第八話
実力試験の翌日、重たい身体を引き摺って学園まで向かう。ブレスレットに魔力を込めれば、振り分けられたクラスが表示された。
上からA、B、C、Dと四つある内のBクラス。あの試験結果にしては上々だ。教室に行けば黒髪黒目の少年も二次試験の時の少女も居らず、ほっと一安心する。そっと他のクラスを覗いてみれば、少年はA、少女はCに居た。Dクラスではないということは、少女は三次試験でまあまあな成績を残せたのだろう。
担任が教室に入ってくる。三次試験の時の教師だった。まだ二十代ぐらいだろうか。黒縁眼鏡を掛け、如何にも生真面目だと言わんばかりの雰囲気を醸し出している。
「名前はマーティ、二十七歳、男、よろしく。」
それだけ言うと今後の授業の説明に入った。
「先生、俺達の自己紹介は?」
やんちゃそうな少年が説明を遮り立ち上がって質問した。マーティ先生にギロリと睨み付けられた少年は蛇に睨まれた蛙のように硬直している。
「質問がある人は先ず挙手をしてください。」
「ご、ごめんなさい。」
少年はそれだけ言うとそろそろと座った。
「貴方方の自己紹介は不要です。必要があれば各自で勝手に行ってください。さて説明に戻ります。」
座学は科目を各自で取捨選択し、実技は必須でクラス毎に行う。
今月はどの座学もオリエンテーションという形で、自由に受けられる。
そこで受けるかどうかを決め、来月から本格的な内容になる。
実技も今月は基礎訓練となる。
そして今月中に各自でメンバーを選び、三人〜五人のチームを組む。
来月からはそのチーム毎で実践形式の授業となる。
来月以降も随時チームは組み直して大丈夫とのこと。
授業の取り方などの説明が終わり、今日は解散となる。この後にある座学を受けたい人は行き、用がない人は帰宅する。何人かのグループに分かれ自己紹介をし合っている。俺はその輪には入らず教室を出る。そしてお試しで初級薬学と初級戦術を受けに行く。
どっちの授業も大変有意義だった。自分の能力はあまり戦闘向きでないからこそ、こういった知識は生き残る為に必要なものだと感じた。このまま帰宅するのが勿体無く感じ、学園内を探検する。先程の初級戦術で教師が言っていた「基礎中の基礎 情報収集」の実施だ。教師は情報が如何に戦況を左右するのかを実例と共に説明してくれたのだ。早速活かさない手はない。だから学園がどうなっているのか、必要時に直ぐ動けるよう情報収集に出掛ける。
食堂、教室、実技室、売店、教員室、学生寮。
一通り巡り、何処に何があるか、どういう経路があるかを把握した。学生寮の側まで行くと、夕飯の良い匂いがしてきた。匂いに釣られてお腹が鳴る。
「今日はもう帰るか。」
早く家に帰ろうと思うも、実力試験で家を空けるからと食材を使い切っていることを思い出した。急がなければ商店が閉まってしまう。ロキは買わなければならないものをリストアップしながら、慌てて帰っていった。