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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
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3-12.


 駐車場の車を破壊するでフィールドを炎上させて、千春のUNの型による察知能力を封じる。

 このような手の組んだ真似は、ただ暴れまわるだけのただのモルドンではとても行うことは出来ないだろう。

 ただ街で暴れまわると言う他のモルドンと変わらない行動を取りながら、千春を嵌めた頭脳プレーも見せる。

 これも元使い魔と言う例外的な素性を持つ、特異なモルドンとしての特徴なのだろうか。


「…そこぉぉっ!! っ、あれ?」

「…■■■■っ!!」

「ちぃ、また逃げたか! シロっ、また頼む!!」

「○○○○○○っ!!」


 千春たちとしてはホープの居場所が分からなければ話にならないが、相手の方もそれを承知しており常に移動しながら居場所を掴ませない。

 今もホープの体を掴もうとして空振った千春は、すぐさまシロに対して指示を下す。

 その命令に従ったシロはバイクから生えた機械翼をはためかせ、そこから五月雨式に羽を弾丸のように飛ばした。

 広範囲に放たれた羽の弾丸の一部は何もない場所に遮られて、そこにホープが居る事が分かる。

 UNの型に頼れなくなった千春は代わりの手段として、相棒であるシロにホープの探索役を任せたのだ。


「…そこだ!!」

「■■っ!?」

「よしっ、当たったな! どうだ、この姿でもでかい的になら当てられるんだよ」


 シロの羽の弾幕に遮られた空間をめがけて、千春はヴァジュラによる銃撃を行う。

 UNの型のような器用さが無い不器用なAHの型での射撃は不安が残るが、あの巨体が相手なら的に当てるくらいなら可能だ。

 実際にヴァジュラから離れた雷撃は何もない空間で遮られ、モルドン独特の鳴き声が千春に命中を告げた。

 相手にダメージを喰らわせた千春はそのまま駆け出し、先ほどヴァジュラが命中した空間へと殴り掛かった。


「駄目だ、また何処かに消えた!? シロ、もう一回探索を…」

「…○○、〇!?」

「■■…、■■っ!!」


 残念ながら先ほどの銃撃だけではホープの足止めは出来なかったようで、千春の拳はあえなく空を切る。

 千春はまたシロに対してホープの探索を命じようとするが、それを遮る様にシロとホープの鳴き声が交差した。

 どうやらホープは千春より先に、邪魔な探索役であるシロを排除するのが勝利の道であると判断したらしい。

 広範囲を狙えるように千春たちから少し離れたシロは、翼を大きく広げて次弾発射の準備を行っている状態だった。

 そこに向かって飛んでくる空飛ぶ自動車、ホープお得意の車両投擲をシロに向かって放ったのだ。


「○○っっ…、○○!?」

「なっ、シロ!! くそっ、やってくれた…」


 完全に足を止めていて瞬時に動ける状態では無かったシロは、咄嗟に展開していた羽で体を自身の体を覆って防御する。

 しかし車という大質量を受け止めるには、シロの機械羽だけでは流石に物足りなかったらしい。

 飛んできた車両は勢いこそ衰えた物の、羽を防護を突き破ってシロと合体したバイクと衝突事故を起こしてしまう。

 相棒と愛車の事故現場をリアルタイムで見せられた千春は、下手人であるホープに対する怒りを強める。


「…■■■っ!!」

「っ!? ぐわぁぁぁっ!!」


 そしてシロとの衝突事故を演出した後で、ホープはすぐさま次の動きに移っていた。

 自身を透明化した状態のままホープが向かった先は、赤い鎧を纏ったマスクドナイトNIOHの背後である。

 強化された感覚を持たない上にシロの方へ注意を逸らしていた千春は、姿なきハンターの動きに気付けない。

 千春はまんまと透明化したホープに奇襲を許してしまい、その太い腕で体ごと抱きしめられてしまった。






 ベアハッグ、相手の胴体を締め付けるプロレス技の名称である。

 熊の抱擁に見立てて付けられたこの技は、熊型モルドンであるホープにはよく似合うだろう。

 どうやらホープは見るからに硬そうな鎧姿の千春に、一撃では勝負が付かないと考えたのだろう。

 絶好の奇襲の機会にホープが選んだ選択肢は拘束、このまま千春の体を鎧ごとへし折るつもりらしい。


「離せっ、離せっ! 畜生、、馬鹿力が…」

「■■■■っ、■■!!」


 勝利を確信したのかホープは既に透明化を解除しており、その真っ黒な巨体を千春の間近で見せつけていた。

 千春はホープの抱擁から逃れようと腕の中で暴れるが、残念ながら拘束が緩む気配はない。

 パワー自慢のAHの型を上回る超怪力の持ち主であるホープを相手に、今の状況のような純粋な力比べは分が悪いらしい。

 当初は能力の相性差もあって正直甘く見ていたが、このホープもまた渡りのモルドンと同類の規格外の存在ということだ。

 その力は千春とシロのコンビを上回り、このままでは千春は体を真っ二つにされるかもしれない。

 あの様子ではシロの援護は期待出来ないが、残念ながら力勝負ではこの巨大な熊公に勝てそうにもない。

 ホープの太い腕で抱きしめられている今の千春に出来る事は、右腕に持ったヴァジュラを開放することしか無かった。


「■■■■っ!?」

「あぁぁぁっ!? くそぉぉっ、痛ぇじゃねぇか!!」


 千春はろくに手が動かせない状況で無理やりヴァジュラの刃を展開させて、それは想定通りにホープの体を切り裂いた。

 しかし手元が碌に見えな状態で両刃を展開させたことで、その刃は千春の体をも傷つけてしまう。

 共に苦悶の声をあげる千春とホープであったが、事前に痛みが来ることを予想していた千春の行動が一歩早かった。

 僅かに緩んだホープの抱擁から力尽くで抜き出した千春は、すぐさま振り向きながらヴァジュラを斜め下に突き刺す。


「■■…、■■■!!」

「これも肉を切らせて骨を断つって奴だ! もう逃がさないぞ、ホープ!! そしてこれはシロの分だ!!」

「…■■■っ!?」


 千春のヴァジュラは見事にホープの足元を貫き、その巨体を地面へと縫い付けたのだ。

 AHの型の全力で突いたヴァジュラの刃はホープの足に深々と刺さっており、これでは先ほどのように動き回ることは難しいだろう。

 ホープの足を封じた代償として千春の太もも付近には、先ほどのヴァジュラの展開で自傷した傷が見えた。

 この程度の傷でこの規格外のモルドンに勝てるなら安い取引だと無理やり自分を納得させた千春は、ヴァジュラから手を放してホープへと右拳をお見舞いする。

 天へ上る龍の如き勢いで振り上げられた千春のアッパーカットは、見事にホープの顔面を直撃するのだった。











 巨体であるホープの額に埋め込まれているクリスタルは、無手の千春には狙いにくい場所であった。

 必然的に千春はホープの顔を手に届く所まで近づける必要があり、そのためにはホープに殴り勝つしかない。

 しかしホープの方もただやられる訳にはいかず、足は封じられたが手の方は無事である。

 必然的にその場で繰り広げられるのは、鎧のヒーローと巨大熊の原始的な殴り合いであった。


「うぉぉぉぉぉっ!!」

「■■■■■っ!!」


 パワーでは一歩劣る千春であるが、その分は手数でカバーする。

 加えて足を封じされていない千春は小刻みに立ち位置を変えながら、ホープの体に拳をぶつけていく。

 一方のホープは手数や技は千春に劣るだろうが、それを帳消しに知る超パワーが備わっていた。

 まともに当たれば一発KOもあり得る剛腕を振り回しながら、目障りな千春をなぎ倒そうとする。

 共に雄たけびをあげながら、人間とモルドンの戦いはヒートアップしていく。

 しかし一見は互角に見える戦いであるが、その天秤は徐々に一方へと傾いていた。


「■…、■■っ!?」

「お、そろそろガス欠か! お前は暴れすぎなんだよ…、ホープ」


 魔法少女によって生み出された使い魔と言えども、無限に戦い続けられる訳では無い。

 シロもバイクと合体してる状態で飛び回れるのは精々2時間程度であり、それを超えると一定時間の休憩が必要であった。

 幾ら魔法少女と言えでも限界はあり、それは元使い魔であるモルドンのホープも同じだったらしい。

 今夜のホープは透明化の能力を幾度となく使いながら、街や魔法少女や千春たちを相手に暴れ回っていた。

 普通の使い魔であればそれだけ動けばとうの昔に無理が来ている筈だが、そこは何体ものモルドンのクリスタルを取り込んだホープの凄さと言うべきか。

 しかしそんな元使い魔であるホープも底なしでは無く、限界を迎えた体は立っていることすらままならずにその場でよろめいてしまう。


「■■■■…、■!!」

「そんな悪あがきが効くか! これで、終わりだぁぁぁっ!!」


 最後の抵抗とばかりに千春へと剛腕を振るうホープであるが、その動きは先ほどまで比べ明らかに鈍っていた。

 バックステップで距離を置くことで難なく避けた千春は、お返しとしてホープに向かって全力で跳躍する。

 手が届かない相手に届くもう一つの方法、それは跳躍することで体を相手へと近づけることだ。

 しかし一度跳んでしまったら空の飛べない千春には軌道修正が出来ないので、相手が元気な内に反撃を喰らうリスクがあった。

 ホープが見るからに弱っている今が好機だと、千春は止めの一撃をお見舞いするために空高くへ跳び上がる。

 そして右足をピンと前に伸ばした跳び蹴りの姿勢を取り、その一撃は吸い込まれるようにホープの額へと届いた。


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