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歓迎会①

 桜ヶ丘学園に転校してきて一週間。初めての休日である土曜日。

 今日はみんなが私のために歓迎会を開いてくれるらしく、駅で待ち合わせ。


 画材を買いに行く以外にはたまにお母さんの買い物に付き合うぐらいで外出なんてほとんどしない私は金曜の夜から何を着ていけばいいのか悩みに悩んだ。

 友達と休日遊びに出かける経験なんてほとんど無かったから、リア充のお姉ちゃんや妹に相談しまくった。

 

 イラスト描く時に、ファッションについて調べたりはするけれど、いざ自分が着るとなると話は別で似合う似合わないの問題が出てくるから難易度高かった……。

 姉妹であーだこーだと言い合った結果、まぁ無難に春らしく淡い色合いのコーデになりました。春になったとはいえ寒がりの私はニットが暖かくてお気に入り。


 電車の都合上というのもあるけれど、気合の入りまくった私は約束の時間より1時間くらい早くついてしまった。しかーし!私には最高のアイテムスマホがあるので時間を潰すなんて造作もない。スマホのアプリを使って早速お絵描きタイム。流石にiPadとか買うお金はないからね。指でチマチマとお絵描きです。

 コツを掴むのに時間がかかったけど、今では指でもそれなりに思い通りのイラストが描けるようになってきてかなり楽しい。


 駅中とはいえ、イラストを描き始めれば時間はあっという間に過ぎていった。


「あ、まいちゃん……」


 私の名前を呼ぶ声が聞こえ顔を上げると、そこには実世ちゃんがいた。黒を基調にした感じでちょっといいとこのお嬢様っぽい感じの服装だ。


「実世ちゃん。おはよう」


「あ、うん。おはよう。ふふふ……」


 そして無言。

 実世ちゃんと二人きりになるの初めてで何を話したらいいのかわからない。実世ちゃんすっごいいい笑顔してるけど相変わらず目はあわせてくれないし、何話すのが正解? 漫画とかだとデートのときは服装褒めたりしてるし、とりあえず見た目から話題つくればいいのかな。


「えっと、実世ちゃんの服、上品な感じがしていいね。可愛い」


「ありがとう。まいちゃんも凄く似合ってる。世界一かわいい……」


「そんな、大げさだな~」


 世界一なんて言われると、かなり恥ずかしくてちゃかすと、さっきまで目を合わせてくれなかった実世ちゃんが急に眼を大きく広げてグイッと一歩近づいてきた。え、何!? 私何かまずいこと言った?


「そんなことない。まいちゃんは世界一可愛い。その服装も清楚でまいちゃんの可愛さを余すところなく引き立ててる。もちろんまいちゃんなら何を着ても可愛いんだけどね。特にその白いニットはまいちゃんの可憐さと儚さをグッと引き立ててもはや天使なんじゃないかと思うくらいだよ。ね、写真撮っていい? 一枚だけで良いから。写真に収めて神棚に飾って毎朝、毎夜、いや、毎秒でも拝んでいたいくらい尊い。もう好きって言葉じゃ私の思いは表せない。愛してるでも足りないくらいだよ。スマホのカメラじゃまいちゃんの可愛さを完全にはとらえきれないけど少しでも形に残したくて」

 

 あ、やばいやつだこれ……。早口で一度も目を反らさず言われると流石に怖さが勝った。

 誰か、誰か早く来てっ。

 

「あっ、まいちゃんとみよちゃんもう来てる~」


 女神の声ようなが聞こえ勢いよく声のした方を見るとそこにはももちゃん、めぐちゃん、ことちゃんの3人がいた。

 三人が来たからか、先ほどまでの勢いが嘘かと思うほど静かになった実世ちゃんに内心ホッとする。助かった……。

 

 実世ちゃんには少し悪いけど、私の心の安寧のためももちゃんたち三人を間に挟ませてもらった。流石に追ってまでは来ないみたいで少し安心。二人きりにさえならなければとりあえず大丈夫そうだ。

 

 意識をももちゃん達の方へ移すと真ん中のももちゃんが両端の二人と腕を組んでいて、仲良しなのが伝わってくる。

 まぁベタベタするのが苦手って言ってたことちゃんの顔は少し死んでるけどこれもご愛敬だね。


「三人は一緒に来たの?」


「うん。めぐとは家が近いって話したけど、ことちゃんもいつも同じ駅だから一緒に電車乗ってきたんだ」


 ということはいつも一緒に登下校してるのか。学校からバス停まではわりとみんな一緒だけどそのあとはバラバラだから知らなかった。三人で下校できるのちょっと羨ましいな。


 

 それにしても、初めて見る三人の私服は三者三葉という言葉がピッタリなくらいバラバラで見ていて楽しい。


 ももちゃんは想像通り、白を基調にして女の子らしくてかわいらしい服装。

 一方ことちゃんは、オーバーサイズな服をかっこよく着こなしている。

 そしてめぐちゃんはというと……。

 

「まいちゃんもやっぱり気になるよね! めぐにはいつももう少しオシャレに気を使いなさいって言ってるんだけどね~」


 チノパンと薄手のパーカー一枚。お世辞にもオシャレとは言えない感じの恰好だ。


「オシャレとかよくわからないし、着られればいいかなって」


 その気持ちもわからなくはない。というかよくわかる。オシャレ難しい。最近の若者は何着てるの?私も最近の若者なんだけどさ、全然わからない。それにあんまり外出しないと余所行きの服なんて滅多に着ないから数も増えないんだよね……。

 

「もう。せっかく可愛い顔してるのに勿体ないよ! 今度わたしがコーディネートしてあげようか?」


「いいよ……桃さんが選ぶと可愛すぎて私には似合わないから」


「えー行こうよ! みんなでめぐの服コーディネートしあうのも楽しそうじゃない?」


「あぁ、それ面白そうじゃん。うちもめぐに色々着せてみたい」


 確かにいろいろな格好してもらうのは楽しそう。私も勉強になるし。


「私も行きたい。かも」


「ほら、まいちゃんも行きたいってよ?」


 うるうるお目目で、おねだりするももちゃん。やっぱり可愛い。

 これに即答しないなんてめぐちゃん相当耐性がついてるんだろうな。私ならイチコロだよ。


「ねぇねぇ、めぐ~」


「そ、それよりほら、あそこにいるのあずさんとしばさんじゃない?」


 あ、あからさまに話反らした。

 しかし、あまり無理強いするのもよくないしね、ももちゃん、ことちゃんはまだ納得いってなさそうだけど、とりあえずめぐちゃんが指差した方を見てみる。

 そこには確かに二人の姿があった。あったんだけど、二人で女の子に話しかけてる。


「またナンパしてるよあいつ等」


 ナンパっ!? 三人ともとくに驚いく様子はないし、多分いつもの光景なのだろう。


「休みの日にあの二人みかけるとさ、いつも違う女連れてるからな。根は良い奴らなんだけどねぇ」


「まだみんな集まってないし、多分みなちゃんがどうにかしてくれるから放っておいていいよ」


 呆れたような目をしながらももちゃんが言う。いつもニコニコで愛嬌しかないももちゃんをここまで呆れさせるなんていろんな意味ですごいのかもしれない。



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