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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
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5-11.


 千春たちが調査を進めている間に、呪いによる悪夢から目覚めた浅田は病院を退院していた。

 本当はもう少し安静にしているように言われたらしいが、正直言って呪いなんて症状を病院で治療出来る筈も無い。

 それなれば呪いの原因を突き止めるのが近道だと言って、医師を無理やり説き伏せて出てきたらしい。

 病院から出てきた浅田と由香里はその日の夜、本日の調査を終えた千春たちと合流して情報共有をしていた。


「酷い顔だな…。 本当に大丈夫かよ?」

「いやー、半日以上寝てた筈なんですが、悪夢のせいで逆に疲れたみたいです。 とりあえず今夜はこれを貰ったので、どうにか休めると思うのですが…」

「…薬?」

「ただの睡眠薬です。 あの病院は呪いを受けた生徒たちが収容された場所で、お医者様が色々と頑張って呪いに対抗する手段を探したみたいで…。

 お医者様の話を信じるならば、これを使って眠れば悪夢を見ないで済むそうです」


 医者も呪いに苦しむ者たちをただ見ていただけで無く、試行錯誤の末にある打開策を見出していた。

 浅田があの病院の医者から聞いた話によると、どうも例の呪いは睡眠の誘導と悪夢がセットになっているらしい。

 呪いの効果によって眠りに落ちた者は悪夢に襲われる、逆を言えば呪いが関与しない睡眠では悪夢は起きないと言うのだ。

 睡眠薬によって眠りにつく事で悪夢を回避して、ちゃんとした睡眠が取れるという訳である。


「面白いですよね、魔法少女の能力をこういう風に融通が利かない場合があるんですよ。 恐らくこの呪いを作り出した魔法少女は、この力で眠った者に悪夢を見せる能力をイメージしたのです。

 そして本当に言葉通りの内容で構築された呪いには、このような抜け道が出来てしまった」

「全く、言葉遊びも良い所ね…」

「まあ、睡眠薬漬けになる訳にはいかないので、必要最低限の薬しか貰えませんでしたけどね。 今も呪いに苦しむ虐めの主犯格たちも、最低限のまともな睡眠を薬の力で確保して凌いでいるようです」


 薬も過ぎれば毒となり、特に睡眠薬は中毒性のある薬物として名前が挙がる危険な代物だ。

 呪いに掛かっている以外は肉体的には全く健康な人間に対して、必要以上の睡眠薬を与えたく無いのだろう。

 どちらにしろ睡眠薬は呪いを一時的にやり過ごすだけの力しか無く、やはり根本原因を取り除かなければならない。


「…ちなみに呪いが見せる悪夢の内容は、一体どんな物なんだ? 他の話なら兎も角、悪夢の内容については誰も教えてくれなくてさ…」

「申し訳ないですが、私も詳細は語りたくないです。 ただ言えることは、呪いを受けた者のトラウマを穿り返す内容と言った所ですね」

「うわっ、えぐいわね…。 あんたでも口に出したく無いレベルなら、中学生たち何かは思い出すのも嫌なくらいの内容なんでしょうね」


 誰にでも人には知られたくない思い出や、二度と体験したくない悲劇は存在する。

 実際に呪いに掛かった浅田の話が本当であれば、例の呪いは当人が決して触れて欲しくない部分を突いてくるようだ。

 人に言えない程の悪夢など想像もしたくなく、千春たちは改めて呪いの恐ろしさを実感していた。


「ちなみに今の僕と同じ状況らしい、美波という子を虐めてた連中はもう病院には居ませんでしたよ。 まだ病院に居たなら、話を聞こうと思ったんですが…」

「睡眠薬を貰うために定期的に病院には来ているらしいのですけど…」


 未だに呪いが解けていない虐めの主犯格たちも既に退院しており、今は自宅療養中らしい。

 定期的に病院へ検査を受けて新しい睡眠薬を処方して貰っているが、一向に呪いが解ける様子は無いそうだ。

 彼女たちを知る看護師たちが言うには、あの連中は病院に来ると二言目には薬が欲しいと口に出していた。

 勿論、此処で言う薬は非合法のそれでは無く、悪夢から逃れるための睡眠薬である。

 処方された以上の薬を強く求める程に、虐めの主犯格たちは呪いに参っているようだ。











 浅田と由香里が病院で聞き出せた情報はこれで終わりとなり、次は千春たちの調査結果の話に移っていた。

 調査対象を中学生たちに絞った千春たちは、学校帰りの子供たちに直接話を聞きに行ったようだ。


「こっちはそれなりに収穫があったわよ。 上手い事、呪いに掛かった被害者から話を聞けたし…」

「凄かったですよね、八幡さん…。 強引に被害者の子から話を聞きだして…」

「あいつは昔からああだぞ、根っからの聞屋だよ」


 正直言って今日の調査活動は、八幡 朱美というジャーナリスト志望の女の独壇場であった。

 今ではSNSなどを使ってスマートに情報収集をしているが、学生時代の朱美はそうでは無かった。

 学校内で起きた事件を追うには直接人を追うのが一番手っ取り早く、今日のように関係者を待ち伏せなどして取材を行った物である。

 付き合いの関係で千春も取材とやらを何度か手伝ったことがあるが、その時の朱美は今日のように凄まじいものだった。

 それはまさにテレビなどで時折見られる、事件関係者へ拷問染みた質問攻めを浴びせるマスコミの姿そのままであろう。

 この朱美の強引なやり口は、死者の怨念を恐れて硬く閉ざしていた被害者の口を強引にこじ開けて見せた。


「一つ面白い事が分かったわ。 例の虐めがあったクラスではね…、美波って子が不登校になった後でまた新しい虐めが始めってたらしいのよ。

 多分、味を占めちゃったんでしょうね。 最初の頃は大人しくしてたけど、1ヶ月くらい経ってからまた箍が外れたみたいよ」

「一か月…、それは?」

「そうだ、美波が学校に来なくなってから一か月後に呪い騒ぎが起きた。 今日、話を聞いた子は怯えながら言ってたよ。 反省すること無く新たな犠牲者を出した私たちを懲らしめるために、死んだあの子が呪いを掛けたんだって…」


 虐めに直接関与していないにしろ、見て見ぬふりをしている時点で一種の共犯者である。

 今日話を聞いた人物の居るクラスでは、直接・間接的に美波を追い詰めて彼女を学校から追い出してしまった。

 それだけでも酷い事なのに、このクラスは愚かにも同じ過ちを繰り返そうとしていたと言う。

 仮に美波の怨念とやらが本当に存在したら呪われても当然な所業であり、実際に今日話を聞いた子もそのように感じていたようだ。


「違う、美波お姉ちゃんは犯人じゃないもん!!」

「分かってるよ。 今日話を聞いた奴が、そう思い込んでいるだけだ。 俺たちはちゃんと、犯人が他に居るってことは分かっているさ…」


 この街の地元魔法少女であり、世間では呪い騒ぎの犯人と思われる美波の無実を信じる小学生。

 昨日交わした調査に協力すると言う約束通り、今日の集まりに呼ばれていた邦珂は美波を犯人とする言葉に断固たる姿勢で否定する。

 感情的になる邦珂に対して、千春はあくまで今の話は今日話を聞いた中学生の認識であると諭す。

 浅田の一件もあって既に美波犯人説を却下している千春たちには、中学生から聞いた話には別の見方があった。






 美波が犯人ではないと仮定した場合、あの教室での呪い騒ぎはどのような目的で起こされたか分からなくなる。

 ただの愉快犯ならば他の場所でも呪い騒ぎが起きている筈だが、実際の呪いの被害者はあの教室の面子以外は浅田しか存在しない。

 犯人は明確な目的があって1クラス丸ごと呪いを掛けた筈だが、その目的は一体何なのかが千春たちには分からなかった。

 しかし今日の聞き出せた情報から、千春たちは呪い騒ぎの真の目的が何となく見えて来たのだ。



「今日は本当に大収穫だったよ、これで犯人はほぼ確定だろう」

「ふーむ、確かに。 今日はその子には会えなかったのか?」

「学校には来てないみたい。 呪いが無くなった生徒たちの一部は、まだ不登校らしいのよ。 呪いのことを思い出してしまう学校には、まだ行きたくないって…」

「えっ、犯人が分かったんですか? 美波お姉ちゃんじゃ無いんですよね、誰なんですか?」

「ああ、それはな…」


 千春たちの報告を受けた浅田たちは、彼らの中で自然と同じ結論が導き出されたらしい。

 しかし一人だけ話に着いて行けない邦珂は、美波を騙る真犯人について分かった風の千春たちの様子に困惑してしまう。

 そんな邦珂に千春たちは真犯人と目した自分について、その理由を含めて教えてあげようとする。


「…あっ、すいません。 多分、呪いの第二波が着たみたいです。 薬の力で呪いの睡魔を上書きするんで、僕は此処で失礼します」

「大丈夫ですか、会長! 急いで宿の方に…」

「お大事な、後はこっちで詰めておくよ」


 邦珂への説明を遮る様に浅田が再び呪いの症状が現れてしまい、今日の集まりは自然と解散となってしまう。

 呪いによる悪夢とワンセットの睡魔を回避するため、浅田は即座に睡眠薬を口に入れて睡魔を上書きしようとする。

 流石に店内で眠りこけるに訳にはいかないので、一刻も早くベッドで横になるために魔法少女研究会の連中は慌ただしく出て行った。

 去っていく浅田たちの背後に向かって、千春は気遣いの言葉を投げかけていた。

 

 

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