08 「魔力の代わり――という物に興味はありますかね?」
契約に魔力がいる? それは一体どういうことだ?
「旦那様。もしかして奴隷契約は初めてでございますか?」
「……ああ」
「でしたらその顔も納得でさぁ。どれ、私が教えましょう」
男の言葉を簡潔にまとめると――。
魔力を用いた契約すると奴隷に対して様々な枷が付与されるらしい。奴隷が持ち主に反抗するとダメージを与える枷。命令を聞きやすくする枷など。
商人はそれを推奨している。でも俺には魔力炉がないので魔力が生み出せないし……。
後一つだけ魔力結晶があるから契約は行えるがそれだけの為に使いたくない。子どもを買ったのは助ける為であって貴族共と同じく愛玩で買った訳じゃないからだ。
「これで分かりましたかな? では、契約しましょうぞ」
「それなんだが……悪い、出来ない」
「何故です? しないと私共も困りますが……」
「ちょっと訳ありで。俺は魔力を生み出せないんだ」
そう言うと驚愕する商人。
「なんと! 魔力が生み出せないなんて……それは大変ですなぁ。あい分かりました。であれば血を使った契約にしましょう」
……血? なんだか物騒だな。
魔力の代わりに血を使う契約か。聞いたことないが……どういう仕組みなのだろうか。
「何、魔力のものより簡単でございます。奴隷に傷をつけ、そこに貴方様の血を入れるだけ。普通の契約の何倍も効果がありますが……自国の技なのであまり口外していないんでさぁ」
なるほど。確かに異国の魔術なら知るはずもないか。
「どうです?」
この子にそんなことをしたくないが……断ったら何かと言われそうだな。
大人しく従うとしよう。別の街で解呪すればいいことだし。
「分かった。ではそれをしよう」
「ありがとうございまする。では、こちらを」
差し出されたナイフを手に取る。指先に切っ先を当てると血が漏れ出た。
「こちらも準備出来ましたぜ」
男が子どもの腕に傷をつけている。クソ……ここは我慢だ。
子どもに近づき、出来た傷に血を一滴流す。すると淡い光が子どもの身体を包んだ。
「これで契約は完了でさぁ」
終わり? なんだかあっけなかったな。
「本当に終わりなのか?」
「ええ、本来であれば目に見えて分かりますが……内側から枷をかけたので見えずらいでさぁ」
「……なるほど」
こうなった以上この子の枷を外すには骨が折れそうだ。
取りあえず契約も終わったし、さっさとこいつから離れよう。枷を外すことは後で考えればいい。
「ありがとうな。では俺達はこれで」
子供の手を引いて馬車から離れようとすると、
「ちょいとお待ちを」
男が大声を上げた。
「……今度はなんだ」
「へぇ旦那様。魔力がないとおっしゃっていましたよね」
「それがどうした」
「魔力の代わり――という物に興味はありますかね?」
俺は耳を疑った。