番外編② あるかもしれない未来のはなし 美奈子×麻衣編
ピンポーン
インターホンの音がして、確認すると家の前には私の恋人であるみなちゃんこと美奈子ちゃんが立っていた。
返事をして急いで玄関へ向かいドアを開けた瞬間勢いよく抱き着かれる。
「麻衣~~! 会いたかったよ~~」
「わっ」
慌てて受け止め、抱きしめ返す。
感動の再開のように見える一場面だが、別にそういうわけではない。
お互い違う大学で、バイトもしているため毎日は会えていないが一人暮らしをする家同士が遠いわけではないため週1~2回のペースで会っている。今回だって一週間前にも会っているわけで大げさと言えば大げさな再会の一場面である。
しかし、恋人同士の一週間ぶりの逢瀬。こうなってしまうのも仕方がないというもの。
「みなちゃん、とりあえず入って」
たっぷりみなちゃんを堪能したところで部屋の中に入る。
ソファなんて大層なもの苦学生の私の部屋にあるわけもなく、百均で買ったクッションを渡してお茶でも入れようかと小さい台所に向かうと、何故かついてくるみなちゃん。
「どうしたの? ゆっくりしてていいんだよ?」
「やだ。まだ麻衣分が足りないからイチャイチャする」
麻衣分ってなんだ? と思いながらも、甘えたモードになったみなちゃんは少々子どもっぽくなって満足するまで離してくれない。
前に甘えたモードのみなちゃんを部屋に残して買い物に出たらかなりムスッとした表情でお出迎えされた経験がある。あの時は大変だった……。
もう私から一生離れないんじゃないかってくらいベッタリだった。話しかけるとツーンとしていて、でも本当は喋りたいんだろうなってのも見て取れてちょっと寂しそうで正直あれはあれで可愛かったけど。
流石に可哀そうだし、私としても笑ってるみなちゃんが大好きだからみなちゃんと向き合う。
「麻衣、ここ座って」
促されてベッドの上に座ると、嬉しそうに私の膝の上に頭を乗せてくるみなちゃん。膝枕だけでこんなに喜ばれるとこちらとしても嬉しい。なんとなく髪をなでると、みなちゃんは目を細めて気持ちよさそう。
しばらく無言でそんな時間を過ごしていると、みなちゃんがふと口を開いた。
「ねぇ麻衣」
「ん?」
「一緒に住まない?」
予想外の言葉に思わず手が止まる。
二人とも大学生だし、私だって考えなかったわけではない。付き合ってすぐに同棲ってのもアリなのかもしれないけど、もう少し付き合ったばかりの恋人の感じを味わおうって話し合って一人暮らしをしている私達。なんとなく大学卒業するまではこんな感じなのかなって思っていたから少し意外だった。
「嫌?」
私が手を止め黙ってしまったため、少し不安そうな顔で言うみなちゃんに慌てて首を振って答える。
「違う! そうじゃなくて、びっくりしただけ。どうしたの急に」
純粋な疑問をぶつけてみる。
「んー別に深い意味はないんだけどさ。やっぱり一人暮らし寂しいんだよね。大学行ってさ、バイトして帰ってきたときに誰かいるって良いなって思った。それが大好きな麻衣ならこんなに幸せなことないんじゃないかなって」
「それが本音?」
意外と寂しがり屋なみなちゃんのことだから嘘ではないと思うし、これも本当の事なんだろうけどそれだけではない気がして聞いてみる。
「正直に言ってしまえば、もとイチャイチャしてたいってのが一番だよね」
なんともみなちゃんらしいド直球な言い分に思わず笑ってしまう。
「なにそれ~、物足りないの?」
「うん。もっとたくさん。毎日イチャイチャしたい。こんな風に……」
そういうと、みなちゃんがスッと頭を上げてキスをしてきた。
「毎日。何回でも麻衣とキスしたい。抱きしめたい」
「みなちゃん……」
啄むように何度もキスをしているうちに、みなちゃんが起き上がり、気づけば私が押し倒されていた。
「麻衣……」
潤んだような瞳で、艶やかな表情でもう一度キスをしようとしてくるみなちゃん。
「っと、ストップ!」
雰囲気に流されそうになったが、なけなしの理性でみなちゃんとの間に手を挟んでキスを阻止する。
「なに、どうしたの」
雰囲気を壊されてちょっとムスッとしているみなちゃん。
しかし、今ここで流されるわけにはいかない。
「まだ昼間だから流石に今からは爛れすぎかなぁって思いまして……。それに、今日のデートの予定が崩れちゃうよ?」
「別に付き合ってるんだし、毎回じゃないし。偶にはこういうのもアリだと思うけど。デートだって明日でもできるし」
肉食獣のような目は変わらずにそんなことを言ってくる。今にも襲われてしまいそうな目に気後れしてしまいそうだ。
「で、でも、今日は止まるんでしょ? ご飯の材料とか買っておかないと後に回すと気怠くなると思うしさ。ね?」
「それもデリバリーとかでいいでしょ」
た、確かに。他にみなちゃんを止めるのに使えそうなものは……なくないか?
「お預けされたぶん加減できそうにないけど、いいよね?」
一瞬みなちゃんの目が光ったような気がした。あ、これ食べられてしまう。本能的にそう感じてしまった。
「……はい」




