4話 制度
「はぁ、疲れた……」
「お疲れ様。で、結局ラルフには声を掛けなかったのね」
私はあれからずっとラルフの後を追って……ラルフが町に戻ったこの時間に私も町に戻る事が出来た。
そして戻るや否や私は酒場に向かい、サラに事の顛末を話していたのだった。
「うん。ラルフが強くなるまで、約束したのと同じ形になるまでは見守っていく事にしたわ。その方がラルフ気持ちを傷つけないだろうし……なんていうか再会した時ロマンチックじゃない?」
「うーん、でももしリーナが30歳、40歳、それ以上になっても強くならなかったら……」
「大丈夫。今日1日バフを掛けてあげただけでゴブリンを20匹くらい倒したのよ。きっとレベルもかなり上がってるわ」
この世界ではレベルというシステムが全ての生物に内包されている。
攻撃力、防御力、敏捷性等のはレベルが高くなるにつれて上昇し、スキルなんかもレベルによって習得する事がある。
レベルは筋トレなどのトレーニングでも上げる事は出来るが、戦闘によって相手からダメージを与えられた時、ダメージを与えた時、そして生物を殺した時の順に上がりやすい。
特にレベルの高い生物を殺した時は一気にレベルが上がる事もある。
そもそもレベルアップというのは『経験値』というポイントが付与されて起こる事象で、これらの順番や殺した生物によってレベルの上り幅が違うっていうのは得られる『経験値』の違いによるものだ。
ゴブリンを殺した時の『経験値』は私にとってはそこまで高くないけど、レベルがまだ低いはずのラルフからすれば相当だったはず、よね……。
「それならいいけど……。ラルフって冒険者になったのは結構早かったし、なんだかんだパーティーでそこそこの数のモンスターは討伐してるはずで……そんなに簡単、ではないかもだけどレベルが上がるものなのかなぁ」
「普通なら上がってるはずだけど……。そうだよね、ラルフも15年間ずっと頑張って、それでもあの強さだったわけなんだもんね」
「そうなのよねぇ。あれはもう異常よ。『鑑定眼』でラルフのステータス見てみたいもんだわ」
「『鑑定眼』持ちはギルドが高い給料で抱え込んでて、しかも『鑑定』の価値を高める為にギルド職員は無暗に『鑑定』を行う事を禁止されているのよねぇ」
ステータスを知るにはギルドで鑑定料を支払わないといけない。
これが結構高値で、新米冒険者には中々手が出せないものになってしまっている。
ステータスを見る事が出来ればもっと効率よく、ラルフをSSS級冒険者まで導いてあげる事も出来るかもしれないんだけど……。
「あれでしょ、鑑定したステータスを口外したギルド職員はバレるとクビっていうだけじゃなくて、そのスキルを使えなくさせる為に記憶を消されるとか……」
「冒険者ギルドの制度がこの国でも同じだとすればそれは間違いないわ。総本部から運営状況を調査する人がこの町にも来るでしょ?」
「ええ。確かちょうど半年前に来たはずよ。確か金髪のオールバックの……」
「半年前で金髪のオールバック……。ふふっ。これは運が私に向いてるかもしれないわ」
「? リーナ、それってどういう事?」
「SSS級冒険者の人脈と権力の使いどころって事。今日は遅くまで付き合ってもらってありがとう。勘定はここに置いておくわね。お釣りはいらないわ」
私はテーブルに金貨を1枚置いて酒場を後にすると、隣にある宿屋で部屋を借り、死んだように眠りにつくのだった。