんに急かされ何故か急ぎ足で音楽室へ向かう私。
なんで音楽で急がないと行けないのか分からないが、みんな真剣な表情で移動しているため尋ねることは憚られ、とりあえずついて行く。
今日は初めての音楽の授業がある日。前の時間の授業が終わると、休憩もそこそこに連れ出されたわけである。
音楽室に着くとみんなは、それぞれの決まった席へと向かい何故か準備運動を始めた。
「あ、麻衣はまだ席が分からないのか。とりあえず適当に空いてるところにいればいいと思う」
訳が分からず入口で突っ立てっている私に気がついたことちゃんがそう言ってくれたため、一旦すずちゃんの隣に行くことにしする。
「ねぇすずちゃん、なんでみんな準備運動してるの?」
「音楽は授業が始まる前に、準備運動と発声練習をするのが決まりだから」
発声練習はまだわかるけど、準備運動もやるなんてこの学校は音楽に力をいれているのかな。
みんなの表情もいつもより真剣な顔つきな気がするし、だれ一人準備運動の手を抜いていない。普段割とお茶らけているみんながここまで真剣だとなんだかむず痒さを感じる。
私一人何もやらないわけにもいかないため、周りを見ながら私も準備運動をすることにした。
準備運動が終わり次は発声練習かなと考えていると、はるちゃんが前に出てきた。
「発声やりまーす」
その合図の後、みんなが声をだした。
「あいうえお、いうえおあ、うえおあい、えおあいう、おあいうえー」
「あーーーー」
「らららららららららー」
数種類の発声練習を行っていくみんなになんとかついていき発声練習が終わったころで、授業開始のチャイムが鳴った。
授業前にこれだけやることがあったら、そりゃぁみんな急いで音楽室に向かうわけだと一人納得する。誰一人文句を言うことなくおこなっているんだからすごい。
授業がはじまり、恐らく4、50代くらいだと思われる女性が入ってきた。きっと音楽の先生だろう。やせ型の体形に茶髪の髪、少々つり目で、頭に眼鏡を乗せた人だ。
授業開始の挨拶をし、席に座ると先生が私の方を向いた。
「あなたが転入生の子ね」
「はい。浜岡麻衣です」
「私は北 よし子。よろしく。で、さっそくだけど今の声の感じとりあえず浜岡さんはメゾソプラノで歌ってもらおうかしらね。だから席はそのままでいいOKね」
メゾソプラノ? ソプラノとアルトの間だったっかな確か。
「音楽の授業は合唱がメインです。今は六月の合唱祭に向けて練習していくことになるから、頑張ってね」
そういって、楽譜を渡してくれた。タイトルは、『ふるさと』と『手紙』だった。どちらも聞いたことのある歌だ。しかし、メゾソプラノなんてパートで歌ったことはないため不安がある。
それに、クラスは十一人しかいないため、一人一人の声が聞こえやすくてちょっと怖い。
「ふるさとはみんな一年生の時から歌ってるから、浜岡さんは1回聞いてみる? 女声三部がどんな感じか聞いてみたいだろうし」
小学校でも中学校でも合唱自体はあったから経験はあるけど、男女混合だったから女性だけだとどんな音色になるのか確かに気になる。聞いてみたいと伝えると、私以外のみんなは音楽室の前に並んだ。
北先生がピアノを弾き、みんなが歌う。
その声は、たった十人とは思えない音の重なりで音楽室中が声で満たされる。優しい歌声のふるさとに思わず涙があふれそうになる。一番はユニゾンでみんなの声が合わさった優しい歌声。二番からは、パートが分かれそれぞれの音が綺麗に重なり合い美しい音色が響き渡る。いつもとは違うみんなの姿に心奪われてしまう。
聞き終わったとき、私は心からの拍手が出ていた。それほどまでに美しかったのだ。
私はこの中に入れるのだろうか。私なんかが入ったら邪魔になってしまうのではないか。そんな不安が沸いてきてしまう。
「麻衣さんは初めてだし、今日は各パートで音取りしてもらおうかしらね。パート毎に順番でピアノの周りに呼ぶから呼ばれるまでは自分たちで練習してもらっていいかしらね」
そして始まったパート練習。
同じパートにいるのは、すずちゃん、未希ちゃん、ももちゃん、美優紀ちゃんの四人。
私含めた五人で集まると、私の不安な表情に気が付いたのかももちゃんが話しかけてくれる。
「まいちゃんどうしたの? なんだか顔が暗いよ?」
「なんだかさ、いまの歌聞いてたら私歌えるのか不安になってきちゃって」
正直に思いを伝えると、ももちゃんがニコッと笑った。
「大丈夫だよ! ここにいるみんな先輩たちの歌聞いて最初はそう思ってたから」
「でも……」
「ほら、笑顔笑顔! 歌うときはね表情も大事なんだよ? まずは笑顔から。そしたらいつのまにか歌うことも楽しくなってくるよ」
指を頬に指して満面の笑みを浮かべるももちゃんの可愛らしいこと……。
っじゃなくて、笑顔か。
確かにみんな歌ってるとき楽しそうな表情してたなぁ。
そう思っていると、私の両手が握られた。右はすずちゃん。左は未希ちゃんだった。
「一緒に頑張ろ」
「練習くらいならいつでも付き合うしさ」
二人も励ましてくれて頑張ってみようかな。なんて気持ちが沸いてくる。
「ああ! 二人だけずるい! みゆきちゃん、私たちもやろう」
「え、私はいいよ」
「えー、折角だしさ、ね?」
ももちゃんは美優紀ちゃんの片手をとり、更に未希ちゃんとも手を繋ぎ、美優紀ちゃんはすずちゃんと手を繋いだ。
「新しく入ってくれた麻衣ちゃんと5人。メゾがんばるぞー」
ももちゃんのそんな掛け声に、みんなで一度顔を見合わせそして。
「お――」
他のパートの邪魔にならないくらいの声で気合を入れあった。
久しぶりの投稿になってしまいました。すみません。
色々ごたついてるのでまたしばらく投稿できないかもです。




