歓迎会③
今年最後の投稿予定です
「ねー、なんかみんなイチャイチャしてずるい。わたしもするっ」
そんな声がマイクを通して部屋に響いたかと思えば、はるちゃんがめぐちゃんに抱き着いた。
「ねね。めぐ、これあーんってして~」
はるちゃんが指さす先にあるのはさきほど運ばれてきたばかりのフライドポテト。妹モード全開のはるちゃんに甘えられためぐちゃんは、困ったような表情をしつつも、ももちゃんの腕から自身の腕を抜いてはるちゃんにあーんしてあげた。
「んふふ~美味し~」
幸せそうに食べるはるちゃんが可愛いのか、めぐちゃんがもう一本ポテトを差し出せばまたはるちゃんが口を開ける。傍から見るとちょっと餌付けにみえなくもないけど、二人が楽しそうならまぁいいか。
一方、めぐちゃんを取られたももちゃんはムスッとした顔をしている。拗ねてるのかな? なにそれ可愛い。
「めぐ、私にもポテトちょーだい」
服のすそをクイクイと引っ張りながらおねだりをするももちゃんに、わかった~とめぐちゃんはポテトを差し出した。そう、差し出したのだ。
違うっ! 違うよめぐちゃん! そこはあーんだよ!
一瞬肩透かしを食らったような顔をしたももちゃんだったが、すぐに笑顔に戻りあきらめることなく今度は口を開いてアピールする。
すると流石に意図が伝わったのかポテトを口の中に入れてあげるめぐちゃん。
「おいしい~ ほら、めぐも食べなよ」
そう言って今度はももちゃんポテトをめぐちゃんの口へと運んだ。なんと自然な流れなのだろうか。いつもあぁやってイチャイチャしてるのかな。
「どう? 美味しい?」
「美味しいけど、恥ずかしい……」
照れくさそうに頬をかくめぐちゃんの姿にももちゃんはどこか満足気である。そんな二人の姿に今度ははるちゃんが拗ねたような顔をした。
「めぐ、私もあげる! はい、あーん」
負けじと? 今度ははるちゃんがめぐちゃんに食べさせてあげる。
なんかあそこだけ、少しバチバチしてない?
ももちゃんとはるちゃんがめぐちゃんを挟んで火花を散らしているように見えるんだけど。そんな私の気持ちを読み取ったのかそうでないのかはわからないが、みなちゃんとことちゃんが溜息をついて話し始めた。
『またやってるよあの二人』と。
またとは、よくある光景なのだろうか。
疑問に思い、二人に尋ねてみる。
「あぁ、麻衣はこれ初めてか」
「ももとはるでたまにめぐを取り合ってんだよ……」
「なんでまたそんなことに」
「ももは幼馴染と一緒にいたくて、はるはお姉ちゃんと一緒に居たい的な」
「お姉ちゃん?」
はるちゃんとめぐちゃんって苗字違うけど姉妹なの? 年齢も一緒だよね? もしかして複雑なご家庭?
「多分だが麻衣が思ってるのとは違うぞ……。はるが一番末っ子って前に話したろ? 逆にめぐは三人兄弟の一番上で誕生日もクラスで一番早いからか世話焼き姉ちゃんなところがあってな、はるがよく懐いてるわけだ。姉妹みたなところあるんだよあの二人は」
なるほど。確かにめぐちゃんは転校してきた私をよく気にかけてくれるしお姉ちゃんみたいなところがある気がする。
教室で見ていても、授業のわからないところ聞いたり、ちょっとした相談に乗ったりしている姿をよく見るしクラスみんなのお姉ちゃん的なところがある。
「そして、恵本人は鈍感なのか二人の争いには気づいてないのよねぇ。良くも悪くも平等に優しいから優劣もつかないままなわけよ」
あー、確かにめぐちゃんが誰か一人を選ぶ姿想像できないかもしれない。あるいみめぐちゃん自身がこれを引き起こしちゃってるわけだね……。
でもいつまでもこのままバチバチさせておくわけにもいかないしなぁ。
「決着がつかないならいつもどうやって収束させてるの?」
とりあえずこの場を収めるために、普段の対応を二人に聞いてみることにした。
「いつもはねー、有耶無耶にして終わらせてるかな」
「どうやって?」
そう尋ねると、ニヤッと微笑むみなちゃん。何をする気なの……。
「それは!」
急に立ち上がるみなちゃん。
そして何故かすずちゃんやあずちゃん、未希ちゃんも立ち上がる。
「こうするわけだっ!」
その声と同時にみんなが恵ちゃんの元へ集まり抱き着いたり、あーんをしたりされたりし始めた。
「なにやってるの!?」
「いっそみんなで甘えればなんか有耶無耶になるんじゃない?大作戦!」
恵ちゃんに抱き着いてニコニコしながら、よくわからないことを言うみなちゃん。
何がどうなったらそんな結論にたどりつくのかわからない。
わからないけど甘えているみんなは楽しそうである。
外から、ことちゃんは溜息をつき、美優紀ちゃんは微笑ましそうに。実世ちゃんは興味なさげ眺めているのがこれまたシュール。
「ほらほら、麻衣もおいでよ。普段秘めている甘えたいという欲望をさらけだすんだ! 今なら許されるからっ」
そんな欲望ないよっ!
と言いながらも、なぜか私の足はめぐちゃんへ近づいていく。
「えっと……」
めぐちゃんの前に立ったはいいものの、ここからどうしていいかわからないでいると、めぐちゃんが困り顔ながらもどこか優しい微笑みを浮かべて手を指し伸ばし、その腕をつかむと胸元へ引き寄せられ抱きしめられた。
あ、コレはやばい……。暖かくて柔らかくて凄く落ち着く。
さらにめぐちゃんが私の頭を撫で始め、私は全身の力がどんどん抜けていく。
ダメだよこれは……。
こんなの抗えないよ……。
――そして私の意識は途絶えた。
「麻衣、そろそろ帰るよ。起きな~」
みなちゃんの声が聞こえて、目を開けるとそこはめぐちゃんの膝の上だった。あまりの心地よさに私は寝落ちたらしい。
慌てて起き上がり、ずっと膝枕してくれていたのであろうめぐちゃんに感謝と謝罪を伝える。
「ぜんぜん大丈夫だよ。それより折角の歓迎会なのに起こさなくてごめんね。あまりにも気持ちよさそうに寝てたから起こすのも悪いかなって思って」
逆に謝られた。仏かな?
と、違う違う。
「うんん、ありがとうめぐちゃん。それにみんなも今日は歓迎会開いてくれてありがとうございました。こういうの初めてで最初は少し緊張してたけど、すごく楽しかった。よかったらまた遊びに行こうね」
「もちろん!」
みんなが頷いてくれて凄く嬉しかった。
色んな事があった気がするけど、どれもいい思い出で、またみんなで遊べる日が楽しみになる一日だった。
メリークリスマス!
本編はばだ4月ですが……。




