表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
57/384

3-5.


 マジゴロウを名乗る少女、その本名は真美子(まみこ)と言う微妙に掠った物らしい。

 撮影用の衣装から普通の服装に着替えた真美子は、特徴の無い地味な少女になっていた。

 いきなり魔法少女関連の依頼を持ち込まれた千春は、色々と悩んようだが最終的に真美子へ協力することを決めたようだ。

 マスクドナイトNIOHこと千春の協力を得られた真美子は、あの動画に出てきた使い魔について話をする。


「…あの熊みたいな使い魔は、前に私の動画に出演して貰った子なんです。 その時はあんなモルドンみたいな黒い体じゃ無かったけど、あれは絶対に使い魔です。

 その時の動画を持って来たんですよ。 ほら、この子…」

「うわっ、若いな…。 結構古い動画なんじゃ無いか?」

「私が動画投稿を初めて間もなくの頃の作品です、この頃はまだファミリアショーって名前も無かったんですよ。 まだマジマジが無かったころの動画で、マジマジの方にはこれを上げていないんです。

 今見ても懐かしいな…、この頃はお母さんに手伝ってもらって動画を撮ってたんです。 まだ小学生の頃ですね…」


 魔法少女関連の動画を探したい場合、殆どの人間は魔法少女専門の動画サイトであるマジマジをアクセスするだろう。

 しかしマジマジが魔法少女の誕生と同時に開設された訳では無く、このサイトが開設されたのはその数年後になる。

 どうやらこの動画はマジマジが世に出る前に撮られた物であり、そこの映っている真美子はほんの小さな子供であった。

 恐らく撮影場所は今と同じ個々の農場なのだろうが、今のファミリアショーと比べるとお世辞にも上手いとは言えない拙い動画である。


「失礼な事かもしれないけど、君は幾つなんだ?」

「16歳、高校二年生です…。 魔法少女としては、上限ギリギリですね…。

 ああ、私のことはいいんです。 それより…、これ、これです!!」


 以前にも触れたとおり魔法少女には年齢制限があり、その上限は最初の存在であるスウィート・ストロベリーであると言われている。

 消息不明となっているスウィート・ストロベリーが仮に死んでいなければ、彼女は高校生になっている筈だ。

 つまり真美子はスウィート・ストロベリーとほぼ同じ年であり、前回の佐奈以上に古参の魔法少女になる。

 真美子は千春の問いに答えながら動画を操作していき、本題である例の使い魔が出ている場面へと導く。


「…確かに熊だけど、小さくないか? 君のガロロみたいに戦闘用の形態でもあるのか?」

「いえ…、そうじゃ無いんです…。 ほら、この辺りの話を聞いて下さい」


 真美子が見せてきたシーンには、確かに熊のような使い魔が映っていた。

 しかしそのサイズは日常時のシロやガロロと同程度の物であり、モルドンと死闘を繰り広げていたあの巨大な熊と同じとは思えない。

 加えてその体もあの動画のような黒一色ではなく、あの有名な熊のキャラクターを意識したのか黄色の体をしている。

 千春はガロロやリューのように巨大化するのかと推測するが、真美子はそれを否定しながら動画を進めていく。


「"へー、それならくるみちゃんの熊ちゃんは大きくなるんだ"」

「"そうよ。 私はこのホープちゃんと一緒に成長するの。 きっと"」


 そこには互いの使い魔を抱えた魔法少女たち、小学生の頃の真美子とあの熊の飼い主である少女が映っていた。

 恐らく真美子と同年代と思われる少女はくるみと言う名のようで、黄色の熊を"ホープ"と呼びながら愛おし気に抱きしめている。

 今と同じようにオーバーオールを着る真美子に対して、相手のくるみはまさにお姫様と言うような可愛らしいドレス姿だった。

 ドレス姿のくるみは真美子に対して自慢げにこう言ったのだ、自分の使い魔は成長すると…


「…君はあの動画に出てきた熊は、こいつが成長した姿だって言うのか?」

「そうです…。 ほら、このシーンもみて下さい。 彼女はこれがホープちゃんが喜んでいる時にする動きだって言ってますよ」

「その場でぐるぐると周り始める。 確かにあのモルドンを倒した熊公は、これと同じことをしたけど…」


 確かに真美子が示した動画では、ホープと呼ばれる熊型の使い魔が楽しそうにその場でぐるぐると周っていた。

 この動きは先ほどの動画で、敵を倒した後に熊型の奴がした物と同じように見える。

 くるみが口する成長がどれ程の物か分からないが、あれが動画の熊型の奴くらいまで大きくなれば辻褄は合うかもしれない。


「仮にこのホープちゃんが例の熊型モルドンもどきとして、どうやって探すんだ? そうだ、この動画に出ている魔法少女に連絡を取れば…」

「駄目です…、もうその子はホープちゃんの飼い主じゃ無いんです。 ホープちゃんは大きくなりすぎて、家で育てきれないからって…」

「捨てたのか、自分が生み出した使い魔を!? そもそも自分で成長する能力を持たせた癖に…」


 シロを放置している生みの親に対して、マジゴロウこと真美子が強い敵意を持った理由はこれで理解できた。

 どうやら真美子は自らが生み出した使い魔の世話を放棄する、身勝手な魔法少女の先例を知っていたようだ。

 つまり状況的にあの動画に出てきた熊型は真美子の言うホープでほぼ確定であり、その使い魔は飼い主である魔法少女の手から離れているらしい。

 そんな状況でホープは何故モルドンと戦っているのか、モルドンと間違える程に黒くなった体の理由は何か。

 謎が謎を呼ぶ状況に、千春はまた自分から面倒な泥沼に足を突っ込んだことを理解させられていた。











 真美子によると過去の撮影時に聞いた連絡先は生きており、それでくるみの家と連絡を取ることが出来たそうだ。

 しかしホープの生みの親は真美子に直接対応せず、くるみの母親を通して得られえた情報はホープは数年前に捨てられたと話だけである。

 まだ高校生でしかない真美子はどうすればいいか悩み、そこで不本意ながら魔法少女トラブルの専門家になりつつある千春に白羽の矢を立てた。

 そして千春という協力者を得られた真美子は意を決して、元魔法少女と言うべきくるみの家へと突撃していた。


「…私は魔法少女なんて物はとっくの昔に卒業したのよ。

 あんたが何をやろうと勝手よ、魔法少女なんて幼稚なことを好きなだけやればいいわ。 けど私を巻き込まないで!!」

「でも、くるみさん。 ホープちゃんが…」

「あの子はもう終わったの! これ以上蒸し返さないでくれる」


 流石に家に直接押しかけられたらだんまりと行かないのか、その元魔法少女は不貞腐れた様子で千春たちの前に姿を見せた。

 あの動画では可愛らしい女の子であったくるみも、今では立派な高校生の少女へと育っている。

 くるみは魔法少女と言う言葉とは真逆の、垢抜けた今時の女子高生をしているようだ。

 脱色した髪に整えた爪に化粧が施された顔、確かに今のこの少女であれば街の盛り場に居る方が似つかわしい。

 心底面倒くさそうな様子でくるみは、自身が捨てたホープに関する話を端から拒絶していた。


「ちょっといいかな…」

「何よ、これはあんたの彼氏? 未だに魔法少女なんてやっているお子様の割りには、中々やるじゃんか…」

「ああ、そういうんじゃ無いから、俺は単なる協力者。 それより一つ聞きたいんだけど…、君はまだホープが生きていることを知らないのか?」

「っ!?」


 それまで真美子に話を任せて口を閉ざしていた千春は、二人の話を聞いてある違和感を持っていた。

 どうもくるみはホープの存在を過去形で捉えている節があるようで、実際に問いかけて見た反応を見ると千春の勘は的中したらしい。

 くるみに取って家までやって来た千春と真美子は、自身の過去の過ちを責めたてる糾弾者だったようだ。

 ホープの話が現在進行形で進んでいることを知らないくるみに対して、千春は携帯を取り出して例の動画を開く。


「う、嘘よ…。 あの子が生きている訳が…」

「…ほら、この動画を見ろよ。 結構最近に撮られた奴だよ」

「これは…、何でよ!? 何で死んでないのよぉぉぉっ!!」


 流石に腐っても生みの親であるらしく、くるみは例の動画に映っているのはホープであると一目で理解したようだ。

 ホープが死んでいない事に心底驚いている様子のくるみは、過去に一体どんな過ちを冒したのか。

 どう考えても胸糞悪い話になるのは確実であり、何が何やら分かっていない様子の真美子の方を見て力なく笑って見せた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 感想を書こうと思うくらいには面白い。 [気になる点] 千春が使い魔を捨てたことに異常にキレてること。 視野の狭い子供が作ったんだから想定外が多くて思いがけず捨てることになるのは普通だと思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ