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文化祭 アイデア編~俺には関係ないんで~

「はーい、何か案がある人~」


 その日の帰りのホームルーム。彼らのクラスではついに陰キャ涙目イベントの開始がカウントダウンされた。ちなみに今は6月だが、彼らの学校では7月にそれが始まるのである。そう、選ばれた者のみが謳歌することができる最低最悪の行事、文化祭である。文化祭......。畑山にとっては苦痛としか言えない行事であった。もちろん、他2人も同様である。何が苦痛かは始まれば容易に理解できるであろう。


「喫茶店とかどう?」


「劇がいい~」


「お化け屋敷!」


 様々な意見が教室で飛び交った。このクラスは雰囲気が悪いため、このように活発に意見が出てくるのである。もちろん、陰キャ3人衆はこの事態を静かに見守っていた。自分たちの意見などどうせ通らないことが分かっていたからである。


 文化祭実行委員は黒板に出されたアイデアを書いていった。喫茶店、劇、お化け屋敷、販売、ビデオ制作がアイデアとして挙げられていた。


「なるほど、なるほど~。みんな色々案を出してくれてありがとう~。じゃあ、明日までに考えておいてね~」


 文化祭実行委員でイケイケ5の一角、元原光はそう告げ、ホームルームは終わりを迎えた。一部始終を静観し続けた陰キャたちは帰宅しながらその話をしていた。


「で、結局どうするよ?」


 畑山は秀男と太に問いかけた。だが、秀男はどうでもいいといった表情を浮かべながら、


「どうでもいいんじゃない?」


 表情そのままの言葉を吐いた。実際、その通りであった。彼らがやりたいことは確認するまでもなく販売だったが、悪質な印象操作によって販売は地味だとかいう印象付けがされているため、避けられがちなのだ。地味なクラスだったらそれで決まりだったかもしれないが、『イケイケ5』がいる以上そんなクラスにはならないのだ。したがって、彼らが票を入れたとしても、必ず多数決で負けてしまうのである。


 彼らにやれることは何もない。考えても無駄だと理解している彼らはすぐに別の話題に移った。



 次の日の授業と授業の合間の休憩時間。畑山が秀男を仲間に引き入れようと名演説をかましていたところにある人物がやってきた。それは彼らにとって天敵かつはるか格上の存在であった。


「ねえねえ、ちょっといい?」


 その突然の言葉に畑山はくだらない演説を辞め、無視し続けて携帯ゲームをやっていた秀男ですら顔を上げた。その人物の問いかけを無視するわけにはいかないと本能的に悟っていたからであった。その人物、元原光はさらに続けた。


「畑山君たちはさ~、文化祭で何するかもう決めたの?」


 彼らは思わず顔を見合わせた。今まで話しかけてこなかった人物が自分たちと話をしようとしているのだ。しかも帰りのホームルームで分かることだというのにわざわざ聞いてきた理由が彼らには理解できなかったのだ。沈黙は続く。誰が答えるべきか良く分かっていなかったのだ。だが、彼らのリーダーを自負している畑山が沈黙を破った。


「は、販売かな」


 実に彼らしい答えであった。いや、彼らしいというよりも陰キャらしいというべきか。若干噛みつつ、聞かれたことにしか答えない。これだから陰キャは陰キャなのである。それに対して、元原は


「へ~そうなんだ。確かにアイスとかたこ焼きとか売ってみたいよね~。『らっしゃいませ、お客様!ご注文は?』みたいな感じで接客するの楽しそう~。畑山君たちもそういうのやりたいってことだよね!」


 彼女は大きな勘違いをしていた。別に畑山たちはそういったことをしたいわけではない。ただ拘束時間が短そうで、色々回りたかったから選んだに過ぎなかった。だから、畑山はその旨を伝えようとしたが、


「う、う~ん、確かにそう言われれば、そんな感じがするな~、なんて......」


 彼はかなり煮え切らない答えを出した。彼は散々言った通り、視界に入るだけで鳥肌が立つくらいに

イケメンと美少女が憎たらしいと思っていた。それがこの有様である。彼は思うだけしか実際のところできなかった。


「へ~そうなんだ。気が合うね!」


「そ、そうだねアハハ」


 誰でも分かるような愛想笑いを浮かべた畑山だったが、早くどっかに行ってほしいと思っていた。陰キャにとって、美少女との会話は苦痛以外の何物でもないのだ。元原は人差し指を顎に当てつつ、顔を少し上に傾けて今までの会話の流れをぶった切った。


「ところでさ、最近何かいいことあったの~?だいぶ雰囲気が明るくなったような気がするんだけどさ~」

 

 秀男には思い当たる節があった。というのも、彼ら2人は最近大声で良く喋っていたからだ。以前は誰にも聞かれないようにこそこそ話していたのだが、彼らが例の野望を企てて以来、テンションが上がりすぎて大声を出すことが多くなった。それのせいで目をつけられてしまったのだ。だが、この問いから察するに彼らが何をしているかまでは分かっていないようだ。そう考えた秀男は安心した。自分が彼らのようにバカげた作戦に参加しているとは思われたくなかったからだ。


「ああ、実はイケメンや美少女をこの世から抹殺するっていう作戦に太が成功して盛り上がってたんだよ」


「え」


「え」


「?」


 !? 秀男は驚きのあまり、持っていた携帯を落としてしまった。太もあんぐりと口を開け、畑山は喜色満面の笑みを浮かべた。そして、元原は疑問を浮かべつつ微笑んだ。




 なぜ言ってしまった、畑山!!彼らの戦いはこれで終わってしまうのか?次回、文化祭編が本格的にスタートするかもしれない!!

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