表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

06 「すみまぜん‼」

 彼方から聞こえる馬の鳴き声、蹄の音。

 ……間違いない!


 疲労しきっている身体のどこに力が残っていたのか、といわんばかりの脚力で音のする方へダッシュする。

 だんだん近づく音。馬の他にも車輪が地面を削る音も聞こえる。


 これは(まさ)しく――。


「馬車だ!」


 操っているのは商人に違いない。きっと大量の商品というか食料を積んでいるだろう。

 幸い金はある。少々吹っ掛けられるかもしれないがそれでもありがたい。


 音の正体が向こう側から現れる。俺の予想通り、ターバンを巻いた男が馬車を操り、手綱を引いていた。


「すみまぜん‼」


 道のど真ん中ではちきれんばかりに喉を震わせる。

 ここで気付いて貰わなければ本当に餓死する。見栄もくそもあるか。

 俺の声に驚いたのか、馬車が目の前で急停止する。馬の唾液が降りかかるが気にせず向かう。


「ぜぇ……すみません! 何か商品は売っていますか?!」


 ここで俺は間違いをする。商品ではなく、素直に食べ物と言えばよかったのだ。

 男は見開いた目を引っ込め、直ぐに嘲笑した。


「ああ、勿論売っているさ」


 男が馬車から降り、俺の目の前に立つ。

 この辺りではまず見かけない服装。ターバンと上下が一体した服。まるで女が着る服みたいだ。

 それに黄色い肌も見た事が無い。王国出身の人はほとんど白か日に焼けた土色だ。


 明らかに異質な格好だが……今は食料が先だ。さっさと買って離れよう。

 男の手に従って馬車の裏に回る。

 其処にあったのは大量の食べ物ではなく――。


「運が悪かったな。既に取引が終わってこいつしかいなんだ」


 狭い部屋にポツンと、一人の子どもが座っていた。


「えっと……食べ物は?」

「何言ってるんだ。俺は奴隷業者だぞ。そんな物、自分達の分しかない」


 だよなぁ……。

 天使だと思っていた存在は一気に悪魔へと姿を変えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ