表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
94/384

6-3.


 どんなに気を付けていても一方に偏れば、他方は疎かになってしまうのが仕方のないことだろう。

 この半年間、NIOHチャンネルに全てを注いできた天羽にもその付けが回ってきてしまう。

 切っ掛けは学校の期末試験、試験勉強を疎かにしていた天羽は成績を大きく落としてしまったのだ。

 この期末試験を見た天羽の母親は、怒りの形相で彼女を叱っていた。


「どういうことよ、香! こんな成績を取るなんて、信じられないわ!!」

「この位いいじゃない、別に赤点じゃ無いんだし…。 次は巻き返すわよ」

「そういう問題じゃ無いわ! 香、あなたこの頃おかしいわよ? 休日も部屋に籠る様になって、夜遅くまで起きて何かをやっている。 そうだと思えば一日中何処かに出かけいたり…。

 ご飯の時なんかに学校の話を聞いても何時も上の空、少し前はお友達のこととか色々と話してくれたじゃない…」


 確かに成績は落としたが中の上くらいの成績が中の下に落ちた程度であり、決して天羽が落ちこぼれた訳では無い。

 天羽の地頭は決して悪く無く、彼女自身もこの位の成績は少し頑張れば取り戻せる自信があった。

 しかし天羽の母親が怒っているのは、試験の結果だけでは無いようだ。

 このような試験結果を取る事になった、天羽の現状の生活環境について気にしているらしい。


「別にいいでしょう、周りに迷惑は掛けていないわ。 試験の方は少し失敗しちゃったけど、次は必ず元の成績に…」

「そういう問題じゃ無いの!? 香、あなたは今何をしているの? あなたが嫌がるからこれまでは何も聞かなったけど、もう我慢の限界よ!!」


 これまで天羽のプライベートを尊重して、母親は彼女のやっている事に口出しをしなかった。

 天羽は理解のある母親であることに感謝して、マジマジでのNIOHチャンネルの運営に励んでいた。

 しかし明らかに以前と様子が変わった天羽に対して、密かに不信感を募らせていたらしい。

 それが成績の低下と言う分かりやすい結果が出た事で、天羽に対しての母親の不信感が爆発してしまう。


「今の時期にこんな成績を取っていたら、あなたの将来が心配よ。 もう高校受験も近いんだから、そろそろ準備を始めないと…」

「まだ早いって。 受験勉強なんて…」

「いいえ、あなたには今日から切り替えて貰います。 とりあえず冬休みに入ったら、これを受けて貰いますからね」

「塾の冬季講習!? 困るわ、私は冬休みに用事が…」


 天羽は中学二年生であり、冬休みを間近に控えた今の時期から高校受験の対策を始める者も確かに居る。

 娘の将来を心配した天羽の母親は、娘の生活環境を改善する意味も込めて彼女を塾に行かせようと言ってきた。

 母親から差し出されたチラシを見た天羽は、そこに書かれた講習内容を見て拒絶反応を示す。

 冬休みの期間中、朝から晩まで塾に缶詰めになることなど受け入れられる筈も無い。

 長期休暇と言う自由な時間が取れる機会に、千春と動画の取り貯めする計画がぶち壊されてしまうからだ。


「あなたに拒否権は無いわ。 香、今から準備しておけば、きっといい高校に行けるから…」

「信じられない…、お母さんの馬鹿! 私、絶対こんな物を受けないからね!!」

「香っ!!」


 親としては娘に良い高校に進んで貰いたいと思うのは当然であるが、娘の立場としてはいい迷惑である。

 母親の命令に拒絶した天羽はそのまま、逃げるようにその場から離れて自室へと向かって行った。

 乱暴に扉を開いた天羽は他に目をくれず、そのまま勢いよくベッドの上に飛び込んだ。

 慣れたマットレスの感触を感じながら、天羽は荒ぶる感情のままにベットの上で寝転がる。


「まだよ、まだ終われない。 私たちの存在を、もっともっとみんなに知って貰わないと…」


 ベッドで横になったまま机の方に顔を向けた天羽は、中央に置かれた動画編集用のパソコン画面を見つめる。

 そこには撮影用のマスクを取って素顔を晒した天羽と、マスクドナイトNIOH姿の千春のツーショットが映し出されていた。

 投稿用の動画撮影の合間に天羽が自撮りしたのか、画面は少し傾いており画質もそれ程良くはない。

 しかし天羽はその微妙な写真を美術品でも鑑賞するかのように、何時までも眺め続けていた。











 魔法学部から持ち込まれた協力依頼であるが、最終的に千春はそれを受ける事を決めていた。

 実験の内容は千春の予想とは少々外れていたが、それなりに面白そうで協力する価値が有りそうだ。

 それに未だに真偽を疑われている渡りのモルドンを、わざわざ研究の対象にした魔法学部への興味もあった。


「さて、後は天羽たちと合流だな…」

「○○っ!!」


 何時も通りバイクで一足先に現地入りした千春とシロは、他の参加者を合流するために大学の最寄りの駅に来ていた。

 魔法学部のある大学は最近出来たばかりの新興大学であり、土地が安かったのか都市圏から離れた田舎にあった。

 新興大学の設立に合わせて駅舎も新設されたのか、最寄り駅は真新しい感じである。

 綺麗な駅舎の前でバイクを停めた千春は、携帯を触りながら天羽たちの到着を待っていた。


「NIOHさん! お久しぶりです」

「□□っ!!」

「よう、悪いな。 こんな所に呼び出して…」

「○○っ!!」


 最初に現れたのは星川(ほしかわ) 千穂(ちほ)、使い魔のリューを生み出した魔法少女である。

 以前と同じ少し焼けた肌に少年と見紛うショートヘアの少女は、駅を出てすぐに千春のことに気付いたらしい。

 千春は駆け足で近づいてきた千穂に対して、此処まで来てくれた事への感謝の言葉を述べる。

 仕舞われている鞄からそれぞれ出てきたシロとリューも、千春たちと同じように再開の挨拶を交わしていた。






 かつて千春は千穂のリューと共に、あの渡りのモルドンへと戦いを挑んだ。

 魔法学部の希望により、今回の実験では渡りのモルドンと戦った時の状況をなるべく再現したいらしい。

 そのために千春はわざわざ朱美を経由して、リューと千穂に声を掛けて呼び出したのである。


「お兄さん、今日はよろしく…」

「おう、よろしくな。 …どうした、風邪でも引いたか?」

「…別に平気よ。 あ、リューちゃんとシロちゃんが遊んでいる! しっかり撮っておかないと…」


 同じ電車の違う車両に乗っていたのか、千穂に続いて天羽もすぐに駅から出てきた。

 カメラ映りを意識していてか、今日の天羽のファッション誌に出てきそうなお洒落な格好である。

 互いに声を掛け合う二人だが、その直後に千春は天羽の様子を違和感を覚えてしまう。

 基本的に動画撮影の時の天羽は常に上機嫌であるが、今日の彼女にはその元気が無いように見えたのだ。

 しかし千春の懸念を吹き飛ばすよう、天羽はシロとリューのじゃれ合いに注目して撮影を始めてしまう。

 視聴者受けしそうな映像を撮れた事を喜ぶ天羽の姿に、ただの勘違いだったかと一人納得する千春であった。






 基本的に魔法少女の力はモルドンと上回っており、相性によって苦戦することはあれども負ける事は有り得ない。

 しかしその力関係を覆して魔法少女を倒してしまい、そのクリスタルを喰らことで成長を遂げた渡りのモルドン。

 断片的であるが渡りのモルドンの脅威を把握していた千春たちは、出来るだけの戦力を揃えて戦いを挑んだ。

 マスクドナイトNIOH、シロ、リューという、モルドン一体相手にはオーバーキルな魔法少女三人分の戦力。

 それに加えて現地の魔法少女も戦いに加わり、最終的に魔法少女四人分の戦力が結集したのだ。


「今日はあの時に一緒に戦った子も来るんですか? 確か、マジカルレッドって名前の…」

「否、あの魔法少女とは伝手が無くてな…。 俺たちは渡りのモルドンの件で、彼女に恨まれているみたいなんだ」


 完全に渡りのモルドンとの決戦メンバーを集めるならば、此処にマジカルレッドこと花音(かのん)も呼ぶ必要がある。

 しかし千春たちは当時、渡りのモルドンの出現予測を地元の魔法少女である花音に伝えることなく動いていた。

 地元魔法少女が介入する前に終わらせる予定だったが、予定は予定でしかなく最終的に花音は千春たちの戦いに巻き込まれてしまう。

 花音は情報を出し渋った千春たちに今でも不信感を抱いているようで、彼女をこの場に呼べるほどの良好な関係を築けていないのだ。


「まあ、あの戦いでマジカルレッドが果たした役割は、そこまで大きな物じゃ無かった。 それもあって、今回は代理の魔法少女を呼ぶことにしたんだよ」

「代理…、ですか?」

「あ、来たみたい。 私たちと一本後の電車だったみたいね」

「意外に早かったな。 滅茶苦茶長文で謝ってきたから、もう少し掛かると思ってたが…」


 天羽と千穂が到着してから暫く経った後、千春が花音の代理として呼びだした魔法少女が駅から姿を見せる。

 休日にも関わらず学校制定の制服に加えて、これまた学校指定の地味なコートを纏う眼鏡姿の少女が掛け足で近づいてきた。


「す、すいません、千春さん! 乗り換えに失敗してしまって…」

「気にするな、少し遅れただけだよ。 それより着てくれて助かったよ、佐奈」

「は、はい!!」


 それは少し前に千春と共闘をした魔法少女、NASAこと佐奈(さな)であった。

 佐奈は千春の前に来るなり深々と頭を下げて、本当に申し訳なさそうに遅れたことを詫びてくる。

 しかしこの面子の中で佐奈は一番遠方から来て貰っており、電車一本遅れたくらいで責めされる筈も無い。

 約束通り来てくれたことを感謝する千春に対して、佐奈は安心したのか今にも泣きそうだった表情を緩めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ