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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
91/384

5-16.


 あの偶然訪れた街での呪い騒ぎの事件を解決してから、数週間の月日が流れた。

 当然のように事件の模様は動画として投稿されており、マスクドナイトNIOHの活躍はまた世間に広まってしまう。

 しかしそれから暫くの間、千春は事件に巻き込まれることなく平和な日常を過ごしていた。

 幾ら何でも毎週のように依頼が持ち込まれる程、世間での魔法少女絡みの事件がそこまで多くは無いのだろう。

 千春は久しぶりに魔法少女との戦いから離れられたようだが、別の理由で忙しい日々を過ごしていた。


「"どうもっ! 喫茶店メモリーの通販部門担当の矢城 千春です! 今日の新商品はこちら、千春スペシャルブレンドだぁぁっ!!"

 "俺が喫茶店メモリーで修行した長年の努力の結晶、これならば舌に超えたコーヒー通も納得の逸品です。 まずはお試し版として、限定10個の販売になります"」

「"えぇぇ、お兄さんのコーヒーって微妙じゃありませんでしたか? 前に淹れて貰った奴も、朱美さんが精々40点って酷評されてましたし…"」


 天羽が運営するNIOHチャンネルで、千春がチャンネル主である彼女と漫才のようなやり取りを行っていた。

 動画に映る千春の手にはコーヒー豆が密閉された袋があり、それにはシロの姿が描かれたシールが貼られている。

 よく見ればシールのシロの上には喫茶店メモリーの店名も書かれており、千春はこの商品の紹介を行っているらしい。


「"ふっ、甘いな、俺はあれから随分と成長したんだよ! 実際にこれを朱美に試飲させたところ、60点という高評価が得られたぞ!!"

「"そんなギリギリ赤点を回避した程度の代物を売らないで下さいよ、お兄さん…"」

「"はい、みんな大好き限定品! 早く注文しないと売り切れちゃいますよ。 この商品に興味のある方は、喫茶店メモリーの通販サイトを…"」


 何時も通り顔をマスクで顔を隠した天羽はチャンネル主として、千春の微妙な新商品に突っ込みを入れていた。

 既に例の動画もあって顔が知らている千春の方は、堂々と素顔と本名を出しながら天羽に酷評された商品の紹介を続ける。

 矢城 千春、喫茶店メモリーの通販部門担当として今日も忙しく働いていた。











 話はあの街のでの呪い騒ぎを解決して、千春が地元に戻ってきた所まで遡る。

 千春緊張の面持ちで喫茶店メモリーの扉を開けて、見慣れた店内へと足を踏み入れていた。

 最後に此処に来たのは、自分がバイトを首になると誤解して店を飛び出したあの日である。

 朱美はそれは千春の誤解であると言っていたが、それなら寺下は一体何の話をするつもりだったのか。

 事前に来訪を告げていたこともあり、すぐに千春を出迎えた寺下は単刀直入にその疑問を解消してくれた。


「え、通販ですか?」

「そうだよ。 僕が店でコーヒー豆を売っているのは、君も当然知っているよね?」

「勿論、俺も袋詰めの作業とかを手伝ってるじゃ無いですか。 あれを通販するって言うんですか…」


 最近は中学生たちのたまり場にもなっている休憩室で、千春はテーブル越しに寺下と向かい合って話している。

 独自に配合したコーヒー豆を、お持ち帰り用に販売しているコーヒー専門店はそれ程珍しくはないだろう。

 この喫茶メモリーでも寺下が配合したコーヒー豆を細々と販売しているが、それはあくまで店頭での販売のみである。

 寺下はこの喫茶メモリーのオリジナルブレンドを、通信販売で全国に販売しようと言うのだ。


「僕のコーヒーを家でも飲みたいって言ってくれる人が多くてね、中にはわざわざ遠方からこの店を訪れる物好きも居るみたいなんだ。

 コーヒーだけのために此処まで来て貰うのも悪いし、それなら通信販売で売るのもいいかなって…」

「此処は店長のコーヒーを愛する固定客で持っている店ですからね…。 通販か…、それを俺に手伝えって言うんですか?」


 この今時流行らない純喫茶が生き残っている理由の一つは、寺下が淹れるコーヒーを求める常連客の存在である。

 寺下のコーヒーには人を惹きつける何かがあり、その要因の一つは独自の配合で作られたコーヒー豆に違いない。

 このコーヒー豆の通信販売事業の立ち上げを、千春に手伝ってほしいと言うのが数日前に聞けなかった話の内容であったらしい。


「…この前は本当にすいませんでした! うわっ、こんな話ならあの時に逃げるんじゃ無かった…」

「これも若さって奴さ。 もう僕は気にしてないから、君も忘れた方がいいよ。 新しい動画を見たよ、また大活躍だったみたいじゃ無いか…」


 勝手に解雇されると早合点して店を飛び出した千春としては、まさに汗顔の至りと言った所だろう。

 自然と全力で頭を下げていた千春に対して、優しい寺下は笑って許してくれた。

 その上で呪い騒ぎの一件のことを褒め始める始末であり、千春は穴があったら入りたいような心境になっていた。






 本来ならば食品の通販事業を行うためには、保健所やら何やらの許可が必要になってくる。

 しかし既にその辺りの許可は店頭での販売を行う目的で、既に寺下の方でそれらの手続きが済んでいた。

 千春に任せられるのは商品の販売経路の確保と、商品の発送や顧客対応などである。

 どうやら寺下はこの仕事に集中させるために、新しく早坂 友香を接客担当の店員として雇ったようだ。


「よーし、見ててくださいよ、店長! 俺がこの店のコーヒーを全国に売ってやります! まずは通販用のホームページだな、当然スマホ対応のサイトにしないと…」

「はははは、よろしく頼むよ」


 度量の広い姿を見せられた千春としては、此処で奮起しない訳にはいかない。

 千春は寺下に対して通販事業の成功を約束して、早速新しい仕事である通信販売の立ち上げに着手する。

 休憩室に置かれていたパソコンを立ち上げて、通販用のホームページ作成のための情報を集めているようだ。






 千春と寺下の話が終わったタイミングで、朱美が休憩室の方に姿を見せる。

 しかし集中しているのか千春は彼女の来訪に気付いていないらしく、パソコンの画面を睨みつけながらカタカタをキータイプをしていた。

 その千春の姿を見て朱美は、事前に聞いていた通販事業の話が千春に伝えられたことが察せられた。


「話が終わったみたいね…。 寺下さん。 本当にこいつなんかに任せていいんですか?」

「いいんだよ、所詮は半ば道楽でやっている店だしね。 成功しても失敗しても、千春くんにもいい経験になるだろう」

「本当、道楽も良い所ですよ。 バカ春の事だから、失敗を越して大失敗するかもしれませんよ…」


 今回の通販事業の立ち上げを目論んだ理由は、客から要望もあるが一番は千春の将来のためであった。

 ただの接客店員では無く一から通信販売の立ち上げを任せることで、千春に人生経験を積ませることが寺下の目的らしい。

 このまま本当に喫茶店の店長を目指すのか、もしくは新しい職を求めるか。

 思い切ってマスクドナイトNIOHとして、リアルヒーローの道を突き進む可能性もあるかもしれない。

 千春はこの前に二十歳になったばかりの若造であり、その後の人生を決めるにはまだ早いだろう。

 しかしその選択肢を増やすために、ただの接客業だけで無くもう少し踏み込んだ仕事をやらせようと言うのだ。

 そんな思惑など知る由も無くやる気を見せる千春に対して、寺下はまるで父親のように暖かな笑みを浮かべていた。



すいません、睡魔に負けて連続更新が途絶えました!?


とりあえずこれで5話目は終わりです、最初にも言った通り今回はミステリっぽくなぞ解きを意識してみました。

まあ途中で面倒くさくなって調査パートを端折ったし、解りやすい落ちだったのでなんちゃってミステリだったでしょうが…。

本当は責任転換する教師とかも出したかったですが、その辺をしっかりやってたら後5話分は増えてましたね…。


土日で時間が取れるので、6話目は明日から開始できると思います。

6話ではいよいよあの謎に満ちたチャンネル主の少女、天羽 香についてのお話になります。


では。

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