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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
80/384

5-5.


 今回の事件についてもう少し詳しく調べるため、早速千春は例の情報源にコンタクトを取っていた。

 中学生と言う年頃の少年たちに取って、今回のような非日常的な事件に関われることは刺激的なのだろう。

 彼らは驚くほど協力的であり、有り難いことに新たな情報源も連れて千春たちの前に再び姿を見せたのだ。


「NIOHさん、やっぱり事件を追うんですね!! やっぱり、そうこなくっちゃ…」

「ああ、あんた知ってる! あの気持ち悪い研究会の会長さんだ!!」

「うわぁ、小学生の変身シーンを撮影していた変態じゃ無い…」

「ねぇねぇ、私たちもあの動画に出るのかな? どうしよう、私変じゃないよね」


 放課後に直接此処まで来たらしく、学生たちはみな制服を着たままである。

 昨日海岸近くであった三人の男子生徒たちは、新顔の二人の女子生徒と共に指定した店に現れた。

 恐らく彼女たちが新たな情報源なのだろうが、やはりこの手の噂話は女性の方が詳しいと言うことか。

 千春の街にもある大衆ファミレス店に集まった中学生たちは、既にテンションが振り切れていた。

 また何時もの様に投稿されていた、あのスィート・アンミツとの一件の動画を視聴済みなのだろう。

 千春だけでなく浅田たちの顔も把握しており、彼らは姦しく騒ぎ立てる。


「悪いな、わざわざ来て貰って…。 とりあえず好きな物でも頼め、此処の払いはこの会長さんが持ってくれるから…」

「うぇ!? 矢城さん、それは…」

「おお、気前がいいですね! よーし、俺はステーキセット!!」

「俺はハンバーグとチキンのコンボだな、ライスは大盛で!!」

「うーん、トンカツ定食かビーフシチューか…。 両方ってありですかね?」

「ねぇねぇ、この抹茶パフェが美味しそうようね」

「うーん、私だダイエット中だからなら…。 でも折角の機会だし…」


 幾らお手頃価格のファミレスとは言え、中学生五人の食事を奢るとなればそれなりの出費だ。

 さり気なく財布役を千春から押し付けられた浅田は、即座に千春へそんな話は聞いてないと抗議しようとする。

 しかしそんな大人たちのやり取りなど気付かず、中学生たちが楽しそうにメニューの相談を始めてしまう。

 此処で水を差してしまえば中学生たちが情報を出し渋るかもしれないので、残念ながら千春の言う通りにするしか道はないようだ。

 悪戯に成功したとばかりに笑顔を見せる千春を、浅田は恨めし気な表情で睨みつけていた。











 男子学生たちが新たな情報源と言うだけあって、新顔の女子学生たちの話は非常に参考になった。

 例の事件が起きる前から、あのクラスでの虐めは学校内では周知の事実だったらしい。

 虐めの被害にあった女子学生が、不登校になった話も他のクラスに所属する彼女たちの耳に入っていたそうだ。


「…とまあ、そんな風にあのクラスの虐めは結構ヤバかったらしいです。

 例の子が最後の学校に来た時なんて、中身の入ったペットボトルを投げつけれたんですよ! あの子は紅茶まみれになって、教室から飛び出したって…」

「酷い話よねー」

「ねー」

「うわぁ…、本当にひでー話だな…」


 女子学生たちは事件が起きたクラスの人間から聞いたと言う、少女が受けた仕打ちについても教えてくれた。

 彼女たちはまるで他人事のように、聞いている千春がうんざりするような虐めの詳細について語って見せる。

 実際に彼女たちに取っても他のクラスの虐めなどは所詮は対岸の火事であり、話の種の一つでしかないと言うことだ。

 この話を彼女たちに教えたと言う例のクラスの者も、少女を助けることは無くただ虐めの風景を傍観していた筈だ。

 誰も虐められる少女を助けることは無く、彼女が例のクラスに呪いを掛けられる程に恨みを抱いても仕方ないだろう。


「…それで不登校になった虐められっ子が、魔法少女に目覚めて恨みを晴らしたか。 呪いね…、どんな能力なんだろうな?」

「睡眠を強要した上で、悪夢を見せる能力。 少なくともモルドンには効果がなさそうですね、本当に対人に特化した構築だ。 どう考えてもこの能力は、復讐のために作り出した能力ですね」

「今まで聞いたことの無い、珍しい能力のようね…。 ねぇ、呪いの話をもっと聞かせてくれない?」


 学校で虐げられた少女が、魔法少女の力を使って復讐を果たす。

 話としてはシンプルな筋書きであり、千春たちは完全にこの事件の犯人が虐めらていた子の少女であると断定していた。

 千春たちの興味は呪いを掛けた魔法少女から、その呪いを実現するための能力の内容について移っていた。

 もっと呪いの詳細を深掘りするために、研究会の友里恵が中学生たちから話を聞き出そうとする。






 普通の魔法少女であれば、多少なりともモルドンとの戦闘を意識した能力を構築するだろう。

 モルドンと戦う魔法少女の姿は、この世界では既に日常に溶け込んでいるからだ

 しかしこれまでに集めた情報を聞く限りでは、事件を起こした魔法少女の能力は毛色が違い過ぎた。

 複数人に対して、強制的な睡眠と悪夢を促す能力。

 モルドンを相手にする事など一切考えていない、まさに呪いと言うような対人に特化した力だ。

 そして千春たちはこの街の住人たちが、この現象を呪いと呼ぶ本当の理由を知らされることになる。


「実際に呪いを受けた子に聞いた話だと、凄かったらしいわよ。 その子はもう殆ど呪いが解けているらしいけど、最初の頃は地獄だったみたいね。 眠ったら夢の中で散々な目に合うから眠りたくないのに、どんなに抵抗しても眠りに落ちてしまう。

 夢の内容は教えてくれなかった、思い出すのも嫌な程なんだって…」

「一体どんな悪夢を見せられたのか。 その呪いを受けた子は友達なんだろう? 此処にその子を呼んでくれれば、話が早かったのに…」

「駄目駄目、その子は完全にビビッてるから無理。 下手なことをして、また呪いに掛けられたら困るんだって…。

 何処であの子の幽霊が見ているか分からないしね…」

「本当怖いよね。 もしかしたら魔法少女の力だけじゃ無くて、死者の怨念なんかも呪いに籠っているのかも…」


 残念ながら当事者では無い彼女たちから聞ける話は、呪いの詳細までは分からないようだ。

 しかし千春たちは女子学生たちの口からさらりと出た、とんでもない情報に驚きを隠せないでいた。

 幽霊、死者…、彼女たちの話が本当であれば、千春たちが犯人と考えていた少女が既に死んでいるという事になってしまう。


「なぁ…、幽霊とか死者の怨念とかって…? もしかして、例の虐めを受けた少女って言うのは…」

「ええ、その不登校になった少女は事件の少し前に亡くなったそうよ、多分自殺ね。 だからあの呪いは、魔法少女の幽霊となったあの子が掛けた物になるの」

「はっ、嘘だろう!? その話、本当なのか?」

「何よ、あんたちも知らなかったの? ああ、そういえば別に学校から連絡があった訳も無いし、知らない奴は知らないのか…」


 女子学生たちは千春たちに向かって、虐めを受けて不登校になっていた少女は既に死んでいると断言する。

 しかもその少女が死んだのは、例のクラスで呪い騒ぎが起きた以前だと言うのだ。

 この事実は最初に千春へ呪いの話を伝えた男子学生たちも初耳のようで、千春たちと同じように驚いていた。

 どうやら不登校になった少女が自殺したという不名誉な事実は、生徒たちには伏せられている情報らしい。

 女子学生たちが言う通りに、本当に死んだ魔法少女が生きたクラスメイトや教師に呪いを掛けたのか。


「興味深い、実に興味深い話です! 矢城さん、この事件の話を持ってきてくれて本当に感謝しています」

「魔法少女が死亡する例は今まで聞いた事がありません。 そもそも魔法少女が死んだ時、その少女が生前に持っていた能力は残るのか…」

「すぐに研究会の連中に教えてやらないと! これは面白くなってきましたね…」

「ま、まあ飯代を払った甲斐はあったろう?」


 未だに少女の死亡情報の衝撃が抜けない千春を尻目に、魔法少女研究会の面々は非常に興奮しているようだった。

 その名の通り魔法少女についてのあらゆる事柄を研究している彼らに取って、他に類に見ない今回の事件を調べられることが嬉しいのだろう。

 怪しく眼鏡を光らせながら微笑む浅田と仲間たちの異様な姿に気圧された千春は、それを誤魔化す様に先ほどの奢りの件について軽口を叩くのだった。


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