第七話
「まさかブレスレットを奪う者が出るとは。」
「助けるために自分のブレスレットを外す者が出るとは。」
二次試験担当教師達は全ての生徒の行いを監視していた。その上で、この状況すらも生徒達が乗り越えることを望み、放置した。
「どうであれ彼はブレスレットを外したのだ。二次試験結果は変えない。」
二次試験の総責任者である厳つい教師はそう言い放つ。ルールはルール。教師は余程のことが無ければ関与しない。それが此処中央魔術学園なのだ。
二次試験終了後、全員寮に案内された。各自の部屋に通され、夕食も部屋に運ばれた。風呂もトイレも部屋にある。朝食も部屋に運ばれるそうだ。他の生徒に会うことも無いから詳しくは分からないが、ホールまで辿り着けなかった者も全員救助され、もう各自の部屋に居るようだ。
ブレスレットも先程教師から返却された。ブレスレットに魔力を込め結果を確認する。
一次試験 得点 0
失点 0
二次試験 失格
ここまで良いところ無しだ。このままでは最下位のクラスになってしまう。何とか次で良い成績を残さねば。
月を見上げると、月に重なって問題の少年の顔が浮かんだ。黒髪黒目の少年。平気で人を攻撃し、ブレスレットを奪うという凶行も行ったであろう少年。明日も試験内容次第では何をするか分からない。彼には近付かないようにしよう。どうか明日も無事に終わりますように。
窓を閉めベッドに入る。ああ、一日振りのベッドだ。ふかふか具合に感動しつつ、眠りに落ちていく。
実力試験最終日はまたホールに集合だった。紙を配られ、書いてある内容が三次試験だと言われる。横目でチラリと左右を見れば、書かれている内容が違った。内容次第では共闘するも良し、敵対するも良しといったところだろう。制限時間は本日十八時まで。試験開始の合図と共に一斉にホールを出ていく。
一人ポツンと残るロキ。紙を確認し、壇上にいる三次試験担当教師の元へ向かう。鞄から昨日採取した茸と紙を渡す。
学園の敷地内に生えている傘白茸を採って来ること。
ロキは偶然にも一昨日の山で傘白茸を見付け採取していた。そしてたくさん採れたからと半分程は使わず残していた。運も実力の内ってね。こうして学園初の最速タイムを叩き出し、合格となった。
一時間程して黒髪黒目の少年がホールに戻って来た。一番だと思いきや、二番目だと言われる。一番はどんな奴かと教師に問えば彼の映像を見せてくれた。次は負けないと少年は闘志を燃やす。
一方ロキは既に帰宅し、リビングのソファでのんびり寛いでいた。
こうして、長かった実力試験が無事終了した。