8話 結局カッコいい
ゴブリンはこの数で攻めるのに矢を必要としないと考えたのか、全員こん棒を装備してラルフににじり寄っていく。
ラルフはそんなゴブリン達と戦う決心を固めたのか剣を構えると直ぐ様攻撃を仕掛けた。
「うらああああああっ!」
ゴブリン達に飛び上がりながら突っ込み始めるラルフ。
「破れかぶれ……でもこれはチャンス!『5ランクアップアビリティ・ライトアームパワー』」
私は急いでスキルを発動して自分の右腕の攻撃力を強化した。
自分の右腕がビキビキと音を立て膨らんでいくこの瞬間は何度やっても慣れない。
けど、5ランクアップした私の腕なら――
ドンッ!
「ぎぎっ!?」
地面に叩きつけられた私の腕を中心に発生した振動がゴブリン達の足元にも伝わり、その体勢を崩す事が出来た。
しかも私のいる場所から一直線に地面が割れ、10匹程のゴブリンがその溝の底まで落ちてくれた。
中には溝に身体を挟まれて動けないゴブリンも……5ランクアップはちょっとやりすぎたかも……。
スキル名にもなっているランクアップというのは自分のレベルが上昇した際に実際に成るステータスを今のステータスに上乗せするもので、1ランクアップで10数レベルアップ分の強化が出来る。
一応自分に掛ける場合は10ランクアップまで発動する事が出来るけど、その反動も大きいのよね。
5ランクアップでも全身に使うとしんどいから基本的には部位事の使用がちょうどいい感じ。
「ぎっ――」
「地震? なんにせよラッキーだ」
ラルフはゴブリン達の異変に気付き、切り殺した一匹を踏み台にして次のゴブリンの元まで跳び首をはねた。
殺された仲間と溝に落ちた仲間を見た他のゴブリン達はその光景にわたわたし始め……なんというか、殺したい放題って感じね。
「――ぎ、ぎぎ……ぎぃいいい!」
――ラルフがゴブリン達をあらかた殺すと、残された何匹かが『巣』に戻って行ってしまった。
仲間を呼ぶつもりなのか、はたまたただ逃げただけなのか……。
「ふぅ。大きな地震みたいだったけど助かった。大きな音が聞こえたから震源は近いのかもしれないけど……家が心配だし今日は一旦帰るか」
ラルフはここに目的のモンスターがいないのか、動けないゴブリンを放って置きながら殺したゴブリンの耳の回収を始めた。
そろそろ帰るみたいな事も言っていたし、取り敢えずは安心かな――
「ぎ、ぎぎぎぎぃ!」
安堵して胸を撫で下ろしていると洞窟からゴブリンの鳴き声が聞こえてきた。
その声色は何かに怯えているような……。
「ぎぃっ!」
声の主であろうゴブリンが勢いよく飛び出して来た、かと思ったけどそれはゴブリン本体ではなく――
「『巣』の主、このゴブリンチームのリーダーかしら?」
ゴロンと地面に転がるゴブリンの頭。
そしてのっそりと洞窟から出てきたのは、ゴブリンマージを口に咥え、明らかにご立腹といった表情のジェネラルゴブリンだった。
「はは、き、来たな……。初の個別依頼達成の為に大人しく死んでくれ」
ラルフは対面したジェネラルゴブリンに足を震わせながらも、自分を鼓舞する様に強気なセリフを吐いた。
こういう決して引かない態度にちょっとクサイセリフをさらっと言ってしまう所――
「カッコいいって思っちゃうのよねぇ」