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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
85/384

5-10.


 どうやら例の呪いの鏡の主は、千春たちの動きが余程煩わしいかったらしい。

 中学校の一クラス丸ごと呪いに掛けた後、事件を引き起こした例の鏡はこれまで姿を現すことが無かった。

 それがいきなり魔法少女研究会の前に現れて、会長である浅田に呪いを掛けてしまう。

 浅田を呪いの苦しみから解放したければ、千春たちは事件の調査を諦めなければならないのだ。


「ふん、ちょっと面白そうと思ったのに、いきなりつまらない事件になったわね…」

「どういう意味だよ、それは?」

「…やっぱり八幡さんも、そう考えますか?」」


 前日の宣言通りに千春たちと合流した朱美は、適当な飲食店に入って昨夜に起きた浅田の一件の話をしていた。

 魔法少女研究会の浅田は未だに病院のベッドで魘されており、彼の看病をするために研究会員の由香里が病室に残っている。

 店内には千春と朱美、そして残りの研究会メンバーである田中(たなか)と言う名の男性会員の姿があった。

 千春と合流した頃の朱美は、遅まきながら事件の調査に加われる事が嬉しいらしく見るからに楽し気だった。

 しかし研究会メンバーの田中から昨夜の話を聞くにつれて、朱美の表情が徐々に険しくなったのだ。

 千春は朱美の感情の変化の理由が分からずに訝しむが、田中の方はその理由が分かっているらしい。


「昨夜の一件で、真犯人は馬脚を露したのよ。 これで少なくとも、自殺した少女が犯人って説はほぼ消えたわね」

「ええ、どういうことだ?」

「よく考えて見なさい。 仮に犯人が死んだ子の幽霊か、その怨念か何かを引き継いだ魔法少女の能力だとするわね? そんな不可思議な存在が、こんな安いコピー用紙で作った脅迫状を用意する訳無いでしょう? どう考えてもこれは、生きた人間の仕業よ」

「…ああ、そういうことか!!」


 朱美は警察ドラマに出てくるようなビニール袋に入れられた、例の脅迫状を千春の前に見せながら説明する。

 何処にでも売っているコピー用紙に、筆跡が分からないように印刷された文字で書かれた脅迫状。

 それはこれを用意した者の素性を隠すための細工であり、死んだ存在がそのような真似をする筈が無い。

 確かこれはどう考えても、自分が犯人であると知られたくない生者が作成した代物だろう。

 千春たちを追いこむために出された脅迫状は、皮肉にも真犯人を追い詰めるための材料になったのだ。






 自殺した魔法少女の復讐なのか、それに見せかけて呪い騒ぎを演出した真犯人が居るのか。

 その謎がこの街の呪い騒ぎの肝であり、朱美がこの不可思議な事件にのめり込んだ要因の一つである。

 しかしその大事な謎がこんな馬鹿らしい失敗で明かされるとは、興ざめも良い所であろう。

 苛ついた様子で紅茶を飲み干した朱美は、乱暴にカップを置きながら田中をねめつける。


「…はぁ、あんたたちもよくやったわね。 どうせ誘ったんでしょう、事件の真犯人を?」

「はい、こんなに早く食いつてくるとは思って無かったですが…」

「それだけあんたたちの動きを警戒したのでしょうね。 どうやら小心者みたいね、真犯人さんは…」

「はぁ、誘った!? どういうことだよ、それは…」


 朱美と田中のやり取りを横で話を聞いていた千春は、その内容を聞いて驚きを隠せない。

 彼女たちの話が本当であれば、昨夜の一件は魔法少女研究会の連中が仕組んだことと言うのだ。

 状況を理解してない千春に対して、朱美と田中たちは魔法少女研究会が企てた作戦について説明する。


「今の時代の中学生同士のネットワークは甘くないわ。 事件を調査に来たマスクドナイトNIOHの話はSNS何かを通して、あっという間に学校中に広まった筈よ。 あんたが街中で魔法少女相手に大立ち回りをして、インパクトも十分だったでしょうしね…」

「中学生たちと別れる前に、さり気なく宿泊場所の情報も教えました。 何かあったら私たちの元に来て欲しいってね…。

 多分、魔法少女研究会の居場所もすぐに流れたでしょう…。 そしてこの話を聞いた犯人が、動く可能性があると…」


 犯人が自殺した美波では無く、今も生きている人間であれば千春たちの存在は非常に目障りだろう。

 ゲームマスターが勝手に投稿した動画の宣伝効果もあり、マスクドナイトNIOHは問題を起こした魔法少女の専門家として認知されている。

 まさに魔法少女の力を悪用している当の犯人が、マスクドナイトNIOHこと千春の来訪を喜ぶ筈が無いのだ。

 どうやら魔法少女研究会たちは犯人を誘き寄せるために、あえて自分たちの存在をアピールしたらしい。

 協力をお願いした中学生たちに口止めすることなく、むしろ率先して千春たちの動向を広めるように仕向けたと言う。


「おいおい、誘ったってそういう事かよ。 自分たちを囮にしたのか、あんたたちは…」

「まあ、相手が動いてくれればラッキーと言うレベルの考えでしたがね。 まさか此処まで早くに効果が出るとは予想外ですよ…」

「ははは、良くやるよな…」


 勿論この小細工は、今回の事件の犯人が美波であったならば効果は無かっただろう。

 今更死んだ人間が千春たちの存在を気にする筈も無く、魔法少女研究会の企ては成果なしで終わった筈だ。

 しかし呪い騒ぎを起こした犯人は予想以上に臆病だったらしく、その日の内に行動を起こしてしまった。

 結果的に魔法少女研究会の目論見通りに千春たちは新たな情報を掴むことが出来たが、その代償として会長の浅田は呪いを受けてしまう。

 例の呪いが直接の生死に関わるような能力では無い事を把握しているからこそ、このような捨て身の策を実行したのだろうがそれにしても思い切りが良すぎる。

 自らを犠牲にするそのやり口に、千春は褒めていいのか貶していいのか分からずに困惑した表情を浮かべていた。











 冷静になって考えれば、浅田を呪いに掛けて千春たちを脅した犯人の行動は決して褒められた物では無い。

 何しろ犯人の無思慮な行動によって、千春たちは一気に真実へと迫ることが出来たのだ。

 自らの正体に迫られるリスクを許容してまで、犯人はマスクドナイトNIOHという存在を自分から遠ざけようとした。

 それ程に呪い騒ぎを起こし謎の魔法少女は、千春たちの動きが恐ろしいという事だろう。


「もうさぁ…、あの中学生たちが俺たちのことを話した連中を片っ端から当たれば、犯人に辿り着くんじゃ無いか? 多分、会長さんたちの居場所も、あの餓鬼どもを通して把握したんだろうしな。

 その日の内に動いた所を見ると、下手すれば昨日の奴らの直接の知り合いかも…」

「そうでも無いわよ、別にあの中学生たちを直接経由しなくてもマスクドナイトNIOHの存在は知れたわよ。 あのワンちゃんとの戦いが、普通にSNSへ投稿されてそれなりに騒がれてたし…」

「これです。 NIOHさんはそれなりに知られてますから、最新の戦闘シーンは注目されますから…」

「あ、本当だ…。 あの中学生たちの誰かが上げたのか? これを見て、俺たちのことを知った可能性もあるのかよ…」


 田中が見せてくれた携帯を見ると、確かに昨日の使い魔のスカイとの戦いの映像が投稿されていた。

 例の中学生たちと繋がりが無くとも地元の人間ならば、この映像からマスクドナイトNIOHが街に現れた事実をすぐに知るだろう。

 

「確かにこれを犯人が見てたら、中学生たちと直接の繋がりが無くて俺たちの事を知れた筈だ。 会長さんたちの居場所も、偶然見つけただけかもしれないしな…」

「ただしあんたの言う通り、第一容疑者は情報源である中学生たちに近い存在、彼女たちと同じ学校の人間なのは間違い無いでしょう」

「お前が言う中学生同士のネットワーク、その内側に居る人間って奴か…。 まずはそこから当たるのが妥当だよな…。

 とりあえずもう一回、あの中坊どもに会って見るかな?」

「それより実際に被害にあったクラスの生徒に接触すべきよ。 虐めの主犯格以外はもう呪いが解けて学校に復帰しているんでしょう?

 それなら最悪、待ち伏せでもして…」


 可能性の話だけを考えれば、犯人があの中学生たちをは別のルートから千春たちの情報を把握した場合もあり得る。

 しかしあの中学生たちと別れてから数時間足らずで、浅田たちが例の呪いの鏡に襲われた。

 犯人が他のルートを経由して千春たちのことを知ったならば、動くにしてももう少し時間が経ってからだろう。

 普通に考えれば犯人は直接・間接的にあの中学生たちから話を聞ける、彼らと同じ中学生である可能性が高い。

 千春たちは犯人の第一候補をあの中学生の生徒たちに絞り、事件の調査を進める事に決めたようだ。

 そして事件が起きた中学校の生徒たちを対象とした、千春たちの今日の調査活動が開始された。


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