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3話 こっそりの決意

「ぎぎゃっ!?」


 爪を折られたゴブリンはまさかの反撃に動揺し、怯えるようにして後方に跳んだ。


 その様子をラルフは驚いた様子で見送る。


 折角のチャンスなんだから追撃して欲しかったところだけど、ラルフは自分の身に起こっている現象を頭の中で整理するので一杯みたい。


「動きがはっきり見える……。頭でしたい事と身体がリンクして……。嘘みたいに戦いやすい」

「ぎぎっ」


 自分の身体を不思議そうに見回すラルフ。


 ゴブリンはそんなラルフを警戒して、一気に攻撃を仕掛けるのではなくじりじりと間合いを詰めている。


「これなら――」


 ラルフはギュッと持っていた剣を握るとあっという間にゴブリン戸の間合いを詰めて剣を振りかざした。


 ゴブリンは怯えからなのか、それを大袈裟に躱そうと体を右に逸らす。


 振り下ろされ始める剣とそれを躱そうとするゴブリン、そして……。


「ぎぎっ!!」

「――っし!」


 その行動を読んでいたかのように放たれたラルフのローキックがゴブリンの横っ腹を捉えた。


 剣での攻撃はフェイントで、本命は蹴りによる攻撃だったみたいだ。


 当然あの速さで走れる脚力で放たれたローキックはゴブリン程度の防御力を軽く上回り、辺りには骨の折れる音が響いた。


「当た……った。脚も身体もいつもより軽い」

「ぎ、ぎぎ……」


 ゴブリンは腹抱えたまま地面に横たわり、命乞いをするかのようにラルフに向かって声を発する。


「……ありがとう。たぶん戦闘中お前のお陰で『レベル』が上がった。だから俺は感謝を込めて……一思いに殺してあげるよ」


 ゴブリンの元まで近づいたラルフはゴブリンの腹に剣を突き刺すと、そのまま引き裂くように剣を薙ぎ払った。


 血飛沫が舞い、返り血を浴びたラルフ。


 もの悲しいセリフとは打って変わってラルフの口角は上がり……そして、その目からは涙が零れている。


「やった……。やったよ……俺、初めて自分の力でモンスターを倒して初めてレベルアップ出来たんだ……。スタートしたんだ、俺のあの日の約束、あの日々を取り戻す戦いが、やっと……」


 涙を溢しながら喜ぶラルフに今更『私がスキルでサポートしてあげたからよ』、なんてことは勿論言えず、私は草影に隠れながらその姿をただただ見つめた。


「リーナ……」


 呟かれた自分の名前に大きく胸が鼓動した。

 

 

 私は『お互い強くなって今度会ったら結婚しよ』って約束を叶える為に強くなった。それなのにラルフは弱くて、パーティーから追放までされて……。でも、その思いは変わってなかった。私もそんなラルフの事がやっぱりまだ好き。

 

 好きだから、ラルフが強くなるまで、納得するまで私は待つ。


 でも……。


「だらしないあんたの為に仕方なくこのSSS級冒険者で世界最強なんて言われてる私が……ラルフ、あんたをこっそりばれないようにSSS級冒険者にして成り上がらせてあげる」


 鼓動にかき消されてしまいそう程小さな声でそう呟くと、私は婚約者が強くなる為のサポートに徹する事を胸に決めたのだった。


「あっ! でもバレちゃ、元も子もないから……。よしっ!」


 腰に付けていた小さめのポーチから私は目元を隠す為の仮面を取り出し着用した。


 隣国にいたときはといろんな人に声を掛けられて、それが嫌でこれをずっと付けていたのだけど……まさかまたこんな形で使う事になるんて思いもしなかったな。


「ってどこいくのよラルフ!」


 ラルフは私が仮面を付けている間に再び走り出し、私はそれを必死に追いかけるのだった。


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