第三話
「では一次試験始め!」
教師がそう言うや否や前の方から大きな爆発音が起こった。そして悲鳴が聴こえ大勢の生徒が逃げ惑っている。どの生徒がしたのかは分からないが、場を支配するという意味では大成功だ。逃げ惑う生徒と攻撃する生徒、ブレスレットのお陰で酷い有様にはならないが、そうならない分攻撃する側は手を休めない。まさに阿鼻叫喚、地獄絵図だ。
俺は隠れる場所が無いか床や壁を調べる。だが何処も魔力が巡らされており、穴も亀裂も開かないようになっている。飛んで来た蹴りを避ける。反撃しようと魔力を纏うも、攻撃する直前で手が止まる。相手は防御体勢のまま固まっている。その場を離れ、壁を登る。照明に乗り移り天井も確認するがやはり天井も魔力が巡っている。
銃を取り出し、魔力を籠める。上から生徒を狙う。此処からなら撃ち放題だ。しかし手が震える。引き金が引けない。やはり俺は…。
攻撃が飛んで来たので避ける。飛んで来た方を見ればこっちを見て何やら喚いている生徒がいる。しかし喚いた事で他の生徒に目を付けられ攻撃され始めた。上から見回してみれば、壁際に逃げている生徒と中央で攻撃し合う生徒の二つに分かれている。攻撃し合っている生徒達は壁際にいる生徒にはもう見向きもしていないようだ。そっと壁際に降り、制限時間までじっとしておく。
「そこまで!」
女性教師の声が響く。まだ攻撃しようとした生徒は教師達に抑えられる。
「では二次試験に向かう。全員私に着いてきなさい。」
今度は厳つい男性教師が言った。男性教師はホールを出て行く。生徒達はざわざわとしながらも男性教師に着いてホールを出ていく。
残った教師達は一次試験結果を確認していく。例年通り、失点より得点が多い者、得点より失点が多い者、人を攻撃出来なかった者、何らか要因でブレスレットが外れ失格になった者が出る。この成績を元に、今夜生徒達が過ごす場所が決まる。
「リリアーノ先生、この成績を見てください!」
若い教師が神経質そうな女性教師に結果を慌てて渡す。リリアーノは結果を見て目を見開く。
名前 ロキ
得点 0
失点 0
「これはどう言う事!?」
リリアーノは試験を監視していた教師達に確認する。
「彼は一人並外れた身体能力で攻撃を全て避けていました。」
「彼は天井近くから攻撃しようとしたものの、何を思ったのか攻撃せず、その後は壁際で他の生徒と共にじっとしていました。」
「リリアーノ先生、この場合彼をどこで宿泊させましょう?」
得点も失点も0の生徒なんて今まで一人も居なかった。攻撃を受けない程の能力がありつつも人を攻撃しないなんて…。この試験の目的を見抜いていたかの様な彼の動きに教師一同に動揺が走る。
「彼はーー」