14.
ラストのお話です。
のに
短いです…。
前回と繋げて書けたのでは?
ってくらいに短いですが、ラストが中々決まらず…。
では、宜しくお願い致します。
「あー、今日はルーシェに何を話そうかな…。 一方的に話すのはネタが無くなってくんなぁ」
今朝も出勤前の日課の為に裏庭へと向かう。
リカルドは自分が話している事はルーシェに伝わっていると信じていた。
何故なら、話しかければ至近距離から強くルーシェの香りがする。
だが、姿が見られない事に少し焦れ始めていた。
早く会って、声を聞いて、抱きしめたい。
もどかしい日々が、後どれくらい続いたら可愛い俺のルーシェに会えるのか…。
それとも森の精霊は返さないと言った。
もうリカルドは会えないのだろうか…。
苛立ちが混ざりながら、どかどかと裏庭へと足を進める。
すると窓の外に大きな木と緑が飛び込んで来た。
まだ距離はある。
立ち止まり、目を見開いてもう一度確認するが目に飛び込む背の高い木々。
「…、嘘だろ!?」
待ち望んでいた森の復活。
とっ、とっ、と足を前へ進めると徐々にスピードを上げ走り出す。
期待に高まる胸は張り裂けそうで、黙っていられない。
「ルーシェ!! ルーシェ!!」
いつも話しかけている森の入口に視線を向ければ人が立っているのが分かる。
「ルーシェ!!」
「リカルドさん!!」
ルーシェもその場で待っていられず走り出す。
気持ちが急いて足が縺れる。早くは走れないが確実に二人の距離が縮まる。
ルーシェが手を伸ばせば、リカルドが掬い上げるように両脇に手を滑らせしっかりと抱きしめた。
リカルドは少し屈むようにして彼女の肩と腰をぎゅっと掻き抱く。
ルーシェも離れたくないと思いを込めてしっかりと両手でリカルドのたくましい背中を抱きしめた。
「リカルドさん!! ごめんなさい、 ごめんなさいぃ…」
「ルーシェ…」
リカルドは何も答えず、ルーシェの首元へと顔を埋めるとすぅっと大きく息を吸った。
自分の手元に戻って来たことに安堵し、ゆっくりと体を離し顔を確認する。
そっとルーシェの頬に右手を添えるとぼんやりと眺める。
ルーシェは頬に添えられた手に、自身の手を重ね柔らかく握り込む。
涙で大切な人の顔が良く見えない。
「リカルドさん、ご、めんなさい。 私、たくさん後悔したの…」
「何を? 何を後悔したんだ? 獣人国に来たことか? それとも俺との結婚のこと?」
話しを遮るようにリカルドは自分の質問をする。
どうしても悪い方へと考えが行ってしまう。
「違うわ! 違う…。 私はリカルドさんが大好き! 絶対にもう離れたくないって思ってる。だからそっちの後悔は一欠けらも無いの。 そうじゃなくて、こんなに大切にして貰ってるのに、リカルドさんの過去にやきもち焼いて拗ねて嫉妬して…。とても後悔してる。気持ちの整理をしたくて離れたのに、結局毎日リカルドさんの事考えてた。
でも、私はリカルドさんと未来を一緒に生きたい。
こんなに拗ねてしまって、やきもち焼いて、嫉妬して…。酷い独占欲だよ。恥ずかしい。
本当にごめんなさい!!
リカルドさん……、こんな面倒くさくて…、私の事、嫌いになった?」
話しを聞いていたリカルドの美しく綺麗な顔がくしゃりと歪み薄っすらと目に涙が溜まる。
「俺の過去がお前を傷付けて、ごめんな。 ルーシェを嫌いになるなんて有り得ないよ。俺のとこに戻って来てくれる? 今後は不安になったら互いに何でも話そう。問題は二人で解決したいと思いますが、 どうですか?」
「賛成です」
小さく手を上げる。
するとその手をギュッとリカルドの大きな手が包み込む。
「ルーシェちゃんは、出会う前の俺にまで嫉妬しちゃうくらい俺が好きなのかぁ~。可愛い奴だなぁ、本当に。 そうか、そうか。そんなに俺が好きならしょうがないよなぁ~」
それを聞いてぼっと火が付いたようにルーシェの顔が赤くなる。
ははっと笑い、長身のリカルドが覆い被さるように顔を近づけると軽く唇同士が触れ合った。至近距離で互いを見つめ合う。
リカルドの顔から笑みが消えて真剣な表情で見つめて来たかと思うと、今度は噛み付くような激しいキスをされた。
顎を上に持ち上げ、親指で唇を下げるとすぐさま舌が入ってくる。
「んっ…、ふぅ、う…ん」
「はぁ…、愛してる、ルーシェ…」
言葉を紡ぐ間もずっと激しくキスを繰り返す。
「あっ、…まっ、て…」
「……、待てない」
ちゅっ、ちゅく。と舌を絡めると水音が響く。
足に力が入らなくなり、崩れ落ちそうになっても力強く支えられキスが繰り返される。
リカルドの胸を小さく叩く。
すると、じゅるっと音を立てて舌を吸われた。
余りの羞恥で気が遠くなりかけた時、リカルドの唇が首をすべって鎖骨の下をチュッと吸い上げた。
チリッと痛みが走ると限界が訪れる。
「り、り、リカルドさぁーん! もう駄目です!! これ以上は無理ぃー」
鎖骨辺りを舐めていたリカルドが顔を上げるとニヤリと笑った。
「あれ? もうギブアップ? じゃ、今日はこれで終わろうか。これからは毎日少しずつ俺の愛を知って貰おうかな」
「えっ? 毎日?」
「そっ。 毎日」
毎日、こんなに蕩けさせられたら自分はどうなってしまうのだろうか。
ちょっと怖い気持ちと、多くの期待。
リカルドが差し出す手を握る。
「あ、そうそう。今日の昼に俺の職場に来れる?」
「えっ? 急ですね。大丈夫ですよ?」
「じゃ、昼休みに二人で婚姻届けだけ先に出して来よう」
「えぇ!? 昼休み!?」
「えっ! 昼じゃなくて朝がいい? でも仕事がなぁ~」
「いやいやいやいや。急ですね!?」
「急じゃないよ。俺の気持ちなんてとっくに決まってるからな」
「私の気持ちも…、 決まってますよ?」
「じゃ、昼な」
「ふふっ、はい!」
二人は日常へ戻るべく屋敷へと足を進めたのであった。
森は全てを知っている。
二人が番な事も。魂が同じ色で二人は一つ。流れ着いた狼の元へと、出会わせるべくして彼女を向かわせた。
その後、二人の間に割って入る者は現れない。
森の精霊に愛されし花嫁は強い獣人に守られ幸せに暮らす。彼らの出会いはやがて本となり語り継がれた。
そして後へと続くロブレン家は代々屋敷の裏庭の森に守られている。
【おまけ】
ある晴れた日の午後、ぽかぽかと温かく陽気も良いので庭にテーブルと椅子を出してお茶の時間をしている。
「今後、俺の気持ちを疑うなんて時間の無駄だから止めろ。いつだって俺の中心はお前で回ってるんだから」
そう話すとテーブルの皿から一つクッキーを手に取る。
自分の口に運んでサクッ一齧りすると、残りのクッキーをルーシェの口元へと押し付けた。
「あ、あの。クッキーは自分で食べれるよ? しかもリカルドさんの膝の上に座って食べさせて貰うなんて、赤ちゃんか介護みたいじゃないかなぁ!? ふ、夫婦ってこれが普通なの!?」
「………。 あぁ、普通だ」
「間があった!! たくさんあった。嘘だ!!」
「ルーシェー。こっち向きな」
頬を人差し指と親指で挟むと強引に目線を合わせてくる。
「な、何ふんのよぉ~」
頬を押されると唇が開いて突き出したようになってしまう。
正直、変な顔になるから止めて貰いたい…。
ちゅっと軽くキスを落とした後に上唇をちゅっと吸われた。
「ふっ、クッキーの甘い味がすんな」
蕩けた笑顔で自身の唇を親指で拭うリカルド。
………。
うちの旦那様の色気が半端なくて色々と無理です。